大型物流施設の利用業界の多様性に留意しよう

前回、建設・不動産事業者が大型施設の新規建設物件の供給を拡大する「動機」として、ネット通販の拡大がその念頭にあったとしても、建設物件の供給拡大が、ネット通販事業の拡大そのものを裏打ちするものではないことを述べました。

今回は、大型施設の新規建設物件の供給拡大とネット通販事業拡大の間にある、もう一つのギャップについて述べます。それは、建設・不動産事業者の大型物流施設の「利用業界の多様性」です。

大型物流施設の運用者の目から見れば、実運送が短時間の間に発生する頻度の高いネット通販事業者も、運送がそれほど頻繁に発生しない事業者も、施設賃借人である顧客としてはなんら差異はありません。ネット通販事業の拡大を見込んで、大型物流施設の供給面積を拡大した後に、その見込みがはずれたとしても、大型施設の持つ「利用業界の多様性」が、建設・不動産事業者による新規建設の一つの安全弁となっています。

大型物流施設の運用者にとっての市場は、前回引用しました日経電子版(5月18日付)の記事に見られる様に11兆円を越える「消費者向け電子商取引の国内市場」(2013年度)に加え、186兆円の企業間電子商取引市場があります。これはインターネット技術を用いたコンピュータネットワークシステムを介しての商取引(狭義の企業間電子商取引)に限定したものであり、インターネット技術に限定せず、広くコンピュータネットワークシステムを介しての広義の企業間電子商取引については269兆円とされています(注)。
言い換えれば、大型物流施設の運用者は、運送頻度を問わず、顧客層としては、消費者向け電子商取引に携わる事業者(ネット通販事業者を含む)と、企業間電子商取引に携わる事業者の双方を対象にできるのです。特に後者の市場は、前者の20倍の規模があることは留意に値するでしょう。又、大型物流施設を運用したり、新規に供給したりできる建設・不動産業界「大手」は、企業間商取引のロジスティクス/サプライチェーンに既に参画しているか、又は、参画しやすい立場にあると言えることも見逃せません。
因みに、狭義の企業間電子商取引市場は2009年の131兆610億円から2013年の186兆3040億円へと年平均9.2%成長しています。又広義の企業間電子取引市場は2009年の204兆8550億円から2013年の269兆3750億円へと年平均7.1%と、消費者向け電子商取引ほどではありませんが、兎も角成長しています(注)。企業間商取引のロジスティックス/サプライチェーンに既に参画されている実運送業に携わっておられる事業者の方にとっては、兎も角いい傾向ではありますが、消費者向け電子商取引の拡大のみを見込んで自らの事業の見通しを策定される利用運送業や実運送業に携わっておられる皆さんには、大型物流施設の利用者の多様性に留意して頂きたいのです。

(注)『平成25年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書)』46ページ参照