貨物利用事業者が利益率の目標を設定する場合、投資家の視点からの利益率に引きずられないように注意しよう

日本通運の利益率が、ヤマトホールディングのそれに及ばない、と日経新聞電子版にてふれられていました。投資家の目から見れば、会社全体の利益率や配当性向が主な関心事となるでしょう。そして企業トップは、投資家の視点を重視する必要があるでしょう。しかし、貨物利用運送業務に携わる皆さんが、事業の計画策定の為に、自社の利益率の評価をした上で、ターゲットとすべき会社を選定する場合、その会社の具体的な事業内容を精査する必要があります。同じ事業内容の利益率になっているかということを検討する必要があります。アップルーツーアップルで行う必要があるのです。他社と競業されている実運送事業の皆さんには、経験的に認識されていて言わずもがなではあるでしょうが。

前回に登場してもらっているヤマトホールディングのアニュアルレポートを一覧してみますと、小口貨物輸送サービスであるデリバリー事業は、同社の全売り上げの四分の三以上を占めています。また、海外への展開があまりはっきりしません。一方、日本通運に関しては、セグメント別の実績値を見てみますと、ヤマトホールディングでいうところのデリバリー事業と簡単に比較し得るようにはなっていません。もし日本通運にても、デリバリー事業の利益率が一目瞭然であるならば、それとヤマトホールディングのものを比較して、その業務効率を論じるのは意味があると思います。しかし、日本通運では、自社のエレベーターの中にも掲げていたポスターにあるように、美術品の運送など、非常に特殊な運搬も、事業の一環としてやっています。宅配便のように頻繁に、美術品の運搬が発生するかは疑問ですし、代替品の存在しない美術品の運搬には、そのノウハウの蓄積も必要でその為の人員確保も継続的に必要でしょう。しかし、美術品の運送のような他社には真似ができない事業も、その為に全体の利益率が下がったとしてもやっていくというのが事業方針であれば、そのことも含めて利益率を評価すべきなのです。美術品の運送に限らず、日本通運では、プラント工事などの重量品建設関連業務も行っています。海外にも大きく事業展開をしています。それらを事業の一環としてやっていく限り、結果的には、宅配便のような利益率を出せないかも知れません。事業内容のミックスによって、全社の利益率も異なってくるということです。こうして見てきますと、日本通運がヤマトホールディングと同じレベルの利益率を追い求めることが、はたして正しいのかどうか判然としません。

少なくとも、利用運送事業や実運送事業など、実業に携わる人が目標とすべき利益率は、投資家が関心をよせる利益率とは当然異なってきます。利益率の評価をしたり、目標を設定する場合、投資家の視点からの利益率に引きずられてはなりません。間違った目標を設定し、それに向かって人的・物的資源を投入することだけは避けなければならないでしょう。