大型物流施設の新規供給面積拡大は、必ずしもインターネット通販の拡大を裏打ちするものではない

先日、「清水建設が最大600億円をかけて首都圏に3拠点を整備し、物流施設運営に本格参入する」と報道されていました(5月18日日経電子版)。参入の動機はインターネット通信販売(以下「ネット通販」と略す)の拡大をにらんでのことのようです。清水建設に限らず、建設・不動産業界の「大型の物流施設の新規建設」に関して、「賃貸物件の供給面積」が2015年には、過去最高を更新する勢いを示すグラフも掲載されていました。

「建設・不動産大手により」、「新規建設物件の供給面積」が拡大されている傾向を、利用運送事業や実運送事業に携わる皆さんが、自身の事業の参考にされる場合、次の点を認識しておく必要があると思われます。

まず、新規物流施設の供給面積の拡大傾向は、建設・不動産業界等大手の投資の結果であって、ネット通販事業の規模の拡大傾向そのものを示すものではありません。「建設・不動産大手が都市部近郊に大型物流施設を相次ぎ建設する」動機そのものが、「ネット通販の拡大」ではあっても、新規物流施設の供給面積が、ネット通販事業の規模の拡大に直接繋がるものではないことに留意する必要があります。

利用運送事業や実運送事業に携わる皆さんが、もし、実運送が頻繁に発生するネット通販事業の拡大を見込んで、自らの事業の見通しをたてるならば、まず参考にすべき数値は、賃貸物件の新規「供給」面積ではなく、新規に「賃貸された」延べ床面積の実績値なのです。「13年には消費者向け電子商取引の国内市場は11兆円を越えた」ことは、利用運送事業や実運送事業に携わる皆さんの事業にとってはいいニュースでしょうし、昨年8月に経産省から出されている報告書(注)によれば、同市場は2009年の6兆6960億円から2013年の11兆1660億円へと4年間で年平均13.6%成長しておりますので、2014年以降の国内市場規模についても、明るい見通しを持てるでしょう。しかし、建設・不動産事業者の、将来に関する見通しと、賃貸施設を必要としている事業者(ネット通販事業者を含む)の見通しとは、ギャップがある可能性を見落としてはならないのです。

更に絞り込みましよう。もし(くどいようですが)ネット通販事業の拡大をベースに皆さんが事業の見込みを策定されるなら、新規に「賃貸された」延べ床面積のうち、ネット通販事業者が賃借人となっている延べ床面積が占める割合の照査が欠かせません。大型施設が、市場の拡大している医療機器など、中・大型機器のサービス部品などの保管に使用される可能性なども考えれば、新規に賃貸された延べ床面積には、ネット通販とは全く異なる事業者の賃借スペースも含まれていることも認識しておく必要があるでしょう。

上記二点より、大型施設の新規建設物件の供給を拡大する「動機」として、ネット通販事業の拡大見込みが、建設・不動産事業者の念頭にあったとしても、建設物件の供給拡大が、ネット通販事業そのものの拡大を裏打ちするものではないことを、利用運送事業や実運送事業に携わる皆さんに認識して頂ければと思います。

(注)『平成25年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書』
経済産業省 商務情報政策局 情報経済課