企業経営者の内心に存在し得る「しがらみ」

私情に絡んだ「しがらみ」

「しがらみ」と言えば、腐れ縁など、第三者との関係において認められるものが、まず頭に浮かびますが、「しがらみ」そのものは、人の内心においても存在し得るもののようです。

しがらみ事業経営

本日、東芝が決算発表を再度延期すると報道されていました。二度の決算発表という、異例の事態の端緒を作った責任は重大であります。東芝パソコン事業で功なり名を遂げた西田氏からの「チャレンジ」により、事業規模の大きいパソコン事業からの、なにがなんでもの、より大きい利益創出に、事業経営が呪縛されていました。利益の水増しが常態化する端緒になったと思われる、2008年のパソコン事業の50億円水増しに至るまでの全社月例報告会で「こんな数字恥ずかしくて公表できない」と発言があったとのことですが、この発言などは、事業成果の係数が個人の面子に置き換えられてしまっています。まさに私情にしがらんだ事業経営と言えるのではないでしょうか?そしてそのような事業経営が継続されたことに、今般の東芝不正会計問題の原因の一部があるのではないでしょうか?

しがらみ人事、後任者の選任について

東芝社長としての西田氏の前任者二人が、経団連副会長という地位を得ていましたが、これを越えるには、経団連会長という地位しかない、という西田氏の競争心、よく言えば上昇志向ですが、そのような地位への執着というしがらみに絡んで、以下のようなトップ人事が行われました。

西田氏の目指していた「経団連会長」に選出されるには、会社の現役の社長か会長であることが不文律と言われています。リーマンショックの影響で、同氏は社長から降板しますが、それまでの慣例に従い東芝の会長に就任します。数ある大企業、優良企業の中から、経団連会長を出す企業として一歩抜きん出るには、会社のあくなき成長が求められたのでしょう。それを実行していくのは、後任の社長ですが、当初は高く評価し、後任社長の人選の際「この人以外にはいない」と西田氏が高く評価していた佐々木氏が、成長路線からの経営方針を変更する兆しを見せ始めると、西田氏は、自分に相談してこない、彼は傲慢だというような理由で、佐々木社長(当時)を交代させることにしました。これが自身の経団連会長就任という私情に絡んだ一つ目のしがらみ人事。

また、社長を退任する佐々木氏の処遇は、社長から会長へというのが従来のトップ人事でしたが、それでは、西田氏自身が会長職を退き、経団連会長の芽が全くなくなってしまう。逆に佐々木氏が、経団連会長の候補となってしまう。そのようなことを防ぐため、それまでなかった副会長というポジションを新たに作ってまで、佐々木氏を就任させています。これが私情に絡んだ二つ目のしがらみ人事。

佐々木氏の後任として、自らの経団連会長への就任に役立つと思われる、会社の成長路線を維持するために、西田氏の腹心の部下である田中氏を社長に就任させるという、これは従来の意味でのしがらみ人事。これが三つ目。

更に、西田氏が役員定年で相談役に退く前に、自分を追い抜かせないという、自身のプライドのしがらみに絡められ、会長の座を、社長職経験のない室町氏に譲り、佐々木氏を飛び越えさせて東芝会長に就任させ、あくまでも佐々木氏の経団連会長就任を防いだ、ということが報じられています。仮にこれが本当ならば、トップ人事がしがらみに基づいたものといわざるを得ません。これが四つ目のしがらみ人事。

上記一連の人事は、まさにしがらみの四重奏と言え、現在の想像されていた以上の根深い問題の下地であったようです。

企業の成長の障碍となる「しがらみ」発露の多様性

「しがらみを断って、企業の成長力を増す」という際の「しがらみ」とは、なにも第三者との関係だけではなく、経営者の内心にも存在し、その発露は非常に多様である、ということを参考にして頂ければと思います。