施設が大型であることによる利用形態の多様性

前回の5月31日の記事では、大型物流施設の利用業界の多様性について述べました。大型施設の運用者は、その顧客層として、消費者向け電子商取引事業者(ネット通販事業者などを含む)のみではなく、企業間電子商取引を行う事業者も含むことができます。利用業界そのものが多様性に富んでいるということです。

もともと大型物流施設を運用したり、新規に供給したりできる建設・不動産業界の「大手」は、事業規模の大きさ自体から、企業間電子商取引のロジスティクス/サプライチェーンに既に参画しているか、又は、参画しやすい立場にありますが、大型施設の延べ床面積の大きさからも企業間電子商取引に絡んでいきやすいのです。つまり、顧客となり得る業界の幅は広いのです。利用運送事業や実運送事業に携わる皆さんには、既に企業間電子商取引のロジスティクス/サプライチェーンに参画されていれば兎も角、ネット通販事業拡大のみに注目して大型物流施設の新規増設がなされていると考えるのは危険ということを認識して頂きたいのです。

このように前回は利用業界に注目したわけですが、今回は施設が大型であることそのものから導くことのできる、利用形態の多様性についてみてみましょう。

大型物流施設の運用者は、大型であるが故に、入・出庫頻度は低いけれども多くの保管スペースを必要とする事業者に物流施設を貸し出すことも可能です。

まず、入・出庫の頻度について考えてみましょう。入・出庫の頻度が高くない顧客からの預かり製品は、バースから遠い倉庫スペースに割り当てればいいでしょう。反対に、入・出庫の頻度が高い顧客には、バースに近いスペースを割り当てます。一般的に言って、顧客の入・出庫の頻度差は、バージ近くのスペースをどの顧客に割り当てるかなどの、保管場所の工夫で対処できるのです。

次に、多くの保管スペースを必要とする一例をあげますと、産業関連機器・精密機械などの、中・大型機器やそのサービス部品に携わる事業者を顧客とする場合です。因みに、前回にも引用しました経済産業省の報告書(51ページ)では、次の様に説明されています。
(引用開始)「産業関連機器・精密機器」は市場の拡大に加えて、各企業における効率化を目的としたIT活用が拡大しているが、特に医療機器業界では積極的な取り組みが見られる。厚生労働省の薬事工業生産動態統計によれば、わが国の医療機器市場規模は・・・平成16年以降増加し、2兆円超の規模で推移、平成23年は約2.4兆円となり、過去最大の市場規模となった。(引用終了)

物流施設が大型であればあるほど、施設運用者は、消費者向けの小型の商品だけを扱う事業者だけではなく、産業関連機器など中・大型の製品を取り扱う事業者にまで、その顧客層の幅を広げることができます。産業関連機器などは企業間電子商取引であって、ネット通販事業ではありません。大型物流施設はなにもネット通販事業者に限定される訳ではないのです。

顧客層の多様性を維持するには、大型物流施設運用者において、いろいろな業界のニーズを満たすことが前提ですが、仮に、比較的小型の商品を取り扱う消費者向けの電子商取引の国内市場の拡大を見込んで、新規に大型物流施設を増設したけれど、思うように顧客を獲得できなくとも、この様に企業間取引に転用することが可能なのです。

利用運送事業や実運送事業に携わる皆さんが、ネット通販事業の拡大をベースに、新規参入や新規投資を考慮するのであれば、風が吹いても、桶屋は儲からないこともあるので、ネット通販事業そのものの事業の規模やその成長性を十分見極める必要があるでしょう。もちろん吹いている風が、何の兆候を示しているのかを、関連情報を収集しながら、事業の舵取りをする必要があることは論を待ちませんが。