人財育成に活かしたいアドラー心理学

過去にとらわれず今この瞬間に着目する

最近書店の店頭にはアドラーに関する書籍が山積みになっています。アドラーは心理学者で「自己啓発の父」と呼ばれ、世界中の著名な事業家に大きな影響を与えてきました。心理学者と言えばフロイトが有名ですが、フロイトは「原因」に着目しますが、アドラーは「目的」こそが人を動かす源泉であると考えます。つまり、フロイトは人間の行動は過去により規定され、自分の力で未来をコントロールできないと主張したのに対し、アドラーは人間は未来への目的により行動を自分で決めることが出来ると主張しました。過去にとらわれず今この瞬間に着目するアドラーの考えの方が前向きであり、ビジネスと結び付きやすく、特に人を育てるということに関してアドラーの考えは非常に有益であるようです。そこで今回はアドラーの考えを運送会社で採用した人を育てる場面を想定し、当てはめながら説明します。

従業員をほめても叱ってもいけない

事業運営をしていく中で、アメとムチを使い分けて従業員をコントロールしようとする経営者がいます。人をほめることは一見素晴らしい事のように思えますが、叱られたりほめられたりすることに慣れた従業員は経営者(もしくは上司)が見ている前でしかその行動を取らなくなるとアドラーは考えます。また、叱ることは一時的な効果しかなく、従業員の活力を奪います。そこで、アドラーは信頼関係を重視します。つまり、経営者と従業員の信頼関係を築いた上で、問題行動が起こって時間を置いてから穏やかな空気の話し合いを行うことが解決策だとします。また、アドラーは結末から学ぶことを重視し、失敗を積ませることは経験を積ませることに繋がるといいます。リスクのある仕事を任せ、見守る寛大さが大切だといいます。そして、部下を育てる時の指標として「この体験を通じ、相手は何を学ぶだろうか」と経営者は自答すれば答えは見つかるとしています。また「良くやった」と上から目線で人をほめるよりも横から目線で「ありがとう。助かったよ」と感謝することで従業員は喜びを感じ、強固になった信頼関係の中からはさらに生産性が高まると考えます。

勇気をくじくのではなく勇気づけを行う

アドラーは勇気を重要視します。人が困難に直面した時に勇気があれば解決策を探ろうとします。そこで経営者は従業員に勇気づけを行うため、従業員に「ありがとう。私はあなたのおかげで助かった」と伝えることが大切です。なぜなら、従業員は組織への貢献感を感じ、自分が組織にとって価値があると思える時に勇気を持てるからです。また、事故が起こった時に問題指摘や事故原因の究明は従業員の勇気をくじくことに繋がります。そこで事故原因の究明は本人の前では行わず、「今後このようなやりかたはどうだろうか」と建設的な提案で人を育てるべきです。採用した人材の自律的育成と離職防止のためには従業員の勇気を奪わない教育が大切だということです。