大量の契約を迅速に処理するために

契約と約款

普通、私たちがモノを購入したり、サービスを依頼する場合、その都度契約が交わされています。例えば、コンビニでお弁当を買う時はお店と売買契約を結びます。契約は口約束だけでも成立します。また、不動産の売買契約など、契約条項が複雑になってくる場合、契約内容を証拠化し、当事者を拘束する目的で契約書を交わします。

しかし、運送業では不特定多数の利用者と大量の取引を行います。その都度いちいち契約書を作っていては仕事が進みません。そこで考えられたのが、「約款」と呼ばれる契約条項です。約款とは、不特定多数の利用者との契約を画一的に処理するために、あらかじめ定型化された契約条項のことをいいます。消費者は事業者が提示した約款に示された契約内容を承諾することで、契約に拘束されることになります。

貨物利用運送事業と約款

貨物利用運送事業を営む場合も不特定多数の消費者と契約を大量に結ぶため、それらを画一的に処理したほうが双方にメリットが生まれます。そこで、貨物利用運送事業法では、第一種貨物利用運送事業者は運送約款を定め、国土交通大臣の認可を受けることが義務付けられています。変更するときも同様です(第8条1項)。そして、大臣は次に掲げる事情によってその有効性を判断するものとされています。つまり、①荷主の正当な利益を害するおそれがないこと、②運賃や料金の収受並びに第一種貨物利用運送事業者の責任が明確に定められていること(第2項)。さらに、大臣が作成公示する「標準運送約款」と同一の運送約款を用いる場合は、その旨を届け出ることでも良いとされています(第3項)。

民法改正で「約款」が明文化されることに

約款は事業者が一方的に定め、消費者がそれに従うといった性質を持つために、力関係で消費者が不当な契約条項を飲まされる恐れも出てきます。約款の有効性が争われるケースも後を絶ちません。そこで、今回改正される民法では、約款の条項を新たに設け、①相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項で、②その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして信義則に反して相手方の利益を一方的に害するものについては、合意をしなかったものとみなされ拘束力はないとされました。消費者の保護を明文化し、約款を用いる事業者利益とのバランスが図られています。