11兆円超の消費者向け電子商取引市場規模(平成25年度)には、利用運送・実運送が発生しない「情報通信業」も含まれている

前回の6月19日の記事では、2013年度に11兆円を越えたとされる、消費者向け電子商取引の市場規模の中に、利用運送や実運送の業務の発生という観点からは、注意すべき業種としてサービス業を取り上げました。

今回は、前回と同じ観点から「情報通信業」を取り上げますが、前回記事の注1の尚書きでも述べましたように、平成27年5月29日付けで、『平成26年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書』がウェブページにアップされ、2014年度の国内消費者向け電子商取引の市場規模が12.8兆円と発表されておりますが、本記事でも前回記事と同様に、本ウェブページの5月22日以降の公開記事からの一貫性を保つため、2013年度の市場規模をベースに、以下述べていきたいと思います。

2013年度に関する報告書(以下単に「経産省報告書」と呼びます)では、この業種の中に、「通信、放送、情報サービス、インターネット付随サービス、映像・音声・文字情報製作業」が含まれております(経産省報告書57ページ)。この中では「消費者向け電子商取引(BtoC-EC)市場規模の業種別内訳」には、情報通信業全体で2兆6970億円の市場規模とされていますが、これは物販系の電子商取引をも含んだ数値です。ここでは、物品の利用運送や実運送が発生するとは思えないアイテムのみの市場を割り出すために、「経産省報告書」の「情報通信業」に関する市場動向でも触れられている(71ページ)総務省情報流通振興課により、平成25年8月9日付けで発行されております「モバイルコンテンツの産業構造実態に関する調査報告」の別添(以下単に「総務省調査結果別添」と呼びます。別添の日付は平成25年7月)をみてみます。

総務省調査結果別添では、調査の対象として取り上げている市場は、フィーチャーフォン市場とスマートフォン市場とに限定されてはいますが(パソコンやタブレットによるものは含まれていないという意味)、次のようなものが掲載されています(総務省調査結果別添3ページ、4ページ)。すなわち:
着信メロディー、着うた、モバイルゲーム、装飾メール、電子書籍、リングバックトーン、占い、待ち受け、着せ替え、天気/ニュース、交通情報、生活情報、ソーシャルゲーム、動画専門、芸能エンターテイメント、メディア・情報、その他コンテンツ
であります。このように具体的にモバイルコンテンツのアイテムをみてみますと、いずれも利用運送や実運送が発生しそうにありません。

では、金額面から見たモバイルコンテンツの市場規模はどうなっているのでしょう。結論からいいますと、「・・平成24年のフィーチャーフォン市場は4793億円となり、前年比で26.7%減となった。スマートフォン等市場は3717億円の361.2%の増となった。・・」となっています。出典は下の注を参照してください。この合算額8510(4793+3717)億円は、経産省報告書の中の「2012年のモバイルコンテンツ市場規模は8,510億円(前年比116%)であった(※フィーチャーフォン、スマートフォン合計)」との記述の金額と一致しておりますので、パソコンやタブレットによるコンテンツ市場は除かれており、且つ、2012年度の数値ではありますが、2012年度のモバイルコンテンツ市場は8510億円となります。では2013年度の市場規模はどうなっているのでしょうか?2013年度の数値が公表されていないので、2013年度も同程度との仮定が成り立つでしょうか?

「モバイル」コンテンツ市場においては、成長するスマートフォン市場と、縮小するフィーチャーフォン市場が混在していますが、「デジタル」コンテンツ市場としては、モバイルコンテンツ市場に加わえ、パソコンやタブレットによって購入されるデジタルコンテンツもあります。ここまで、2013年度消費者向け電子商取引の市場の一部として含まれている「情報通信業」の中に、どの程度、利用運送や実運送が発生しないものが含まれているかを、割り出そうとしてきましたが、上記に述べてきましたように、2012年のデジタルコンテンツ市場だけで8510億円あり、これに加え、具体的な規模が記載されていない、パソコンやタブレットによる電子商取引もあるわけですから、「2013年度」においても、少なくとも8510億円程度は、利用運送や実運送が発生しない「デジタルコンテンツ市場規模」と推定することは許されるのではないでしょうか。

前回の記事と今回の記事をまとめますと、11兆円を超える、と報告されている2013年度の消費者向け電子商取引のうち、前回6月19日にお話したサービス業の市場規模1兆9920億円、今回の情報通信業のうち少なくとも8510億円(推定市場規模)とを合算した2兆8430億円、すなわち11兆1660億円の実に四分の一にあたる25.5%が、実は利用運送業にも実運送業にも関係のない市場であるということが言えるのではないでしょうか。

以上、「清水建設が・・大型設備運営に本格参入する」という日経新聞電子版の記事に端を発し、不動産事業者が本格参入する動機として、インターネット通販事業の拡大が取り上げられ、そのネット通販が含まれる「消費者向け電子商取引の市場規模」が2013年度において11兆円を超えていると報道されていることについて、その根拠となっている(と思われる)経済産業省の報告書を参照しながら、「利用運送や実運送に携わる皆さんにとっての」市場規模はどの程度なのかを、6回にわたってお話してきました。

経済誌はおおむね、経済の肯定的な側面を強調して、景気を牽引して行こうとする傾向があり、これ自体は、いいことなのですが、報道される数値については、そのような経済紙としての性向を認識する必要があるでしょう。もちろんネット通販の市場規模は今後も拡大していくと思われます。それはいろいろな関連事業の状況から間違いはなさそうなのですが、利用運送や実運送に携わっている皆さん、これから携わろうとする皆さん、現在携わっていて、更なる投資を考えられている皆さんには、「自分たちの事業にとっての」市場規模を、公表されている数値から割り出して、より確度の高い事業予測なり、事業計画の策定をしていただきたいと願い、この記事がその際の参考になればと念じております。

(注)「総務省調査結果別添」の2ページ、”モバイルコンテンツ及びモバイルコマースの市場規模の推移”のコメント部分