消費者が安全な商品を選ぶことには限界がある

高速道路の整備と共に便利になった高速バスネットワーク

先月15日の未明に起きたスキーツアーバス転落事故。新たに亡くなった一人の方を含め15名の命が失われました。高速道路が全国津々浦々まで整備され、都市間移動や国内旅行ではもはや欠かせない高速バスですが、安全なバスを情報弱者である私たち消費者が選ぶにはおのずと限界があります。

消費者には隠された情報は知らされていない

今回の事故の中では監督責任のある国土交通省、ツアーを企画した旅行会社、バスを運行したバス会社3つのプレーヤーの責任が問われるべきであると思います。旅行会社のキースツアー社は国の基準を下回る金額でバス運行会社のイーエスピー社に業務を委託していました。国は事故が起きるまでその実態を見抜けませんでした。また、報道で明らかにされたイーエスピー社のずさんな労務管理。しかし、一般消費者の私たちはツアーを予約する際にその実態を全く知ることはできないのです。旅行は「夢」を売る商品です。だから、明るい情報が目に入るようなパンフレットやサイトが溢れ、約款や旅行条件書は小さな文字で書かれているにすぎません。そこで、先日観光庁が旅行会社に対し、パンフレットにどこのバス会社を利用するのか明記するように求めるという報道がありました。しかし、消費者は業界の主従関係や運行会社の労務管理まで知ることはできないのです。ですから、今後消費者に出来る予防策としては、インターネットで旅行会社やバス会社の評判を事前に調べ、評判の芳しくない会社でしたら当日ドライバーの表情を確認し、バスを見てタイヤがすり減っていたり、黒い排気ガスを吐いていたり目視で危ないと思ったら旅行をその場でキャンセルすること位でしょう。しかし、その場合も今の制度だと当日キャンセルでは50%もしくは100%のキャンセル料がかかります。相場に比べて極端に安いツアーの裏側には何かがあると疑ってみることが必要かと思います。

行き過ぎた競争と疲弊した社会

しかし、根本は事業者と行政のモラルの問題であると思います。違法行為を繰り返す業者が市場でしぶとく生き残り、法律を守って適正な活動をしている会社が競争に敗れ市場から淘汰され、また、違法な労働条件であることを知らない従業員が無理な勤務に追い込まれ、心身をすり減らし事故を起こす事態が発生します。そうなると最終的に市場では良い物の取引が阻害され、粗悪品しか出回らないという結果になります。このように「市場の原理」に任せていると力関係で必ず弱者が追い込まれます。それを防ぐための法規制であり、国の監査であるわけですが、今回のように大きな事故が起こったあとに監査が行われても失われた命はもう戻ってきません。価格競争の裏側で、疲弊しきった社会全体の歪みが今回の事故に凝縮されている気がします。

監督責任のある行政、商品を提供する事業者が今回の事故を教訓に法律や制度を守って私たちの生活に「安全」を提供してくれることを願ってやみません。また、私たち消費者も商品を選ぶ際に、自己防衛の意識を持ちたいと思います。