日本通運が成長力を取り戻したのは、他社へではなく、自社への3PL業務遂行の結果

6月26日の日経新聞電子版に「会社研究 取り戻した成長力(3)日本通運 国内物流、しがらみ断ち復活」という記事がアップされていました。この記事によりますと、かねて「お荷物」とされてきた国内物流の採算改善により、日本通運の「2015年3月期の連結経常利益が、595億円と23年ぶりに最高益を更新、今期も増益を見込」んでいるということです。その原因は、「陸海空の垣根をこえた営業」にあるとも。

「物流のデパートである」日本通運にとって、「陸海空の垣根をこえた営業」は、記事も触れているように、当然のことと思われます。しかし、「しがらみ」によって、「陸海空の事業部が地域ごとに支店を構え」、「顧客の窓口も分かれてい」て、「人事交流もほとんどなかった」ため、簡単ではなかったということです。「それを昨年5月に九州、 同10月に関西で統合。今年5月には関東も続いた」結果としての、最高益を更新しての「快走」ということのようです。

もともと日本通運は自社の提供するサービスとして3PL(サードパーティ・ロジスティックス)を掲げています。同社のホームページでの3PLの定義として、「物流業務のアウトソーシングを前提として物流改革を提案・実現し・・」とありますが、今回の同社の「快走」は、自社に対して(アウトソーシングを前提にしないで)物流改革を実現した、とも言うことが出来るように思えます。

しかし、最高益の更新として挙げられている記事の内容を見れば、①地域ごとの支店の統合、②顧客の窓口の統合、③人事交流の実現、といった、通常の会社の組織変更としか言えない要素が有るだけで、日本通運という一大手「物流」会社の、社内組織の「改革」により、「物流改革」がなされたに過ぎない、という厳しい見方も可能なのかも知れません。①、②、③の内容を「しがらみを断ちきっ」て実行したということは、それなりに物流業界においては大変といえば大変なのでしょう。しかし、組織変更を超越した「改革」が、少なくとも記事からは見えてこず、「物流改革」と素直に呼べるものなのかどうかは、なかなか判じがたいのです。

確かに、「しがらみ」の多い国内物流業界において、これを断ち切ることは、「改革的」なのかも知れないのですが、外資系物流会社によるグローバルなロジスティクスが、日本国内物流業界にも敷衍してきて、それが大手の物流会社にも影響を与え始め、その対抗上の処置に取ったに過ぎないとみることも可能でしょう。日経新聞の電子版では、日本通運の今期見込みの219億円の営業利益と、2.7%の連結営業利益率に触れたあとに、「ただし胸を張れる利益率ではない。物流大手では16年3月期予想で5%前後のヤマトホールディングス、近鉄エクスプレスに見劣りし、自己資本比率(ROE)でも後じんを拝する。欧米大手の背中はさらに遠い。」とあり、先手を打った結果としての「快走」ということではなさそうです。

纏めますと、日本通運が23年ぶりに最高益を更新し、成長力を取り戻したと評価されているのは、3PL業務を、他社ではなく、他ならぬ自社に適用し「陸海空の垣根をこえた営業」を実施できたことにあり、内容的には組織改革を超えるものではなさそうです。