功名心に操られた会社経営の危うさ

健全な利益追求と不健全な利益追求

前回、二種類の利益ということについてお話しました。
「会社の維持・成長に貢献する利益」については、その追求の動機がどうあれ、「健全な利益追求」と言えるでしょう。経済活動に携わる人達が、利益を獲得しようとする動機には、「利己的」なものであれ、「利他的」なものであれ、種々様々なものがあるでしょうが、法律上許されている経済活動を通じて得た利益を、帳簿に適正に記帳されていれば、利益追求の動機の内容は問題とならないのです。

「会社を毀損する見せかけの利益」についてはどうでしょう。その獲得動機が、たとえ「利他的」なもの、たとえば、会社の倒産を防いで従業員の雇用を少しでも継続しようなどといった、自分自身ではなく、会社のため、従業員のためなどであったとしても、その追求は「不健全な利益追求」となります。なぜなら、会社の利益関係者、例えば株主などを法的に保護するため、会社には利益を適正に帳簿に表示する義務が課せられているからです。動機が「利他的」であったとしても、「不健全な利益追求」なのですから、まして利益を求める動機が「利己的」なものであれば、これに勝る「不健全な利益追求」はないでしょう。

今回の東芝不正会計問題に関して、報道されている内容をベースに、「会社を毀損する見せかけの利益」を追求する「利己的な動機」を具体的に見てみることにしましょう。

特定の地位に就任したいという動機

「財界総理」といわれている経団連の会長に選出されることを目的として、「10年後よりも、自分が退任するまでの数字を重視」したのでは、との報道がありました。もしそうであれば、これは「利己的な」動機と言わざるを得ません。本来、「会社の維持・成長に貢献する利益」を出しているにも拘らず、個人的な功名心をより達成しやすくするために、「会社を毀損する見せかけの利益」をも求めるのは、「不健全な利益追求」でしょう。全体の利益に占める後者の利益の割合が、それほど高くないことを考慮すれば、少しの見せかけの利益を求めることにより、全体として「会社を毀損した」とすれば、まことにもったいないことをしたものです。前々任者、前任者が経団連副会長に就任したあと、叙勲の受章者になっていますが、前々任者、前任者を越えようとのこだわりが、叙勲の可能性まで潰してしまったように思われます。

地位を求める競争に勝とうという動機

前任者と対抗するために、自らも経団連会長の候補にならんとして、「会社を毀損する見せかけの利益」をあげるのも、上記に述べましたように、これもまた「不健全な利益追求」でしょう。いくら大企業とはいえ、三日間で120億円の利益を要求しているのを見ますと、その合理的実現性を考慮しない点において、精神論だけで軍を押し進めた旧陸軍のやり方の様にも思えます。

抜擢に報いたいという動機

社長に指名されるまでは、業界ではノーマークだったにも拘らず、指名委員会の委員でもある当時の会長から、「もう一度成長軌道に乗せてほしい」と言われて社長に抜擢してもらったため、その抜擢に報いたいとの動機も、個人的、私的な動機、すなわち「利己的な」動機です。その動機に基づき「会社を毀損する見せかけの利益」を追求するのも、「不健全な利益追求」と言わざるを得ないでしょう。「会社の維持・成長に貢献する真の利益」を求めるべきところ、結局は、先々代、先代の社長からの流れを断ち切ることはできず、行きがかり上、ずるずると引きずられ、深みにはまっていったようです。

ケーススタディとして学ぶべきこと

今回、このような「会社を毀損する見せかけの利益」を、社長三代にわたって、「利己的な」動機に基づいて「不健全な追及」をしていたとすれば、社長辞任会見で述べられた「140年の歴史の中で最大とも言えるブランドイメージの毀損」は実際にその通りでしょう。これまで東芝には、「海の家事件」「東芝機械事件」など、新聞を賑わした事件が何件かありましたが、今回のようにトップが関わったというのは初めてでしょう。今回の事件は、上記のような功名心に操られた会社運営が如何に危ういものかということを教えてくれたのではないでしょうか?
貨物利用運送業、実運送業の経営に携わる皆さんにも、他山の石として読んでいただけたなら幸いです。