許認可制度の趣旨と貨物利用運送事業における登録・許可基準

はじめに

前回まで2回、事業を始めるためには「個人事業主」として事業を始める場合と株式会社等の「法人」を設立して事業を始める手続を説明しました。その中で許認可が必要な事業は国や地方自治体の許認可を受けることが事業開始の要件であると説明しましたが、今回は許認可制制度の趣旨及び許認可が必要な事業の一例を挙げ、最後に貨物利用運送事業における許認可に当たる登録・許可基準について考えてみたいと思います。

許認可制度の趣旨と許認可が必要な事業

3/1の記事で説明した通り、誰でも憲法上職業選択の自由が保障されており、やりたい仕事を遂行する「営業の自由」も保障されています。しかし、自由に任せていると力関係で弱者が生まれ、また他人の人権と衝突する場面が生じてきます。そこで、このような自由競争の弊害から個人の人権を守るために、行政が監督指導する必要が生じてきます。そのために許認可が必要な事業があるわけです。

例えば次のような事業に許認可が必要とされています。飲食店、ホテル・旅館・民宿、旅行業、医薬品化粧品販売、クリーニング店、美容室・理容室、映画館、貸金業、建設業、宅建業などは都道府県知事の許可・登録が必要です。また、バー、古物商は都道府県公安委員会の許可、タクシー、運送業、建設業・宅建業(2以上の都道府県に渡る場合)では国土交通大臣の許可、人材派遣ビジネス、人材紹介ビジネスでは厚生労働大臣の許可、そして金融商品販売の内閣総理大臣の登録が必要となっています。

貨物利用運送事業における登録・許可基準

貨物利用運送事業を始める際にも国土交通大臣の登録・許可が必要です。貨物利用運送事業法は貨物利用運送事業の運営を適正かつ合理的なものとすることにより、貨物の運送サービスの円滑な提供を確保し、もって利用者の利益の保護及びその利便の増進に寄与することを目的とするとされています。つまり、法は「利用者の利益の保護」のための制約を予定しています。細かく見ると、第一種貨物利用運送事業では国土交通大臣の「登録」が、第二種貨物利用運送事業では大臣の「許可」が事業開始の要件とされています。登録許可基準ですが、第一種貨物利用運送事業では①事業遂行に必要な施設を備えているか、②財産的基盤はどうか、③経営主体が欠格要件に該当していないかどうかが登録における確認事項とされており、必要最小限度の客観的な要件への適合性についてのみ確認するものとされています。一方、第二種貨物利用運送事業では①事業計画の適切性、②事業の遂行能力、③集配事業計画の適切性などが許可における確認事項となっており、的確な審査を行うとされています。いずれも全体的に事業者の営業の自由を基本的には認めつつ、利用者の利益の保護と過当競争を防止することのバランスを考えた規制となっています。

法人の意味と株式会社の設立の手続

法人とは

前回は個人事業主として事業を始める場合を説明しましたが、今回は法人である株式会社を設立するケースについて説明します。ここで、法人とは人間のような自然人ではないが、法律上人格を認められ権利義務の主体となりうるものを言います。そのため個人事業主と異なり、財産的法的責任も株式会社である法人そのものが負うことになり、原則個人は出資の範囲内で責任を負います。

株式会社設立の手続

株式会社を設立するための手順は会社法という法律で規律されています。まず定款と呼ばれる会社の根本規則を定めます。定款には最低限①目的、②商号、③本店、④設立時資本金の額、⑤発起人の氏名住所を記載しなければなりません。そしてこの定款を公証人に認証してもらいます。次に、出資金の払い込みをします。これが設立時の資本金になります。それから取締役などの役員を選任します。役員の選任は発起人の議決権の過半数で行います。最後に必要書類を揃えて本店の所在地の法務局で設立の登記を申請します。これで法人格をもった株式会社が成立します。ここまで収入印紙や登録免許税などで約25万程度費用がかかります。

その後、税務署へ設立の日から2月以内に「法人設立届出書」を、給与支払事務所になった場合はその日から1月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出します。また税制上有利な「青色申告の承認申請書」「棚卸資産評価方法の届出書」「減価償却資産の償却方法の届出書」なども提出しておきます。さらに都道府県へ「事業開始等申告書」、市町村へ「法人設立届出書」を提出しなければなりません。また、労働基準監督署や社会保険事務所へ労働保険や社会保険関係の届出書を提出します。許認可が必要な事業は監督官庁への届出や免許が必要な点は個人事業主の場合と同じです。すべての届出が完了してから、株式会社としての事業開始です。

株式会社は運営面でも規制がある

事業規模が大きくなると社会的な信用の面や税制、責任などの観点からも法人格を持った株式会社を設立するのがいいでしょう。株式会社では新株や社債を発行することで資金調達が行えます。しかし、株式会社の場合、上記の設立だけではなく、資金調達や組織運営面でも会社法をはじめ様々な法律で規制されています。例えば会社法では、1年に一度は決算を公告すること、株主総会を開なければないこと、任期ごとに取締役等の役員の変更を行わなければならないことなどが規定されています。また、変更の都度登記が必要な事項も規定されています。そのため専門家のアドバイスを受けながら事業運営を行うのが得策だと考えます。

大量の契約を迅速に処理するために

契約と約款

普通、私たちがモノを購入したり、サービスを依頼する場合、その都度契約が交わされています。例えば、コンビニでお弁当を買う時はお店と売買契約を結びます。契約は口約束だけでも成立します。また、不動産の売買契約など、契約条項が複雑になってくる場合、契約内容を証拠化し、当事者を拘束する目的で契約書を交わします。

しかし、運送業では不特定多数の利用者と大量の取引を行います。その都度いちいち契約書を作っていては仕事が進みません。そこで考えられたのが、「約款」と呼ばれる契約条項です。約款とは、不特定多数の利用者との契約を画一的に処理するために、あらかじめ定型化された契約条項のことをいいます。消費者は事業者が提示した約款に示された契約内容を承諾することで、契約に拘束されることになります。

貨物利用運送事業と約款

貨物利用運送事業を営む場合も不特定多数の消費者と契約を大量に結ぶため、それらを画一的に処理したほうが双方にメリットが生まれます。そこで、貨物利用運送事業法では、第一種貨物利用運送事業者は運送約款を定め、国土交通大臣の認可を受けることが義務付けられています。変更するときも同様です(第8条1項)。そして、大臣は次に掲げる事情によってその有効性を判断するものとされています。つまり、①荷主の正当な利益を害するおそれがないこと、②運賃や料金の収受並びに第一種貨物利用運送事業者の責任が明確に定められていること(第2項)。さらに、大臣が作成公示する「標準運送約款」と同一の運送約款を用いる場合は、その旨を届け出ることでも良いとされています(第3項)。

民法改正で「約款」が明文化されることに

約款は事業者が一方的に定め、消費者がそれに従うといった性質を持つために、力関係で消費者が不当な契約条項を飲まされる恐れも出てきます。約款の有効性が争われるケースも後を絶ちません。そこで、今回改正される民法では、約款の条項を新たに設け、①相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項で、②その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして信義則に反して相手方の利益を一方的に害するものについては、合意をしなかったものとみなされ拘束力はないとされました。消費者の保護を明文化し、約款を用いる事業者利益とのバランスが図られています。

国際物流におけるフォワーダーの役割と課題

国際物流業界におけるフォワーダーの役割

今年から復活したJリーグのCSがとても盛り上がりました。サッカーでフォワード(FW)と言えば点取り屋です。物流に似た言葉でフォワーダーと呼ばれる業者があります。国際物流業界におけるフォワーダー(Forwarder)とは、貨物利用運送事業者のことをいい、荷主から荷物を預かり、他の業者の輸送手段を用いて運送を引き受ける業者のことをいいます。一方、キャリア―(Carrier)とは、船や飛行機などの輸送手段を持っている会社のことをいいます。つまり、フォワーダーはキャリア―の貨物スペースに対し対価を支払い、荷主の荷物を運ぶので、国内運送の貨物利用運送事業者と似ています。フォワーダーは国際物流の司令塔であり、コーディネーターという役割を担っています。これはサッカーのポジションだとミッドフィルダー(MF)に該当するのではないでしょうか。

複合一貫輸送とは

グローバル化が進行した今日、国際物流におけるフォワーダーの役割は益々高くなっています。特に、国際物流は輸送手段の選択や通関や保険などの手続きが複雑であるため、専門業者のフォワーダーに頼らざるを得ない局面が多々あります。そして、日本のような島国の場合、フォワーダーは「複合一貫輸送」という輸送手段を選択します。複合一貫輸送とは、例えば、船舶とトラック、飛行機とトラックといった具合に、特定の運送品が、二つ以上の異なる運送手段により運ばれることをいいます。荷送人の下で封印された貨物が一度も開封されることなく、荷受人のもとまで運ばれます。この輸送手段により、荷主はドアtoドアのサービスを受けることが出来、安心して荷物の輸送を依頼することが可能になるのです。

ハードとソフト両面の改善が急務

一方で、複合一貫輸送は通常コンテナで運ばれます。東京や大阪などの大消費地では港湾内にコンテナを置く場所が不足しているため、コンテナを運ぶドライバーが港湾内で待たされるといった問題や、コンテナを陸上で牽引するトラックのドライバーが不足しているなどの理由ために、スケジュール通りに荷物が運べないといったデメリットも生じています。TPP妥結により、今後、さらなる物流増が見込まれています。港湾整備のハード面と人材育成のソフト面、双方の改善が急務だと思います。

配送求人に応募し自家用車を使用する方法と貨物利用運送

年末の人材獲得競争

年末に差し掛かり、運送業界においては取り扱う物量が急増します。それに合わせて、短期の配送求人も見かけるようになりました。中には、車持ち込み可、とか車両手当付といった高時給求人も見かけます。しかし、運送を業として請け負い行うためには営業用ナンバーを取得しなければなりません。応募先が貨物利用運送事業者であれば、営業ナンバーを持つ人に業務を委託することができるからです。

貨物利用運送とは

貨物利用運送事業とは、荷主との運送契約により、国内外を問わず陸海空のうち最適な輸送手段を利用して貨物の集荷から配送までを一貫して行う輸送サービスです。そして、貨物利用運送事業者は、他の事業者が経営する船舶や航空機、鉄道、自動車の輸送手段を利用して荷主の貨物を輸送することが出来ます。つまり、営業ナンバーを持つ人に業務を委託し、その人の車を利用して、荷物を運ばせるのが貨物利用運送です。緑ナンバーのような営業ナンバーを取得するためには審査や試験が必要です。また、許可までに普通3か月程度時間がかかります。そこで、会社が貨物利用運送事業の許可を予め得ておけば、他社または他人と業務委託契約を結ぶことで、営業ナンバーを持つ他人の自動車で荷物を運んでもらうことが可能となるわけです。

車負担には様々な手当も

車を所有していると様々な諸費がかかります。自家用車の場合、車検や自動車保険などで年数万円かかります。そのため、短期の配送求人ではガソリン代以外にも車持ち込み手当などが付与されるのが特徴です。しかし、営業ナンバーを取得していない個人が配送の仕事を請け負う場合、原則として業務ではその車は使用できません。そのため、自家用車を持ちこみ配送の仕事をしようと考えている方は、会社がその自動車を営業用に登録する必要があります。営業ナンバー取得のための登録料を会社が負担してくれるところもあるみたいなので、雇用主と契約前に確認しておくといいでしょう。

プロの証の緑ナンバーと利用運送事業

ナンバープレートの種類

街を歩いていると様々なナンバープレートの車やバス、トラックなどを見かけます。それらを大雑把に、営業用か自家用か、軽自動車か否かの観点から「緑ナンバー」「白ナンバー」「黄色ナンバー」「黒ナンバー」に分類できます。

まず、軽自動車以外には主に「緑ナンバー」か「白ナンバー」が付けられます。
緑ナンバーは「営業ナンバー」とも言われ、お客様から対価を得て有償で物品を輸送する事業を行う車両に用いられます。つまり、事業として運送事業を行うためにはこの緑ナンバーを取得しなければなりません。タクシーや路線バス、宅配業者に緑ナンバーが多いのはこのためです。
一方、白ナンバーは自家用車でおなじみの「自家用」の車両に用いられます。

次に軽自動車には「黒ナンバー」か「黄色ナンバー」が付けられます。黒ナンバーは軽自動車の「営業ナンバー」です。軽貨物運送事業を営業されていることが分かります。
最後の黄色ナンバーは軽自動車の「自家用」ということになります。

営業車が白ナンバーということも

トラックがすべて緑ナンバーかといえばそうではありません。白ナンバーのトラックを見かけることも多いと思います。自分の会社のトラックは白ナンバーだよという方も多いのではないでしょうか。
これには、自分の会社で作った商品を納入先まで自分の会社のトラックで運ぶといったケースが考えられます。この場合は輸送で対価を得ていないために、白ナンバーでも可能なのです。
他方、他社商品を自社の白ナンバートラックで対価を得て運ぶ行為は違法です。そこで、緑ナンバーのトラックを所有していなくても、対価を得て運送業を営む方法があります。それが「貨物利用運送事業」です。

緑ナンバーのメリット

緑ナンバーを持っているメリットは、運送業のプロである証です。緑ナンバーの車を所有していることで、お客様は安心して荷物を頼むことができます。貨物利用運送ではそのような緑ナンバーを持つプロの業者に仕事を依頼するのです。

利益目標を設定するなら何らかの基準を持ちましょう

実現不可能な利益達成指示の意味すること

東芝不正会計問題以降、各部門の損益責任を持たされている幹部は、目標を設定する場合に、注意しなければならない点が増えたと考えてよいでしょう。

佐々木氏は、東芝社長時代に、三日間で120億円の損益改善を指示したと報道されています。いかに大企業であったとしても、あまりに厳しい損益改善を指示すれば、それをチャレンジと呼ぼうが、必達目標と呼ぼうが、それが明らかに達成不可能であれば、今後は会計操作の指示ととられかねなくなるでしょう。

特定額の増益を見込むには、これまでの実績をベースにした利益率に、合理的な伸び率を考慮して、目標達成の実現性を裏打ちする根拠が必要になります。それは現有スタッフで対応可能なものであるのかないのか、そのような検討や実施可能性の見込みもなく、単に、三日間で120億円の利益を新たに増加せよというのは、会計上の操作をしろ、と言っているのと同じと考えられる可能性が増えました。

東芝事業内容の特殊性が導き得る問題の進展

たとえ今回の問題で、東芝歴代社長や、不正会計に関与して辞任した経営幹部が、粉飾決算を理由に訴追されることがないとしても、是非はともかく、それは政府の方針である原子力発電機を製造している大企業であるがゆえの、または、防衛省へ納入する製品の技術を持っているが故の対応かも知れぬと、貨物利用運送業や実運送業に携わっておられる皆さんには、認識して頂きたいと思います。

利益改善目標や売上高伸長を具体的数値をもって指示する際の注意点

以前、「1500億円以上(今では2248億円になっていますが)の利益の嵩上げをしていたけれども、国策と言われている原子力事業を担っている会社の役員は、刑事訴追されないかも知れませんが、その30分の1以下の50億円の粉飾で刑務所に入った人もいる」と指摘しましたが、結果として利益の嵩上げなり、粉飾なりを行わなくとも、あまりに厳しい、損益改善の要求や指示は、不正会計の要求なり指示と認められても仕方がない、ということになっていくのではなかろうかと思います。

更に、今回の不正経理につながった、損益改善の要求や、指示や、チャレンジだけではなく、たとえば、売上高の目標に関しても、あまりに厳しい要求をすれば、無理矢理売上高を伸ばすため、潜在顧客に対する詐欺・脅迫の教唆にもつながるのではないかという懸念すら生まれてきます。

貨物利用運送業に従事する皆さんに

以上、物流のベストマッチを模索して、事業展開を図っておられる、貨物利用運送事業に携わる皆さんにも、経営戦略や事業計画を策定する際の参考になれば幸いです。

企業経営者の内心に存在し得る「しがらみ」

私情に絡んだ「しがらみ」

「しがらみ」と言えば、腐れ縁など、第三者との関係において認められるものが、まず頭に浮かびますが、「しがらみ」そのものは、人の内心においても存在し得るもののようです。

しがらみ事業経営

本日、東芝が決算発表を再度延期すると報道されていました。二度の決算発表という、異例の事態の端緒を作った責任は重大であります。東芝パソコン事業で功なり名を遂げた西田氏からの「チャレンジ」により、事業規模の大きいパソコン事業からの、なにがなんでもの、より大きい利益創出に、事業経営が呪縛されていました。利益の水増しが常態化する端緒になったと思われる、2008年のパソコン事業の50億円水増しに至るまでの全社月例報告会で「こんな数字恥ずかしくて公表できない」と発言があったとのことですが、この発言などは、事業成果の係数が個人の面子に置き換えられてしまっています。まさに私情にしがらんだ事業経営と言えるのではないでしょうか?そしてそのような事業経営が継続されたことに、今般の東芝不正会計問題の原因の一部があるのではないでしょうか?

しがらみ人事、後任者の選任について

東芝社長としての西田氏の前任者二人が、経団連副会長という地位を得ていましたが、これを越えるには、経団連会長という地位しかない、という西田氏の競争心、よく言えば上昇志向ですが、そのような地位への執着というしがらみに絡んで、以下のようなトップ人事が行われました。

西田氏の目指していた「経団連会長」に選出されるには、会社の現役の社長か会長であることが不文律と言われています。リーマンショックの影響で、同氏は社長から降板しますが、それまでの慣例に従い東芝の会長に就任します。数ある大企業、優良企業の中から、経団連会長を出す企業として一歩抜きん出るには、会社のあくなき成長が求められたのでしょう。それを実行していくのは、後任の社長ですが、当初は高く評価し、後任社長の人選の際「この人以外にはいない」と西田氏が高く評価していた佐々木氏が、成長路線からの経営方針を変更する兆しを見せ始めると、西田氏は、自分に相談してこない、彼は傲慢だというような理由で、佐々木社長(当時)を交代させることにしました。これが自身の経団連会長就任という私情に絡んだ一つ目のしがらみ人事。

また、社長を退任する佐々木氏の処遇は、社長から会長へというのが従来のトップ人事でしたが、それでは、西田氏自身が会長職を退き、経団連会長の芽が全くなくなってしまう。逆に佐々木氏が、経団連会長の候補となってしまう。そのようなことを防ぐため、それまでなかった副会長というポジションを新たに作ってまで、佐々木氏を就任させています。これが私情に絡んだ二つ目のしがらみ人事。

佐々木氏の後任として、自らの経団連会長への就任に役立つと思われる、会社の成長路線を維持するために、西田氏の腹心の部下である田中氏を社長に就任させるという、これは従来の意味でのしがらみ人事。これが三つ目。

更に、西田氏が役員定年で相談役に退く前に、自分を追い抜かせないという、自身のプライドのしがらみに絡められ、会長の座を、社長職経験のない室町氏に譲り、佐々木氏を飛び越えさせて東芝会長に就任させ、あくまでも佐々木氏の経団連会長就任を防いだ、ということが報じられています。仮にこれが本当ならば、トップ人事がしがらみに基づいたものといわざるを得ません。これが四つ目のしがらみ人事。

上記一連の人事は、まさにしがらみの四重奏と言え、現在の想像されていた以上の根深い問題の下地であったようです。

企業の成長の障碍となる「しがらみ」発露の多様性

「しがらみを断って、企業の成長力を増す」という際の「しがらみ」とは、なにも第三者との関係だけではなく、経営者の内心にも存在し、その発露は非常に多様である、ということを参考にして頂ければと思います。

自由闊達な議論の出来る企業風土

しがらみ人事について

本サイトの7月3日の記事で、日本通運が「国内物流のしがらみを断ち切って成長力を取り戻した」ことについて縷々述べましたが、一般に「しがらみ」は人事においても生じ、それが今般の東芝不正会計問題を引き起こした一要因とも見ることができるようです。

退任する社長が自身の経営方針維持に拘るということ

西田社長(当時)は、自らが仕掛けたウェスティングハウス社買収という大型M&Aで活躍した佐々木氏を自分の後継者にしました。買収時は39基の原子炉受注を見込んでいましたし、その実現を目指して会社の成長路線が維持されれば、自らの経団連会長就任に一歩でも近づくのに資すると思ったのでしょう。しかし、佐々木社長(当時)が成長戦略を変更する気配を見せると、再度社長人事に介入し、自身の成長路線を踏襲する田中氏を社長に就任させました。
自分の経営方針を踏襲してくれそうな人物を後継者に指名するのは、なんら問題ないようですが、まず、一旦後継者を選んだ後で、自分の方針に沿っていないとわかると、自身の任命責任も問われることなく、自身の方針を継続してくれる他の人物を指名し直すというのは、自身の経団連会長就任というしがらみに基づいた人事と言わざるを得ません。

後継者選びと企業風土

上司の意向に逆らえない企業風土での後継者

後継者に引き継ぐに際して、「自分の経営した期間に発生しているかも知れない問題があれば正して欲しい」というような態度で臨んでいれば、一時的には、自分が進めてきた路線を、ある意味で否定されることがあるかも知れませんが、問題の芽が小さなうちに摘み取られ、ここまで大きな問題にならなかったかも知れません。ただ、週刊誌情報によれば、西田氏は「意見する部下を次々に左遷」していたようなので、そのような期待はできなかったでしょうし、そうであればこそ「上司の意向に逆らえない企業風土」が醸成されたのでしょう。もともと学者を目指していたといわれる頭のきれる西田氏に議論を挑んでも、コテンパンに論破されるのがオチでしょうし、果敢にも意見した部下の末路を見れば、逆らう気力も湧いてこないでしょう。そして、結果的には、後継者として自らと同じタイプの人物、または少なくとも任命当初はそう思われた人物を選択し、その後継者のもとでも引き継がれた、「上司の意向に逆らえない企業風土」の中で、成長路線という同じ経営方針を、三代10年間にわたって続けることになり、その誤謬を質す機会を失ったと言えるのでしょう。

自由闊達な議論ができる企業風土での後継者

後継者選びについては、経済同友会の小林氏が「トップ選びは自分にないものがある人を選ぶ」「(会長と社長が) 補完する関係でないと、どうしても張り合ってしまう」(日経新聞電子版7/22 付け)と言っていますが、参考に値すると思われます。
社長のミッションとして、短期的な利益を細かくフォローするのではなく、また前任者の経営方針を墨守するというのではなく、「企業の方向づけ」を重視するという観点から思い出されるのは、西田氏の前任の社長、岡村氏(現日本商工会議所名誉会頭)が東芝の社長であった時のエピソードです。2000年6月に社長に就任した岡村社長(当時)は、2001年12月に不採算事業からの撤退を始めました。その中に、当時の西室会長がその出身母体とする半導体部門の事業の一つである汎用メモリー事業から撤退し、アメリカの企業に売却すると決定したことがありました。決定後、岡村社長(当時)は西室会長(当時)に、あいさつをしに行ったという報道がありました。これなどを見ても、西室氏の最近の発言にありますように、同氏が社長時代に「闊達に議論できるよう改革を進めた」結果だったと言えるでしょう。岡村氏の挨拶に対して、西室氏は、仕方がないというような大人の対応でした。もともと西室氏はネットの記事によりますと「残しておいても黒字化するメドがない事業を売却することは、業績改善のみならず、危機意識の醸成にもつながる」と考えるような人なので、後継者も客観的な経営判断ができたように思われます。

自由闊達な議論の出来る企業風土の醸成が重要

以上、メーカーとサービス業の違いはあるものの、貨物利用運送業や実運送業に携わっておられる皆さんに、ツートップの会長と社長は互いに補完する関係を作るために、トップ選びは前任者が自分にないものがある人を選ぶという方法や、上司に逆らえない企業風土ではなく、自由闊達な議論のできる風土の醸成こそが重要、ということが参考になれば幸いです。

功名心に操られた会社経営の危うさ

健全な利益追求と不健全な利益追求

前回、二種類の利益ということについてお話しました。
「会社の維持・成長に貢献する利益」については、その追求の動機がどうあれ、「健全な利益追求」と言えるでしょう。経済活動に携わる人達が、利益を獲得しようとする動機には、「利己的」なものであれ、「利他的」なものであれ、種々様々なものがあるでしょうが、法律上許されている経済活動を通じて得た利益を、帳簿に適正に記帳されていれば、利益追求の動機の内容は問題とならないのです。

「会社を毀損する見せかけの利益」についてはどうでしょう。その獲得動機が、たとえ「利他的」なもの、たとえば、会社の倒産を防いで従業員の雇用を少しでも継続しようなどといった、自分自身ではなく、会社のため、従業員のためなどであったとしても、その追求は「不健全な利益追求」となります。なぜなら、会社の利益関係者、例えば株主などを法的に保護するため、会社には利益を適正に帳簿に表示する義務が課せられているからです。動機が「利他的」であったとしても、「不健全な利益追求」なのですから、まして利益を求める動機が「利己的」なものであれば、これに勝る「不健全な利益追求」はないでしょう。

今回の東芝不正会計問題に関して、報道されている内容をベースに、「会社を毀損する見せかけの利益」を追求する「利己的な動機」を具体的に見てみることにしましょう。

特定の地位に就任したいという動機

「財界総理」といわれている経団連の会長に選出されることを目的として、「10年後よりも、自分が退任するまでの数字を重視」したのでは、との報道がありました。もしそうであれば、これは「利己的な」動機と言わざるを得ません。本来、「会社の維持・成長に貢献する利益」を出しているにも拘らず、個人的な功名心をより達成しやすくするために、「会社を毀損する見せかけの利益」をも求めるのは、「不健全な利益追求」でしょう。全体の利益に占める後者の利益の割合が、それほど高くないことを考慮すれば、少しの見せかけの利益を求めることにより、全体として「会社を毀損した」とすれば、まことにもったいないことをしたものです。前々任者、前任者が経団連副会長に就任したあと、叙勲の受章者になっていますが、前々任者、前任者を越えようとのこだわりが、叙勲の可能性まで潰してしまったように思われます。

地位を求める競争に勝とうという動機

前任者と対抗するために、自らも経団連会長の候補にならんとして、「会社を毀損する見せかけの利益」をあげるのも、上記に述べましたように、これもまた「不健全な利益追求」でしょう。いくら大企業とはいえ、三日間で120億円の利益を要求しているのを見ますと、その合理的実現性を考慮しない点において、精神論だけで軍を押し進めた旧陸軍のやり方の様にも思えます。

抜擢に報いたいという動機

社長に指名されるまでは、業界ではノーマークだったにも拘らず、指名委員会の委員でもある当時の会長から、「もう一度成長軌道に乗せてほしい」と言われて社長に抜擢してもらったため、その抜擢に報いたいとの動機も、個人的、私的な動機、すなわち「利己的な」動機です。その動機に基づき「会社を毀損する見せかけの利益」を追求するのも、「不健全な利益追求」と言わざるを得ないでしょう。「会社の維持・成長に貢献する真の利益」を求めるべきところ、結局は、先々代、先代の社長からの流れを断ち切ることはできず、行きがかり上、ずるずると引きずられ、深みにはまっていったようです。

ケーススタディとして学ぶべきこと

今回、このような「会社を毀損する見せかけの利益」を、社長三代にわたって、「利己的な」動機に基づいて「不健全な追及」をしていたとすれば、社長辞任会見で述べられた「140年の歴史の中で最大とも言えるブランドイメージの毀損」は実際にその通りでしょう。これまで東芝には、「海の家事件」「東芝機械事件」など、新聞を賑わした事件が何件かありましたが、今回のようにトップが関わったというのは初めてでしょう。今回の事件は、上記のような功名心に操られた会社運営が如何に危ういものかということを教えてくれたのではないでしょうか?
貨物利用運送業、実運送業の経営に携わる皆さんにも、他山の石として読んでいただけたなら幸いです。

会社の維持・成長に貢献する利益、会社を毀損する見せかけの利益

会社の維持・成長に貢献する利益、会社を毀損する見せかけの利益

昨今の東芝不適切会計問題を目のあたりにしますと、利益とはいったい何かと考えさせられます。利益には、会社の維持・成長に貢献する利益と、会社を毀損する見せかけの利益とがあるようです。以下少し長いですが、他山の石となれば・・・。

会社の維持・成長に貢献する利益

会社の維持・成長に貢献する利益とは、純粋な経済活動の結果、即ち、需要を満たす供給により、需要者と供給者の双方が「経済的に」満足した結果が、適正に当事会社の財務諸表に記帳される利益と言えるでしょう。供給者からみれば、供給物が部品であれ、製品であれ、サービスであれ、供給物の対価と供給物の入手に必要だったもろもろの費用との差額が、適正に記帳されて、初めてこのような利益になります。需要者からみれば、受領した物が、部品やサービスであれば、それを利用する自らの生産活動の準備、商品であればその転売の準備という、いわば会社の維持・成長に貢献する利益を生み出す準備ができるのです。会社の維持・成長に貢献する利益は、その適正な配分により、会社の株主、債権者、取引先など、関係者の全てが、その享受者となります。

会社を毀損する見せかけの利益

会社を毀損する見せかけの利益もあります。経済的な取引実態の有無に拘らず、損益計算書のボトムラインの数字の嵩上げのみを目的として、帳簿上の数字を意図的に操作したり、複雑な取引関係の中にトリックを組み込んだりして得られる、財務諸表上に表現されるものがこれに当たるでしょう。
東芝不適切会計問題での、インフラ事業部門においての一例は、長期プロジェクトの採算を管理する「工事進行基準」と呼ぶ会計処理をする際に、意図的な操作が行われていました。期間対応していない売上げの過大計上や費用引当金の過少計上などで、利益の嵩上げを行っていました。パソコン事業部門においては、部品の調達コストに上乗せした価格で、完成品製造業者に販売し、その差額を利益として計上していました。この「利益」は完成品を購入する段階で、完成品の購入価格の増額となって、結局相殺されるのですが、部品の完成品製造業者への販売時期と、その業者からの完成品の購入時期がずれることによって生じる見せかけの利益を、引き当ても取らずに前倒して計上していました。はては、必要以上の部品を完成品製造業者に買い取らせて、利益を生み出したりしていました。このような部品の押し込み販売による見せかけの利益は、当期の本来の利益でもなければ、翌期以降の利益でもなく、それゆえ利益の前倒しでもありません。

会社を毀損する見せかけの利益は、利益として会社に留まらない

会社を毀損する見せかけの利益は、当面は、会社の維持・成長に貢献する利益と同様な効果を見せます。しかし、それは一時的には通用しても長続きはしません。
東芝のインフラ事業部門では、工事原価の見積総額が増加して、初めから最終的には損失が出るのがわかっていながら、費用の増額を認識しなかったり、費用の引当金を後ろに倒して、当期利益だけをよく見せていたりしていましたたが、そのようなケースでは、いずれは損失が露呈してしまいます。
パソコン事業部門では、完成品に必要な部品の販売額と部品調達額の差に基づく、帳簿上の見せかけの利益は、近い将来、完成品の第三者への売上げが実現すれば、その段階で、本来の利益から、記帳済みの見せかけの利益と同額が圧縮されて、年度末では、その経緯も霧散し、正味の利益になる可能性もあります。しかし、ある期間内に完成品製造業者に販売した部品の全てが、完成品に使用され販売されるということはなく、どうしても期末には部品の販売による見せかけの利益が残ってしまいます。さらに、必要以上の部品の押し込み販売なども行なわれて、そこから生ずる見せかけの利益は、完成品の製造に利用されるまでは、帳簿上残りますが、その期間は、押し込み販売を受けた相手方の費用すなわち損失として留まるのです。会社の維持・成長に貢献する利益のところで述べた、「需要者と供給者の双方が『経済的に』満足した』結果は生じていないのです。今回のケースでは押し込み販売を引き受けた相手方は、子会社という位置付けですから、キチンと連結決算されていれば、相殺されるようなものですが、そうはなっておらず、さらにその子会社が海外法人でもあり、まさに国際的な複雑な取引形態の中に組み込まれていたのです。

会社を毀損する見せかけの利益の創出に関わった人達の心境は如何に

上記のような対応をしていた事業部門では、最終的にどのようにケリをつけようとしていたのかわからないのですが、上司の指示に逆らえない風土と言われる中、心苦しい毎日を送っていた人も多くいたでしょう。
不必要な部品の押し込みに基づく見せかけの利益については、いつかは部品が使われるだろう、最後はなんとかなるだろうという期待、また、完成品に使用された部品に関わる見せかけの利益については、完成品が販売されれば、期間対応の原則違反という点は残るものの、いずれ完成品が第三者に販売されて、経緯も霧散するだろう、そんな淡い期待を持っていたのかも知れません。しかし、もともと高い経済成長が見込めない昨今では、いずれの期待も本当に淡いものとなったのでした。

会社を毀損する見せかけの利益の影響

見せかけの利益を計上することにより、会社を毀損する損失はどのようなものがあるのでしょう。
まず、不適切な会計処理と認定されれば、通常の経済活動をしていれば支払わなくともよい課徴金を科せられます。
また、国内外からの株価下落による集団訴訟が発生すれば、窓口的・法律的には、法務部が対応するのでしょうが、その対応に際して具体的には、事業部門への資料提出要求など、本来であれば事業活動に注入し得る従業員の時間とエネルギーを使わざるを得なくなり、見えざる負の影響を与えるのは必至なのです。仮に最終的に、訴訟で見せかけの利益に関わった者の私的財産から会社への賠償が実現されたとしても、訴訟対応などで費消された会社の人的・物的損失は戻ることはありません。
仮に今回の事例のように、トップから強烈な指示なりプレッシャーを受けて、意に染まぬ仕事をやってしまった部長級の人などの実務者が、社内的に懲戒処分などを受ければ、その人達のモチベーションは下かるでしょう。これも会社の将来の事業活力を毀損することになります。
更に、役員や従業員の報酬について成果主義を採用している場合を考えてみますと、会社を毀損する見せかけの利益が、通常の利益に見えていた期間に、見せかけの利益を根拠に業績の評価が行われ、報酬や賞与などが支払われていれば、それは受領した人達の手元に残ります。これも本来であれば会社から流失すべきものではないでしょう。これらの毀損は、第三者委員会の報告書の対象期間である過去五年間に限定されることではないのですが、見せかけの利益に基づいて支払われた報酬が返還されることはなさそうです。この部分も会社を毀損しているのですが。

貨物利用運送業においては、見せかけの利益の可能性を排除しよう

貨物利用運送業務とは、発送人の貨物運搬義務を果たさせ、荷受人が貨物を入手するベストな方法を提供することにあるのですから、今回の問題のような、工事進行基準による会計処理も発生しないでしょうし、部品の有償社給による売上げ計上・利益の前倒しの問題もないでしょう。しかし、貨物利用運送業に携わる皆さんは、社員や従業員に対しては「信ぜよ、されどチェックは怠るな」の心構えで日々の経営を遂行して頂き、仮に、経理的にボトムラインが悪化するような処理でも、長期的な視点から「会社の維持・成長に貢献する利益」の追求を目指して頂きたいと思います。学生の理屈だ、現実はもっと厳しいという声も聞こえてきそうですが、一つだけ皆さんの頭の片隅に残して欲しいことがあります。今回の事件では刑事訴追はないだろうという報道と、あるだろうという報道が、相半ばしているように思えます。1500億円以上の利益の嵩上げをしていたけれども、国策と言われている原子力事業を担っている会社の役員は、刑事訴追されないかも知れませんが、その30分の1以下の50億円の粉飾で刑務所に入った人もいると事実です。

貨物利用事業者が利益率の目標を設定する場合、投資家の視点からの利益率に引きずられないように注意しよう

日本通運の利益率が、ヤマトホールディングのそれに及ばない、と日経新聞電子版にてふれられていました。投資家の目から見れば、会社全体の利益率や配当性向が主な関心事となるでしょう。そして企業トップは、投資家の視点を重視する必要があるでしょう。しかし、貨物利用運送業務に携わる皆さんが、事業の計画策定の為に、自社の利益率の評価をした上で、ターゲットとすべき会社を選定する場合、その会社の具体的な事業内容を精査する必要があります。同じ事業内容の利益率になっているかということを検討する必要があります。アップルーツーアップルで行う必要があるのです。他社と競業されている実運送事業の皆さんには、経験的に認識されていて言わずもがなではあるでしょうが。

前回に登場してもらっているヤマトホールディングのアニュアルレポートを一覧してみますと、小口貨物輸送サービスであるデリバリー事業は、同社の全売り上げの四分の三以上を占めています。また、海外への展開があまりはっきりしません。一方、日本通運に関しては、セグメント別の実績値を見てみますと、ヤマトホールディングでいうところのデリバリー事業と簡単に比較し得るようにはなっていません。もし日本通運にても、デリバリー事業の利益率が一目瞭然であるならば、それとヤマトホールディングのものを比較して、その業務効率を論じるのは意味があると思います。しかし、日本通運では、自社のエレベーターの中にも掲げていたポスターにあるように、美術品の運送など、非常に特殊な運搬も、事業の一環としてやっています。宅配便のように頻繁に、美術品の運搬が発生するかは疑問ですし、代替品の存在しない美術品の運搬には、そのノウハウの蓄積も必要でその為の人員確保も継続的に必要でしょう。しかし、美術品の運送のような他社には真似ができない事業も、その為に全体の利益率が下がったとしてもやっていくというのが事業方針であれば、そのことも含めて利益率を評価すべきなのです。美術品の運送に限らず、日本通運では、プラント工事などの重量品建設関連業務も行っています。海外にも大きく事業展開をしています。それらを事業の一環としてやっていく限り、結果的には、宅配便のような利益率を出せないかも知れません。事業内容のミックスによって、全社の利益率も異なってくるということです。こうして見てきますと、日本通運がヤマトホールディングと同じレベルの利益率を追い求めることが、はたして正しいのかどうか判然としません。

少なくとも、利用運送事業や実運送事業など、実業に携わる人が目標とすべき利益率は、投資家が関心をよせる利益率とは当然異なってきます。利益率の評価をしたり、目標を設定する場合、投資家の視点からの利益率に引きずられてはなりません。間違った目標を設定し、それに向かって人的・物的資源を投入することだけは避けなければならないでしょう。

しがらみとグローバリゼーション

日本通運の成長力復活に寄与した「しがらみを断つ」ことと、昨今のグローバリゼーションとについて、少し考えてみましょう。

6月26日の日経新聞電子版の記事では、日本通運よりも利益率の高い企業としてヤマトホールディングがあげられていました。ヤマトホールディングの16年3月決算予想での売上高営業利益率は、「しがらみを断」った日本通運よりも高い5%前後を見込んでいるとのことでした。この両社を、「しがらみ」という観点から比較してみましょう。

<h2>日本通運について</h2>

二つの会社のホームページで役員の経歴を見てみます。まず日本通運ですが、現在の会長、社長、副社長三人の計五人は、すべて日本通運に入社して現在のポジションについています。同社の幹部になった人を数年間にわたって調べたわけではないのですが、ここ数年は日本通運以外の会社から日本通運に移って幹部になった人がいないとしておきます。その前提でお話しますと、日本通運に入社し、若い頃から物流業界に長い間身を浸していると、仕事の上で、それなりにいろいろな関係ができるでしょう、個人的な関係も出来てくるでしょう。いわゆるしがらみも、本人の意図如何に拘らず、醸成されていたのではないでしょうか?更に、日本通運は1937年の「日本通運株式会社法」に基づく国策会社として発足しているというのも関係があるかも知れません。

<h3>ヤマトホールディングの社長について</h3>

次にヤマトホールディングについてです。少し古いのですが、2013年6月3日のDOL特別レポートに、2011年にヤマトホールディングの代表取締役社長に就任した木川氏の「常時革新の秘密を聞く」という趣旨でのインタビュー記事があります。それによると、木川社長(当時)は、2005年にみずほコーポレート銀行(当時)の常務取締役から、ヤマトホールディングの常務取締役として移籍し、非常に規制の強い金融業から、基本的に規制の束縛から解放された運輸業に移って自由な競争ができると感じていたようです。「自分がやりたいと考える戦略を具体的に前に進めることができるということは、銀行から来た人間から言えば開放感があります」と述べています。 金融業界から転職した木川氏は、物流業界でのしがらみには無縁であったろうし、仮にあったとしても、金融界からの転職ということを見ると、どちらかというと、金融業界での優位な立場からのしがらみであったように想像できます。あくまでも仮にあったとしてもです。インタビューの中では、創業者であり、路線事業という新しい業態に日本で始めてチャレンジしたり、宅急便事業を始めたりした、創業者とそれに続く先輩社長の行動原理をヤマトグループの変化し続ける原動力として賞賛していますが、2008年のリーマンショックの年に、初めて宅急便の取り扱い個数が前年割れをした危機を乗り越えたのは、社長就任前からの同氏の活躍に負うところも多々あったと思われます。社長就任の二年間と就任中の四年間は、2014年3月期の4.6%を除き、全ての期間で5%以上の営業利益率を維持しています。「自分がやりたいと考える戦略を具体的に前に進める」ためには、しがらみを持たない人の方が、やりやすいポジションにいる、と言えるでしょう。尚、2015年4月、社長はヤマトの生え抜きの人が社長になり、木川氏は会長になっています。

<h4>グローバリゼーションの環境下での貨物利用運送業務の拡大の可能性</h4>

日本通運のしがらみ断ちとは、むしろ物流業界に押し寄せてきたグローバリゼーションの波への対抗上から、やむを得ぬものであったように思われます。しがらみは、狭い領域内で通用しても、広い範囲では経済合理性が優先し、いわゆるしがらみなしのビジネスライクな付き合いかたをしなければ、競争原理から振り落とされる危機感があったのではないでしょうか? そこで大手物流会社とはしがらみを持たない、貨物利用運送業務従事者にとっては、日本通運のような大手物流会社の組織変更により、利用運送業務の拡大を期待することは、前回にも述べましたように困難でしょうが、グローバリゼーションという環境下では、しがらみなしのビジネスライクな関係で、業務を遂行していけるという事ですから、ある意味では、ビジネスチャンスが広がると言えるかも知れません。それは、これまでは狭い領域内(例えばしがらみ)を通してしか得られなかったビジネスに必須の情報の多くが、昨今ではインターネットを通じて、努力と時間を惜しまなければ入手できるようになっています。その情報の範囲も広がってきて、ビジネスチャンスを捕まえられる可能性が高まってきているのではないでしょうか? 上げたり下げたりの話しになってしまいましたが、小さくても、開いたしがらみの隙間に手を差し込み、関連情報取得によりそれを広げ、更に知恵をまぶして、しがらみに大きな穴を開けて、ビジネスチャンスを広げるていけないでしょうか。むしろ、しがらみが通用しないグローバリゼーションの環境下で、ロジスティクスのベストマッチを提供できる貨物利用運送業務を拡大するチャンスがあるとも言えそうです。

日本通運の、陸海空の垣根を越えた営業が、貨物利用運送業者に与える影響

前回7月3日の記事での内容を一部繰り返します。すなわち、日本通運が23年ぶりに最高益を更新し、成長力を取り戻したと評価されているのは、3PL業務を自社に遂行し、「陸海空の垣根をこえた営業」を実施できたことによるが、内容的には、しがらみを断ち切った組織変更を超えるものではなさそうである、と。今回はその組織変更が、貨物利用運送業や実運送業に携わっている皆さんにどのような影響があるのかについて、考えてみましょう。

利用運送業や実運送業に携わっておられる皆さんは、既に日々の業務遂行から、肌で感じられているとは思うのですが、これはどうしてもネガティブな影響が出てくると見ざるを得ません。

6月26日付けの日経新聞電子版によれば、「13年9月に営業・事務系社員を対象に8年ぶりの希望退職を募集」して、それにより、「764人が会社を去」ったということですが、これは、これまで陸海空それぞれの縦割りされていたと想像される営業部の果たしてきた機能を、横串をさした横断的な組織が担うことになり、従前であれば、大手物流会社の業務領域の外枠に存在し得た貨物利用運送業務が、大手運送会社の中に組織的に取り込まれたことを意味するのです。つまり、貨物利用運送業者のプレーイングフィールドに、これら大手物流会社自身が、乗り込んできたということです。

「トラック台数も減らして外注に切り替え」られることにより、大手物流会社が減らしたトラック台数分の実運送業務は、系列化されている事業者に流れなければ、第三者である実運送業者に回ってくる可能性もあるでしょうけれど、これとても、大手物流会社の実運送業務関係者の固定費などが、割高であるとの判断に基づくものでしょう。これは、日経新聞電子版にもありますように、日本通運について「国内物流が大半を占める単独売上高に対する労務人件費の比率は、前期で23.4% と13年3月期に比べ、1.6ポイントさがった。今期はさらに22%台にさがる」 というのですから、 間違いがなさそうです。それゆえ、第三者実運送業者に回ってくるとしても、その仕事の単価は、厳しいものになるでしょう。

大手物流会社の組織変更により、その活動領域が、従前の貨物利用運送業者の活動領域までカバーし始め、大手物流会社の傘下の外枠で活躍している貨物利用運送業者の出番が少なくなっていくのは確かなようです。

日本通運が成長力を取り戻したのは、他社へではなく、自社への3PL業務遂行の結果

6月26日の日経新聞電子版に「会社研究 取り戻した成長力(3)日本通運 国内物流、しがらみ断ち復活」という記事がアップされていました。この記事によりますと、かねて「お荷物」とされてきた国内物流の採算改善により、日本通運の「2015年3月期の連結経常利益が、595億円と23年ぶりに最高益を更新、今期も増益を見込」んでいるということです。その原因は、「陸海空の垣根をこえた営業」にあるとも。

「物流のデパートである」日本通運にとって、「陸海空の垣根をこえた営業」は、記事も触れているように、当然のことと思われます。しかし、「しがらみ」によって、「陸海空の事業部が地域ごとに支店を構え」、「顧客の窓口も分かれてい」て、「人事交流もほとんどなかった」ため、簡単ではなかったということです。「それを昨年5月に九州、 同10月に関西で統合。今年5月には関東も続いた」結果としての、最高益を更新しての「快走」ということのようです。

もともと日本通運は自社の提供するサービスとして3PL(サードパーティ・ロジスティックス)を掲げています。同社のホームページでの3PLの定義として、「物流業務のアウトソーシングを前提として物流改革を提案・実現し・・」とありますが、今回の同社の「快走」は、自社に対して(アウトソーシングを前提にしないで)物流改革を実現した、とも言うことが出来るように思えます。

しかし、最高益の更新として挙げられている記事の内容を見れば、①地域ごとの支店の統合、②顧客の窓口の統合、③人事交流の実現、といった、通常の会社の組織変更としか言えない要素が有るだけで、日本通運という一大手「物流」会社の、社内組織の「改革」により、「物流改革」がなされたに過ぎない、という厳しい見方も可能なのかも知れません。①、②、③の内容を「しがらみを断ちきっ」て実行したということは、それなりに物流業界においては大変といえば大変なのでしょう。しかし、組織変更を超越した「改革」が、少なくとも記事からは見えてこず、「物流改革」と素直に呼べるものなのかどうかは、なかなか判じがたいのです。

確かに、「しがらみ」の多い国内物流業界において、これを断ち切ることは、「改革的」なのかも知れないのですが、外資系物流会社によるグローバルなロジスティクスが、日本国内物流業界にも敷衍してきて、それが大手の物流会社にも影響を与え始め、その対抗上の処置に取ったに過ぎないとみることも可能でしょう。日経新聞の電子版では、日本通運の今期見込みの219億円の営業利益と、2.7%の連結営業利益率に触れたあとに、「ただし胸を張れる利益率ではない。物流大手では16年3月期予想で5%前後のヤマトホールディングス、近鉄エクスプレスに見劣りし、自己資本比率(ROE)でも後じんを拝する。欧米大手の背中はさらに遠い。」とあり、先手を打った結果としての「快走」ということではなさそうです。

纏めますと、日本通運が23年ぶりに最高益を更新し、成長力を取り戻したと評価されているのは、3PL業務を、他社ではなく、他ならぬ自社に適用し「陸海空の垣根をこえた営業」を実施できたことにあり、内容的には組織改革を超えるものではなさそうです。

11兆円超の消費者向け電子商取引市場規模(平成25年度)には、利用運送・実運送が発生しない「情報通信業」も含まれている

前回の6月19日の記事では、2013年度に11兆円を越えたとされる、消費者向け電子商取引の市場規模の中に、利用運送や実運送の業務の発生という観点からは、注意すべき業種としてサービス業を取り上げました。

今回は、前回と同じ観点から「情報通信業」を取り上げますが、前回記事の注1の尚書きでも述べましたように、平成27年5月29日付けで、『平成26年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書』がウェブページにアップされ、2014年度の国内消費者向け電子商取引の市場規模が12.8兆円と発表されておりますが、本記事でも前回記事と同様に、本ウェブページの5月22日以降の公開記事からの一貫性を保つため、2013年度の市場規模をベースに、以下述べていきたいと思います。

2013年度に関する報告書(以下単に「経産省報告書」と呼びます)では、この業種の中に、「通信、放送、情報サービス、インターネット付随サービス、映像・音声・文字情報製作業」が含まれております(経産省報告書57ページ)。この中では「消費者向け電子商取引(BtoC-EC)市場規模の業種別内訳」には、情報通信業全体で2兆6970億円の市場規模とされていますが、これは物販系の電子商取引をも含んだ数値です。ここでは、物品の利用運送や実運送が発生するとは思えないアイテムのみの市場を割り出すために、「経産省報告書」の「情報通信業」に関する市場動向でも触れられている(71ページ)総務省情報流通振興課により、平成25年8月9日付けで発行されております「モバイルコンテンツの産業構造実態に関する調査報告」の別添(以下単に「総務省調査結果別添」と呼びます。別添の日付は平成25年7月)をみてみます。

総務省調査結果別添では、調査の対象として取り上げている市場は、フィーチャーフォン市場とスマートフォン市場とに限定されてはいますが(パソコンやタブレットによるものは含まれていないという意味)、次のようなものが掲載されています(総務省調査結果別添3ページ、4ページ)。すなわち:
着信メロディー、着うた、モバイルゲーム、装飾メール、電子書籍、リングバックトーン、占い、待ち受け、着せ替え、天気/ニュース、交通情報、生活情報、ソーシャルゲーム、動画専門、芸能エンターテイメント、メディア・情報、その他コンテンツ
であります。このように具体的にモバイルコンテンツのアイテムをみてみますと、いずれも利用運送や実運送が発生しそうにありません。

では、金額面から見たモバイルコンテンツの市場規模はどうなっているのでしょう。結論からいいますと、「・・平成24年のフィーチャーフォン市場は4793億円となり、前年比で26.7%減となった。スマートフォン等市場は3717億円の361.2%の増となった。・・」となっています。出典は下の注を参照してください。この合算額8510(4793+3717)億円は、経産省報告書の中の「2012年のモバイルコンテンツ市場規模は8,510億円(前年比116%)であった(※フィーチャーフォン、スマートフォン合計)」との記述の金額と一致しておりますので、パソコンやタブレットによるコンテンツ市場は除かれており、且つ、2012年度の数値ではありますが、2012年度のモバイルコンテンツ市場は8510億円となります。では2013年度の市場規模はどうなっているのでしょうか?2013年度の数値が公表されていないので、2013年度も同程度との仮定が成り立つでしょうか?

「モバイル」コンテンツ市場においては、成長するスマートフォン市場と、縮小するフィーチャーフォン市場が混在していますが、「デジタル」コンテンツ市場としては、モバイルコンテンツ市場に加わえ、パソコンやタブレットによって購入されるデジタルコンテンツもあります。ここまで、2013年度消費者向け電子商取引の市場の一部として含まれている「情報通信業」の中に、どの程度、利用運送や実運送が発生しないものが含まれているかを、割り出そうとしてきましたが、上記に述べてきましたように、2012年のデジタルコンテンツ市場だけで8510億円あり、これに加え、具体的な規模が記載されていない、パソコンやタブレットによる電子商取引もあるわけですから、「2013年度」においても、少なくとも8510億円程度は、利用運送や実運送が発生しない「デジタルコンテンツ市場規模」と推定することは許されるのではないでしょうか。

前回の記事と今回の記事をまとめますと、11兆円を超える、と報告されている2013年度の消費者向け電子商取引のうち、前回6月19日にお話したサービス業の市場規模1兆9920億円、今回の情報通信業のうち少なくとも8510億円(推定市場規模)とを合算した2兆8430億円、すなわち11兆1660億円の実に四分の一にあたる25.5%が、実は利用運送業にも実運送業にも関係のない市場であるということが言えるのではないでしょうか。

以上、「清水建設が・・大型設備運営に本格参入する」という日経新聞電子版の記事に端を発し、不動産事業者が本格参入する動機として、インターネット通販事業の拡大が取り上げられ、そのネット通販が含まれる「消費者向け電子商取引の市場規模」が2013年度において11兆円を超えていると報道されていることについて、その根拠となっている(と思われる)経済産業省の報告書を参照しながら、「利用運送や実運送に携わる皆さんにとっての」市場規模はどの程度なのかを、6回にわたってお話してきました。

経済誌はおおむね、経済の肯定的な側面を強調して、景気を牽引して行こうとする傾向があり、これ自体は、いいことなのですが、報道される数値については、そのような経済紙としての性向を認識する必要があるでしょう。もちろんネット通販の市場規模は今後も拡大していくと思われます。それはいろいろな関連事業の状況から間違いはなさそうなのですが、利用運送や実運送に携わっている皆さん、これから携わろうとする皆さん、現在携わっていて、更なる投資を考えられている皆さんには、「自分たちの事業にとっての」市場規模を、公表されている数値から割り出して、より確度の高い事業予測なり、事業計画の策定をしていただきたいと願い、この記事がその際の参考になればと念じております。

(注)「総務省調査結果別添」の2ページ、”モバイルコンテンツ及びモバイルコマースの市場規模の推移”のコメント部分

11兆円超の消費者向け電子商取引市場規模(平成25年度)には、利用運送や実運送が発生しないサービス業が含まれている。

前回の6月11日公開の記事を除き、これまで、大型物流設備とネット通販事業の関連性について注意すべき点のお話をして参りました。

今回は、国内で11兆円を越えたと言われる消費者向け電子商取引の市場規模について、その中に含まれてはいるものの、利用運送や実運送が発生しそうにない、又は発生してもごくまれであろうと思われる業種を取り上げてみましょう。そしてその業種の電子商取引市場の規模を金額面から見てみましょう。尚、以下はすべて消費者向け電子商取引に関するものであって、企業間電子商取引の市場は含まないものとします。

5月22日公開の記事で、「13年には消費者向け電子商取引の国内市場は11兆円を越えた」と報道されていることをご紹介しました(5月18日付け日経新聞電子版)。日経新聞電子版の記事は、経産省の報告書(注1)をその根拠としていると思われますが、そうだとすれば、その報告書(以下「経産省報告書」と称します)に記載されている11兆円を超える市場規模の対象業種として、小売業、サービス業、建設業、製造業、情報通信業、運輸業、金融業、その他、の八つが挙げられています(報告書57ページ)。この中で「建設業」については、経産省報告書60ページでの市場規模を示す欄がN.A.(Not Available)となっており、具体的な数値が示されておりませんので、実際にはこの建設業(注2)を除いた、七分類での合計が11兆円を越える市場規模ということになります。

この七つの業種のうち、利用運送や実運送の業務の発生という観点からは、注意すべき業種がいくつかあります。今回はまずサービス業について見てみましょう。

サービス業の中には、小分類として、宿泊・旅行業、飲食業、娯楽業が含まれています。宿泊・旅行業について、パソコン、タブレット、スマートフォン、フィーチャーフォンなどにより、インターネットを用いて、鉄道などの切符を予約するような電子取引が成立するケースを想定してみますと、これらの支払いにクレジットカードを使用すると、切符を自宅に送付してもらうような特別な手配をしない限り、ほとんど利用運送も実運送も発生しません。電子取引成立後は、実際に乗車する駅でチケットを発行してもらうことができるからです。

又、高速バスなどのチケットの場合も、インターネットを用いて予約した後、自分のプリンターでサイト運用者から送られてくる、予約確認のメールをプリントしてその印刷物を乗車時に提示するだけで済んでしまいます。プリンターが無くとも、コンビニでの支払いを選択して、最寄りのコンビニまで出向き、支払いをすると、コンビニでチケットが発行されその場で受け取ることができるようになっています。

日本の消費者に関して、電子商取引を利用する理由として、一位の「実店舗で買うよりも価格が安いから(64.1%)」に次いで、「店舗までの移動時間、営業時間を気にせず買い物ができるから(63.5%)」となっている(経産省報告書103ページ)ことからみても、ほとんど利用運送や実運送が発生していないのではないでしょうか。

次に、映画館などの娯楽業などについてもほとんど、利用運送や実運送が発生するようには思えません。余談になりますが、通信を用いた消費者との取引の先進国であったアメリカでは、30年以上前、1983年当時、例えばミュージカル『コーラス・ライン』のチケットを取るのに、電話で予約し(まだインターネットは個人レベルではありませんでした)、クレジット番号を伝えて、そのままシューベルト劇場(随分前に閉館しましたが)に行き、ピクチャーID(写真付身分証明書)を見せると、その場でチケットが手渡され、劇場に入れました。この場合はパソコンなどでの電子商取引ではなく、電話での通信販売となるのでしょうが、このような形態の取引が、現在日本でもインターネットの普及で成立が可能になっているのです。

又、この宿泊・旅行業及び飲食業に関しては、「宿泊・旅行業・飲食業が2012年に対して2013年は122.1%成長している」こと、及び、宿泊・旅行業、飲食業、娯楽業のすべてを含んだサービス業に関して、「サービス系の電子商取引での購入に関する利用品目では、「各種チケット」が61.7%、次に「旅行サービス」の58.1%となっている」ことも付記しておきます。

このように、宿泊・旅行業、娯楽業などのサービス業についてはほとんどの場合、利用運送や実運送の発生が期待できません。上記の宿泊・旅行業と娯楽業とを合わせた、サービス業の市場規模として約2兆円が、国内市場11兆円の中に含まれております。これは全体の17.8%にもなります。市場規模の数値の詳細は下の(注3)欄に記載しておきます。

念の為、書き加えておきますと、電子取引の市場規模とは、電子取引「金額」を意味します。又、経産省の報告書での「EC」すなわちElectric Commerceである電子取引の定義では、「決済がコンピュータネットワークシステム上で行われることを要件とはしておらず、決済手段は問わない」となっています(32ページ)。

いくら消費者向け電子商取引の市場規模が11兆円をこえたからと言っても、このサービス業の様に、ほとんど利用運送なり、実運送が発生しそうにないものも多く含まれている事に、利用運送業や実運送業に携わる皆さん、又は消費者向け電子商取引の市場の拡大を念頭に、今後関わっていこうとされる皆さんに注意を促していただければと思います。

(注1)『平成25年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書』
経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 (発表日:平成26年8月26日)
尚、経済産業省から、平成27年5月29日付けで、平成26年度の国内Btoc-EC市場、すなわち消費者向け電子商取引の市場規模を12.8兆円とする調査報告書がアップされましたが、本ホームページの5月22日公開記事からの一貫性を保つため、本記事は、平成25年度の市場規模をベースにしております。
(注2)経産省報告書60ページの「市場規模の業種別内訳」を示す表では「建築業」と表現されていますが、同57ページの「市場規模推計の対象業種」のところに示されている「建設業」と同じものを示すと解釈していいでしょう。
(注3)宿泊・旅行業と飲食業を合わせた市場規模として1兆8260億円で、全体の市場規模である11兆1660億円の16.4%を占めます。又、娯楽業の市場規模は1660億円で全体の1.5%を占めています。これら宿泊・旅行業と娯楽業を合わせたサービス業の市場規模として1兆9920億円となり、消費者向け電子商取引市場全体の11兆1660億円の17.8%になります(以上すべて2013年度のもの)。

運送委託の手数料について

利用運送をキーワードにしてインターネットで検索してみると、まず出てくるのはピンハネ云々の記事だ。それもかなり多い。内容は仲立ちマージンの話が中心。四割もの手数料を取られていることがわかったりするという。
大手からの実運送を請け負う中小の企業としては、確かに大手のブランド力が引き出す物量は、中小実運送業者が太刀打ち出来るものではなさそうだが、だからと言って法外な仲立ちマージンに多くの実運送業者が泣かされているのは、いかがなものかとも思う。
あまり政治的な話になるのも若干躊躇するのであるが、数からすれば、大手利用運送業者よりも実運送業者の方が多いはず。東京都トラック協会や各都道府県のトラック協会等が全国レベルで協調し、利用運送業における、中間手数料の上限を法律で規制するような動きもできるのではなかろうか。そんな行動を取っているとわかれば、実運送業の仕事が回ってこないという心配を抱えることになるかもしれないが、個々の実運送事業者が活動するのではなく、協会等の別の組織の活動を下支えしていけばいいだろう。
利用運送そのものの歴史がそれほど古くはなく、業態が固まっていく段階で、いろいろ不都合も出てくるであろうが、利用運送業自体の業務の効率的改善とともに、それを支える実運送業者の継続的事業運営が併存しうる、運送業システムを積極的に構築していく必要があろう。

利用運送事業こそが物流業の全体最適を実現する

前回の「日本通運(日通)における社内体制の再編」のニュースは、大手運送事業者の社内リストラクチャリングとして報道されましたが、流通産業に携わる関係者にとっては、物流ニーズの変化に対する自社リソースの再配分と受け止めた方が多いと思われますし、それが正解です。しかしながら、このニュースは、ありとあらゆる分野の運送に携わる大手運送業者だけの問題ではないのは言うまでもありません。

最大手以外のプレーヤは利用運送事業を行わなくてはいけない

変化する事業環境に対応することは、経営幹部層の意思決定マターですが、市場環境の変化に対して最適解を求めて事業行動を変化させて対応することは、全社的な行動マターです。したがって、業界のトップ企業だけに関わることではなく、その影響は業界全体に波及し、各プレーヤの業界ポジションに多大な影響を及ぼします。特に、物流のような上流から下流まで一機通関していることが競争優位性に直結する業界では、その影響のスピードと規模は、IT社会の現代では非常に大きなものがあると言えるでしょう。だからこそ、最大手以外のプレーヤは利用運送事業を行わなくてはいけないのです。

利用運送事業は物流プロセスや流通チェーンの全体最適を求める

貨物利用運送事業は、従来は運送業界のなかにあって、営業に強みを持つ事業者が、実運送授業に対する営業と配達を分業する手段と、業界内で捉えられていました。あえて悪い言葉でいえば「ピンハネ」の手段と捉える人がいたことは一部の事実でしょう。しかしながら、21世紀における物流の最上流から末端の消費者までがスマートフォン(スマホ)に代表される情報端末を持つ時代では、物流プロセスと運送状況はデジタルデータによってコンピュータ管理され、いたずらに非効率的なシステムや不合理なプロセスは、一瞬にして付加価値と競争優位性を失います。ですから、もはや「利用運送を登録すれば、自社は動かなくてもピンハネできる」などというビジネスモデルは成り立たないのです。そうではなく、これからの利用運送事業は、物流プロセスや流通チェーンの全体最適を求めてポジショニングをしていくことが経営戦略マターになったといえるでしょう。

利用運送事業を活用した引越しサービス

これまで、利用運送事業の全体像を概要として触れたり、第一種貨物利用運送事業登録申請や、第二種貨物利用運送事業許可を取得するための法律手続きについてのQ&A、あるいは普通トラックや軽貨物自動車を活用したり、鉄道貨物や航空貨物、外航貨物との組み合わせといったビジネスモデルについて解説してきました。しかし、今日はこれまで触れてこなかった、新しいビジネスモデルをご紹介します。

引越しサービスを利用運送で!

それは、利用運送事業を活用した引越しサービスです。一般に貨物運送事業は、普通トラックを使用する一般貨物自動車運送事業であったとしても、軽貨物自動車を使用する貨物軽自動車運送事業であったとしても、圧倒的に多くの事業者は運送約款に「標準貨物自動車運送約款」を採用することが多く、引越し用の標準引越運送約款を採用する会社はほとんどないといっていいでしょう。なぜならば、標準引越運送約款では、業務が引越しに限定されてしまうからで、標準約款ならば「なんでも運べる」からです。じつは、ここにみんなが陥る死角があるのです。

標準約款を採用して「引越し」ビジネスを忘れてしまう

業界内のほとんどの会社が標準貨物自動車運送約款を採用するのですが、ほとんど全社がこれを採用して引越しビジネスに参入するため、顧客である一般消費者からみると、誰が運んでも同じに見えてしまって、価格競争に陥ってしまっているのです。また、この標準約款を採用することで「引越し」をビジネスにすることを忘れてしまうのです!なんてことでしょうか。でも、これが現実です。

利用運送にも標準約款と引越約款がある

もうひとつ忘れていることがあります。それは、利用運送にも標準約款と引越約款があるということです。それぞれ「標準貨物自動車利用運送約款(平成2年11月26日号外運輸省告示第579号)」と、「標準貨物自動車利用運送(引越)約款(平成2年11月26日号外運輸省告示第580号)」といいます。要するに何が言いたいかといえば、つまり利用運送業で引越ビジネスをすることができる、ということです。この死角というか盲点を皆さんご存知でしょうか?

引越し一括見積りサイトは運送業者ではありません

例えば、いまあなたが引越しをすることになったとして、どこの引越業者に頼もうかと考えたときに、インターネットの一括見積りサイトの見積サービスが便利に利用したいですよね?しかし、このサイトは運送業者ではありませんから、情報を引っ越し業者に渡しているだけの情報業です。しかしながら、タクシー配車アプリのように「運送業の許認可が必要」だという法解釈が導き出された場合には、このようなネットサービスをIT企業が営むことができなくなるのです。規制産業の許認可に関する知識をしっかりと持っていることが、競争が厳しい業界で優位性を確立することを理解すべきケースだと思います。

利用運送は現代の日本人にとって身近な存在

利用運送は耳慣れない言葉ですが、現代に生活するの日本人にとって通販などで身近な存在です。利用運送には第一種利用運送と第二種利用運送のビジネスモデルがありますが、21世紀の現在ではそのビジネスモデルも複雑となって、新しいビジネスモデルが誕生しているといっていいでしょう。とある有名な上場企業も、外航運送ができないのはいけないというので、トラックの第一種利用運送事業でトレーニングをしてノウハウを積み、その後エキスパートになったという事例もあります。

これからどんな利用運送の登録や許可取得をすればいいか?

通販に関して言えば、オンラインでビジネスするため、別に倉庫を確保する必要はありません。もちろん必要ならば運送業として営業所や倉庫を確保することもできます。あくまで、ホームページやパンフレットの利用運送・運送会社というのは、会社が作った広報活動の一環ですから、良いことだけしか書かれていないので、配送の良し悪しまでを判断するのはなかなか困難なのです。ビジネスをしていれば運送業も10年は儲かると考え判断するのが一般的ですが、これからどんな方法で利用運送に対しての登録や許可取得をすればいいと思いますか?運送荷物には、鉄道や外航をはじめ、航空貨物、ビジネス運送、定期利用運送、特殊運送、3PL対応まで、幅広く事業計画の可能性があります。グローバリゼーションの時代で、個人輸入にも使用されますので、利用運送は有用なビジネスであるといるのです。

貨物利用運送事業者の遵守すべきルール(事項)

貨物利用運送事業法施行規則における貨物利用運送事業者が遵守すべき事項とは、規則の第二章に定められています。具体的な内容としては、一般常識に近いようなものもありますが、そこはやはり他人の荷物を希望の配送先に届けなくてはいけない運送業でありますので、総論でありながらも明文として定められています。

貨物利用運送事業の適正な運営の確保

規則では、貨物利用運送事業を経営する者を貨物利用運送事業者と呼び、確実かつ適切な事業遂行を求めています。具体的には、実際に荷物を配送する外注先の実運送事業者が行うビジネスと、利用運送事業に関連して貨物流通(物流)のスムーズな運営を妨げないような形で事業運営をしなくてはいけないと、ビジネスに当たってはそのビジネスモデルを配慮して考えるように規定が定められています。

また、発注する下請け業者である実運送会社だけでなく、顧客であるお客様の荷主、あるいは物流もしくは社会全体といったステークホルダーに対して、公平であることは前提として、かつ懇切に事業場の取扱いをするように定められています。

非常に重大な危険品等の運送取扱いについて

運送業で運ぶ荷物は、通常は運送中の事故による破損を防止するため梱包されていますから中が見えず、どんな荷物なのかは荷主さんに告知に頼る部分があります。この点は、大手宅配会社のヤマト運輸がヤマトメール便の取扱いに関して、郵便法が定める信書の定義があいまいであることから、顧客である一般消費者が信書かどうかの認識がないままにメール便で信書を発送してしまい違法性を問われてしまうとか、なかには警察で取調べを受けてしまう事例があるとのことで、平成27年3月31日をもってメール便のサービスを廃止する、と発表しました。

これと同じように、利用運送を含めた運送業でも、梱包された荷物の中身が危険物であった場合に、例えば運送するトラックが事故に巻き込まれ、事故の衝撃によって発火や炎上、あるいは最悪のケースでは爆発してしまうようなことがあってはいけないことから、危険物の運送取扱いについても規定を定めており、具体的には、

・火薬類
・その他の危険品
・不潔な物品等

これらの荷物で、貨物に損害を及ぼす可能性がある貨物を運送するよう依頼を受けて受託し運送する荷物として取扱う場合には、通常の運送過程においても、また万が一の事故発生時であっても、他の荷物が損害するようなことのないように注意をする義務を負わせています。これは、翻して考えると、事故等の発生時には、当該荷物だけに留まらず、損害の及んだ他の荷物に対しても責任を負うこととするほか、許可や登録を受けた利用運送事業者としての登録要件あるいは許可要件に照らして、その事業存続の評価に関わることになりますので、十二分な注意が必要です。

利用運送で期待できるメリットはアセットだけではありません!

利用運送事業はノンアセット(運送手段を保有せず)で運送事業が始められる、非常に魅力的なビジネスモデルですが、運送業を始めるに当たって期待できるメリットは貸借対照表(B/S)上の資産あるいは負債のオフバランスだけではなく、収益に関わる損益計算書(P/L)上の一般管理費のコストダウンにも関係します。

利用運送では支払保険料がかからない!

一般的なトラック運送業である一般貨物自動車運送事業では、運送手段であるトラックと運転手、また営業所や車庫を確保する必要がありますが、利用運送ではこれを全て外注するため、これらの管理コストがかかりません。そういう意味では運送業ビジネスとして必要不可欠な交通事故に対する自動車保険料も支払わなくてよいということです。

事業計画で保険料の1年分を計上、運転資金のキャッシュを用意

自動車保険の種類には、大きく分けて二つあり、ひとつは強制加入で強制保険とも呼ばれる自賠責保険、もうひとつは任意保険です。運送業を始めるにあたっては、全ての車両に対して任意保険への加入が義務付けられており、自賠責保険加入を確認する根拠書類として保険加入を前提とする有効期間中の自動車検査証(車検証)の写しと、任意保険加入を確認する根拠書類として任意保険契約書の写し(フリート契約でも同様です)が必要となります。実際に契約済みの契約書あるいは、加入を前提とした見積書の提出によって許可となりますので、これらの根拠書類に記載された保険料の1年分を事業計画に盛り込み、運転資金としてキャッシュを用意しなければなりません。これは、一般貨物に使用する車両によっては、第一種貨物利用運送事業の登録要件である財産的基礎の300万円を越える場合すらあります。このように考えると、ノンアセットで運送業を営める利用運送業のメリットの大きさを実感していただけるでしょう。

利用運送事業にはどんな種類があるのですか?

利用運送とは、ノンオウンでの運送業というビジネスモデルを指す場合と、運送業のある業態に際して設定される許認可制度あるいは規制産業の体系を指す場合との二種類とがありますが、実運送の手段が社会の高度化に伴って複雑化していくことが予想されることから、今後も発展が予想されるビジネスです。

いわゆるノンアセットと言われる運送手段を保有せず、運送業を営むことが出来るのが利用運送の最大の特徴ですから、従って利用運送事業を営むにあたって国土交通省の登録や許可が必要な規制産業と狭く捉えるよりは、ROEの高い資本効率の高い運送事業の形態として積極的に広く捉えることが事業運営上求められるポイントです。けだし、運送事業はすべて行政庁の許認可が必要な規制産業だからです。

利用運送に係る法律や規則

それでは、利用運送にまつわる法律や規則等を、いい機会ですのでご紹介しておきましょう。
1.貨物利用運送事業法(平成1年12月19日号外法律第82号)
2.貨物運送取扱事業法の施行期日を定める政令(平成2年7月10日号外政令第209号)
3.貨物利用運送事業法施行規則(平成2年7月30日号外運輸省令第20号)
4.貨物運送取扱事業法の施行に伴う経過措置等に関する政令(平成2年7月10日号外政令第210号)
5.許可、認可等の整理及び合理化に関する法律による貨物運送取扱事業法の一部改正に伴う経過
  措置に関する政令(平成7年1月20日政令第6号)
6.鉄道事業法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める省令(平成15年2月14日号外
  国土交通省令第12号)
7.標準貨物自動車利用運送約款(平成2年11月26日号外運輸省告示第579号)
8.標準貨物自動車利用運送(引越)約款(平成2年11月26日号外運輸省告示第580号)
9.標準外航利用運送約款(平成2年11月29日号外運輸省告示第586号)
10.標準鉄道利用運送約款(平成2年11月29日号外運輸省告示第588号)
11.標準国際利用航空運送約款(平成2年12月1日号外運輸省告示第594号)
12.標準内航利用運送約款(平成18年2月28日号外国土交通省告示第316号)
13.貨物利用運送事業報告規則(平成2年11月29日号外運輸省令第32号)
14.貨物流通事業者の氏名の変更の届出等の一本化した提出の手続を定める省令(平成7年6月23日
  運輸省令第37号)

このように、利用運送とひと言でいっても、14もの法令等が関係しているビジネスなのです。許可や登録さえ取ればあとは簡単という風に安易に理解するのではなく、これらの法令を活用する道に高い収益性があるとお考え頂くのが正しい経営に繋がります。

利用運送の行政指導

利用運送事業についての行政指導というのは、事業の種別および利用運送機関の種類別(いわゆる輸送モードのことをいいます)ごとに、違反が認められた利用運送の区域、または区間、もしくは業務の範囲に直接関係する営業所を対象として行います。

この場合、複数の輸送モードまたは営業所がその違反に関係している場合には、当該事案に関係する輸送モードおよび営業所の全部を、行政指導の対象とするものとします。またもし行政指導の対象が数多い場合とか、違反の内容の軽重等といった違反の実態をみた上での態様によっては、まとめて主要営業所を一括して行政指導の対象と
することができるものとされていますから、事実上事業遂行に大きな影響がでるといえます。十分な事業遂行体制の確保と注意が必要です。
また、行政指導を行うときは、もし今後再び違反が行われることがあった場合には、加重ペナルティとして更に重い処分が下されることがあると、処分対象者対して教示します。さらに文書での警告を行う場合には、原則として1か月以内に違法行為の防止または違法状態を是正するために執った改善措置を明らかにする事業改善報告書を提出させて、期限内に同報告書の提出がない場合とか、その後事業の改善が認められない場合には、文書警告を再違反したものとして取扱いますので、しっかりとした対応ができなければ重大な処分に繋がります。
例えば、口頭注意に該当する違反が同時に3つ以上も確認されるような場合は、これらを合わせて行政指導の対象として、文書勧告するものとされています。さらに、文書勧告に該当する違反事項が同時に3つ以上確認されるような場合においては、これらを合わせて文書警告とすると定められています。

利用運送の臨時報告って何ですか?

利用運送事業は、一般に規制産業と呼ばれます。これは事業に当たって行政庁の許認可を取得しなければ事業を営めない(=違法となってしまう)もので、事業開始時に事業計画を策定して、第一種貨物利用運送ならば登録を、第二種貨物利用運送ならば許可を取得しなければいけないこととされています。

また、いったん許認可を取得すればよいというものではなく、事業者の事業年度毎および年度毎に、事業報告書および事業実績報告書を提出することになっていますが、それら以外にも、事故等が発生した場合には所管庁は必要な報告を求めることができることになっています。それは臨時報告と呼ばれるものです。

臨時報告については、貨物利用運送事業報告規則の第4条に規定があり、貨物利用運送事業者または貨物利用運送事業に関する団体は、事業報告書および事業実績報告書と運賃料金設定(変更)届出書の他に、国土交通大臣または地方運輸局長から事業に関する報告を求められたときは、報告書を作成して提出しなければならないことになっています。また、国土交通大臣または地方運輸局長は、この報告を求めるときには、報告書の様式や報告書の提出期限、その他必要になる事項を明示するものとされています。

利用運送事業の全体像

利用運送事業は、自社で運送手段を保有せずに運送業を営む場合の登録・許可制度です。

貨物利用運送事業法(平成元年法律第82号)では、運送事業者の行う運送を利用して貨物の運送を行う事業という表現がなされています。利用運送事業者は、荷主との間で運送契約(この契約は請負契約)を結び、さらに利用運送事業者は実配送を担当する運送事業者との間で運送委託契約(この契約も名称は委託ですが、法律上は請負です)を結ぶことにより実現します。

このため、他の事業者(実運送事業者)が、必要な運送事業の経営許可を取得(トラック運送事業なら一般自動車貨物自動車運送事業経営許可)して保有する、自動車、鉄道、船舶(外航・内航)、航空(国内・国際)の運送事業を下請けとして活用して荷主の貨物を運送する「利用運送事業」あり、実運送の利用とともに、荷主先までの集貨・配達を併せて行うかどうかによって、登録制の第一種貨物利用運送事業と許可制の第二種貨物利用運送事業とに分かれます。

第一種貨物利用運送事業登録および第二種貨物利用運送事業ともに、行政庁(国土交通大臣)に対する許認可取得の申請手続きを経て営める事業ですので、必要な手続きを経ずに事業を行った場合には、いわゆるモグリとして摘発の対象となりますので、事前にしっかりとした準備をして必要な手続きを経てから事業を開始するようにしてください。