専門分野を持つ強みと危険物取扱者

競合他社と差別化するために

運送業に限らず事業を行う場合、自分の専門分野に特化するということは事業経営上、大きな強みになります。運送業の場合、ピアノのような大きな荷物を運べる能力があることやコピー機のような精密機械を扱える、または危険物の輸送を引き受けることが出来るといったことで他社との差別化を図ることが可能となり、大きなアドバンテージになります。

例えば、ピアノのようなお客様にとって思い入れのある商品を運ぶ際には慎重な作業が必要です。また、ピアノ運送の場合クレーンを使った特殊作業が必要になることがあります。搬送には人手もそれなりに必要で、自社で確保できない時は派遣会社からスタッフを派遣してもらう方法もありました。しかし、近年派遣法が改正されいわゆるスポット派遣が原則禁止されていますので、自社で必要な人材を常に確保しておくことが重要かと思います。

危険物の「移送」と「輸送」

街中を走るトラックやタンクローリーとすれ違う際、「危」とか「毒」といったマークを目にすることはないでしょうか。それは危険物を運ぶためには消防法の基準をクリアしなければならないからです。危険物の輸送というとタンクローリーがまず頭に浮かびますが、タンクローリーで危険物を輸送することを「移送」といいます。一方、トラックなどの一般車両で危険物を運ぶことを「運搬」と定義します。危険物を「移送」する場合は危険物取扱者の資格者の同乗が必要です。また、トラックなどで「運搬」する場合はより危険性が高いため、指定数量未満であっても消防法の規制を受けます。まず「運搬容器の基準」があり、運搬容器の材質、構造、最大容積について基準があります。次に「積載方法の基準」では収納の基準、運搬容器への品名・数量等の表示の基準、危険物の性質に応じた措置方法や混載の禁止事項が定められています。さらに、「運搬方法の基準」では指定数量以上の危険物を運搬する場合標識を掲示し、消火設備を準備しなければならない車両に対する基準、運搬中の事故発生時の応急措置や消防への通報義務などが定められています。

危険物取扱者には丙種から甲種まである

危険物の「移送」に同乗し、指定数量を超えた危険物の「運搬」に立会う危険物取扱者は消防法に基づく国家資格者で、免許には丙種、乙種、甲種があります。甲種を持っている人は全ての危険物の取り扱いと立会が出来、受験制限もあります。乙種は免状を持っている類(第1類から第6類)の危険物の取り扱いと立会が出来ます。この乙種のうち第4類(乙四)ではガソリン、灯油、軽油、エタノールなどの引火性液体を取扱いと立会をすることが出来るため、一番需要がある資格です。丙種では限られた危険物の取り扱いしか出来ず、立会は出来ません。乙種と丙種には受験制限はありません。運送業に携わる方でこの危険物取扱者の甲種または乙四の免状を取得している人は非常に重宝され、大型免許以上にトラックドライバーの花形資格として認知されているようです。

グリーン経営認証取得の方法と取得メリット

グリーン経営認証とは

7月5日の記事でご紹介した「グリーン経営認証」について今回は掘り下げて説明したいと思います。グリーン経営認証とは公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団(エコモ財団)が認証機関となり、グリーン経営推進マニュアルに基づいて一定レベル以上の取組を行っている事業者に対して、審査の上、認証する制度です。トラック事業から始まり、現在ではバス、タクシーや旅客船、内航海運、港湾運送、倉庫業にまで認証の幅は広がっています。

グリーン経営認証の取得とグリーン経営

グリーン経営認証を取得するのはいつでも可能ですが、取得のためには厳しい審査を通らなければなりません。そして、申請する際に環境対策が既に一定期間実施されていなければなりません。申請書を提出すれば、エコモ財団から審査員が派遣され、半日程度の実地審査が行われます。トラック部門の審査項目は次の通りでこの6項目全てが適正であると評価されれば、グリーン経営認証を取得することが出来ます。①環境保全のための仕組・体制の整備、②エコドライブの実施、③低公害車の導入、④自動車の点検・整備、⑤配車・廃棄物の排出抑制、適正処理及びリサイクルの推進、⑥管理部門(事務所)における環境保全。

またグリーン経営認証の認定登録期間は2年間です。また1年ごとに中間審査もあります。そこで継続した環境保全活動が行えるように業種別にマニュアルが用意されており、基本的にグリーン経営はPDCAサイクルに基づき行われます。まず、チェックリストに基づき自社の環境保全活動への取り組み状況を把握します。次に取組状況を評価します。これはチェック結果に基づき行われ、ここで改善策を検討します。そして、改善策を検討し、今後の目標を立てそれに向けた具体的な取組内容を盛り込んだ行動計画を作成します。最後に、この行動計画に従って具体的な取組を行います。この継続したグリーン経営を行い続けないと次の審査で認証が受けられなくなるという厳しい認証制度です。申請からグリーン経営の継続に至るまで、クリアしなければならない細かい規定が多数ありますので、プロの専門家へ相談されると良いでしょう。

グリーン経営認証取得のメリット

認証取得のメリットは環境保全活動を行っているということを社会全体に向けてPR出来ることです。認証登録企業はエコモ財団のホームページで公表されますし、自社のホームページでもPRすることが出来、取引先や消費者からの信頼が高まります。また、職場のモラルや社員の士気向上に繋がり、交通事故件数の減少、リーダーの人材育成にプラスになったと回答している企業が多数あります。現在4406件7166事業所の登録があるようです(このうちトラックは3595件5642事業所)。今後は中小零細企業へこの認証取得が広がっていくと思われます。

運輸物流は日本社会を支える重要産業だという認識

ついに25%を超えた日本の高齢化比率

先月、総務省は平成27年度の国勢調査の速報結果を発表しました。それによれば、総人口に占める65歳以上の比率が過去最高の26.7%に達した模様です。今や日本の人口の4人に1人は高齢者ということになり、この流れは今後もしばらく続き、受け止めなければならない事実です。そこで今回は過疎高齢化と運輸物流業界について考えてみます。

ヒトとものを一つのバスで運ぶ試み

岩手県盛岡市。宅配大手のヤマト運輸は岩手県北自動車と提携を結び、盛岡市と宮古市間で乗客と荷物を一緒に運ぶ「ヒトものバス」の運行を開始しました。これには過疎化による乗客数減少に危機感を抱きながらもバス路線を維持したい地元自治体の思惑と長距離ドライバー不足に悩むヤマト運輸の思惑が一致した背景があります。バスの後部座席を荷台スペースに改良し、人と荷物を一緒に運べるようにしました。バス路線の生産性向上に一役買うことになり、中山間地の高齢者にとって欠かせない生活の足であるバス路線の維持に貢献することになりました。また、従来トラックとバスが走っていた路線にバスだけが走ることになり、CO2が削減でき環境への取り組みといった企業の社会的責任を果たすことに繋がります。一見、両者にとってピンチのように思える事態を協同でチャンスに変えた事例です。

物流運送は日本の社会を支える重要なインフラ

このように企業の自主努力と自治体との提携によって、物流網の維持を図っていくことは日本の政策課題だと思います。なぜなら、過疎地で生活する高齢者にとって物流宅配サービスは欠かせないライフラインの一つとも言えるからです。また、中山間地で生産された農産物を都市部へ輸送することで都市の消費者はその恩恵を受けています。インターネットで必要なものを注文し、宅配サービスによってその利便性の恩恵を過疎地と都市部の両方の住人が受けることが可能になった現在、本来、運輸物流は成長産業なのです。問題は適正な価格がそのサービスに支払われているかということと人手不足です。過疎地への輸送であれば、都市部への配送料金と一律で良いのかといった点です。また、人手不足で業界が成長の果実を受け取ることが出来ないのは非常に残念なことだと思います。ドローン宅配はまだ実証実験が始まったばかりで、自動運転などの技術革新もドライバー不足解消の貢献に一役買うと言われますが、実現はまだまだ先の話です。日本の物流が崩壊するということは日本の都市と地方の交流が途絶え、社会の崩壊に繋がると言っても過言ではないと思います。保育士不足を解消するために政府が本腰を入れているように、ドライバー不足も本来は政策の優先課題であるべき問題です。行政を巻き込んだ抜本的な対策が欠かせません。

自動車運送業界における環境への取り組み

自動車運送会社の社会的責任

先週は物流のモーダルシフトについて説明しましたが、自動車運輸業界における環境への取り組みを今回は考えてみたいと思います。企業の社会的責任(CSR)が叫ばれて久しいですが、自動車運輸業界のCSRは安全輸送と環境への取り組みです。実際、運送業を営む多くの企業がホームページで環境行動計画を宣言しています。

低公害車導入のメリットとデメリット

東京都では平成15年からディーゼル車規制が始まり、条例で定める粒子状物質排出基準を満たさないディーゼル車は都内の走行が出来なくなりました。この規制に違反した場合運行禁止命令が出され、従わない時は罰則の適用もあります。このように環境基準を満たさない会社に対する社会的な制裁は年々厳しくなっています。そこで低公害車の導入が加速しました。今では買い替えや増車の際に低燃費かつ低排出車を導入する会社が圧倒的に多いです。低公害車と言えば、ハイブリッドカーや電気自動車が代表的です。ハイブリッドカーはガソリン車に比べ、大気汚染の原因となるCO2やNOxなどの排出が少なく、電気自動車に至っては全く有害物質の排出がありません。そのため、地球資源が守られ、さらに経営者にとっては原油価格の高騰や下落に一喜一憂しなくても良いという経済的なメリットもあります。また、エンジンルームが不要となるためその広さを荷物を運ぶ空間として活用することが出来ます。

しかし、まだインフラの整備が追い付いていないのが現状です。電気自動車であれば10時間以上の充電時間が必要になり、その間は車両を利用できません。また、長距離運転に必要な充電スポットですが、必要な時に探してすぐ見つかるものではなく、あらかじめ見通しを立てた運転計画がなければ途中でバッテリー切れということに繋がります。さらに、車両価格がガソリン車に比べ高額です。それを補うために低公害車は購入時にかかる税金が低くなるように設定されています。

グリーン経営認証とは

国の制度ですが「グリーン経営認証」という制度があります。これはトラック事業者に対し与えられるもので、自ら環境保全に関する活動を行えるようなマニュアル作成をし、それに基づき一定以上のレベルを超えた事業者に与えられる認証制度です。認証・登録には費用がかかりますが、積極的な取り組みを行っている企業は公表されますし、グリーン経営は運送業を営む上でもはや避けられない課題であるため、費用対効果はあるのではないでしょうか。大手小売店の一部では運送会社がこの認証を取っているかいないかで取引を判断するところもあるようです。

トラックから鉄道への物流シフト

モーダルシフトとは

トラックドライバー不足とネット通販の拡大を受けて脚光を浴びるモーダルシフト。モーダルシフトとは、国内の貨物輸送をトラック輸送から大量輸送機関である鉄道や海運に転換することをいいます。鉄道貨物とはいわゆる貨物列車です。鉄道輸送の大きなメリットは時間通りに大量かつ迅速に貨物を輸送できることです。また、急に発生した需要でも貨物列車のコンテナの輸送枠を確保するだけで済み、ドライバー確保に四苦八苦する必要もありません。近年は通運会社による専用貨物列車の運行も始まりました。また、流通最大手のイオンは東京大阪間に専用列車を走らせており、環境問題に積極的に取り組んでいます。にもかかわらず、国内貨物輸送量におけるトラックのシェアは約9割なのに対し、鉄道はまだ約1%に過ぎません。

鉄道輸送のシェアが伸びない理由

シェアが伸びない要因の一つには運賃の高さが挙げられます。鉄道貨物の運賃が高いのは貨物を輸送するJR貨物などが線路を使わせてもらう対価としてJR各社へ支払う線路使用料が高いことにあります。一方のトラックでは高速道路の料金のみで一般道なら使用料は無料です。また、国際規格のISOコンテナや10トントラックなら運べる31フィートのコンテナが鉄道輸送では不足しているといった問題もあります。さらに、東海道本線のような輸送需要の大きな路線では、好き勝手に需要増に対応するだけ列車の本数を増やせないといった問題もあります。在来線や特急列車が貨物列車に優先するとする取り決めや、夜間の輸送では線路の保守との兼ね合いもあります。こういった個々の課題をクリアするためには、行政を巻き込んだ対応策を考える必要がありそうです。つまり、線路というインフラをJRの私有物ではなく公共財として考え、補助金でトラック輸送との価格の溝を小さくすることが重要だと思います。また、地方の赤字路線は3セク化されていることが多いですが、その3セクにとって貨物列車の線路使用料は貴重な収入源です。その収入があることで地方の赤字路線が維持され、地域住民の生活の足としての鉄道が維持できるメリットも考える必要があります。

鉄道輸送で運ばれた商品を知ってもらう取り組み

なにより、鉄道輸送は環境への負荷が少ないことが大きなメリットです。鉄道は輸送単位当たりのCO2排出量がトラックの約9分の1と環境負荷が小さいのです。ただ、消費者に輸送手段までは認知されていない現状があります。そこで鉄道輸送で運ばれた商品を一般消費者に知ってもらう取り組みとして「エコレールマーク」制度があります。この制度の趣旨は国が定めた基準を満たして輸送された商品にこのマークを付けることで、その企業が環境への取り組みを行っていることを知ってもらおうとすることにあります。今後、モノを買う際に注視されてはいかがでしょうか。

産地直送便の意味と輸送リスク

活きたままのエビはどうやって届けられるのか

お中元と言えばビールやそうめん、和菓子などが定番ですが、最近の御中元には産地直送の旬の果物や活きた魚介類などちょっと凝ったものが人気だということです。そういった生ものを輸送するためには様々な配慮が必要です。

例えば、クルマエビの場合店頭で承った情報が生産者へ直接伝わります。「○月○日18:00~20:00の間にAさんに届けてください」といった情報です。そして、エビを出荷する生産者は出荷前にお届け先へ「今から商品を出荷しますから、明日必ず受け取って下さいね」と事前に連絡をします。出荷されるエビは発泡スチロールのケースに敷き詰められたおがくずの中に並べられます。おがくずを入れるのはいくつか理由があります。エビ同士が輸送中に暴れて傷つけ合い弱るのを防ぐためであったり、エラ呼吸のエビはエラに水分が蓄えられていれば十分に生きられるためにおがくずでエラに蓋をする役割があります。当然冷蔵便ですが、おがくずがあることで温度を一定に保ち、エビにストレスを与えること極力小さくし、鮮度を保ったままの活きたエビが輸送されます。そして、荷物の受取人はぷりっぷりのエビを頂くことが出来るのです。

産地直送の意味

また桃やブドウなどのフルーツも産地から一番食べごろの旬の状態で出荷されます。特に、ブドウは人気が高く予約が一杯になると受注をストップするのだとか。スーパーなどで売られている桃やブドウは流通にかかる時間を予め見越して早めに収穫され、輸送中に熟すように出荷されます。一方、産地直送のブドウは出荷ギリギリまで木で熟させ、出来る限りその場で収穫し食べるのと同じ品質をお届けするために予約出荷という方法をとるのです。つまり、提供できる数に限りがあるわけです。こちらもエビと同じく、受注の情報が産地の業者へ直接伝えられ、そこから出荷前にお届け先へ連絡をすることもあるようです。こうすることで甘く、みずみずしく美味しい桃やブドウがお届けできるのですね。

生鮮食品の輸送はリスクが大きい

しかし、こういった産地直送便を輸送する運送業に携われる方にとっては生鮮食品はハンドリングに特に注意が必要です。一定の温度で輸送しなければならないため、冷蔵車を使用しなければならず、そのための専用車両もしくはクーラーボックスを確保しなければなりません。また、冷蔵車は燃費や人件費などのコスト負担も通常輸送よりは大きいです。これらの価格を上乗せ出来るよう適正な価格で受注することが肝要かと思います。生鮮食品は代用品が少ない場合が多く、輸送に失敗すればクレームも大きなものになり、損害賠償などのリスクも大きいからです。

眠っている労働力活用と無理な要望を断る勇気

お中元シーズンの幕開け

デパートや大型ショッピングセンターでは今年もお中元の早期承りが始まりました。これと並行するように今後運送会社でも取り扱う荷物の量が増えていくため、臨時雇用の求人も増えてきました。安全に荷物を届けることが使命である運送会社で働かれる方にとって、繁忙期の人材確保は喫緊の課題です。また最近は賃金の上昇もあり、小売、飲食、運送などで短期の人材獲得競争が続いています。追い打ちをかけるように発生する人手不足感を解消し、繁忙期に最優先課題の安全輸送を維持するためにはどうすれば良いのか考えてみます。

主婦や外国人の労働力を活用する

解決策の一つは配達をもっぱらプロであるドライバーが担当し、それ以外の仕事を眠っている労働力に頼ることが考えられます。その一つは主婦の活用です。午前中や日中の数時間の細切れの時間であれば、時間的制約が多い主婦を活用でき、双方にメリットが生まれます。例えば、ヤマト運輸ではドライバーとは別にドライバーを補助するフィールドキャストとして女性の登用を進めてきました。その結果、1万人を超える女性スタッフが活躍しています。女性が働きやすい職場環境の整備も進んでいます。また、外国人労働者の活用も考えられます。言葉の障壁がありますが、配送ではなく集配拠点での仕分けなど、コミュニケーションをあまり必要としない部署で彼らは大きな力を発揮します。こちらも外国人が働きやすい環境への配慮が必要です。経営者を始め、職場の従業員全員に異なる文化を受け入れる寛容さが必要です。主婦や外国人が働きやすい職場環境や労働時間などの前提条件を整備出来れば、分業により人手不足が解消でき、労働集約型産業の運送業では大きな成果を上げることが可能であると考えます。

顧客の不当な要望は断る勇気も必要

また、大口顧客からの無理な要望は断る勇気が必要かと思います。特に、荷主からの運送料金の不当な引き下げ要求など、経営の根幹を揺るがすような問題は監督官庁に相談する勇気も必要になります。今年1月の軽井沢で起きたスキーツアーバスの事故は発注者である旅行会社から不当に安い料金で輸送を引き受けていたことに原因の発端がありました。ですから、経営者は目先の利益よりも社会全体の利益を考える必要があるのです。また、お中元やお歳暮などはある一定の期間に配送が集中します。それは近年受注システムが機械化されており、店頭で承りをする担当者が、例えば「7月1日到着指定」などと連続して操作するようにお店で指導を受けているためにそういった事態が発生します。ですから、運送業界がとりうる対策としては、お中元お歳暮のように「日時」指定より「期間」のほうが重要である荷物については、大量に荷物を出す小売店側と「期間」指定へ変更出来ないか、今後相談することで解決策を見出していくことが重要かと思います。

同じ過ちを繰り返さないために今この瞬間から

明らかになった道路運送法改正法案

今年一月、大学生を含む15人が亡くなったスキーツアーバス転落事故を受けて、国土交通省は新たな事故防止策をまとめました。具体的には貸し切りバス事業者の事業許可に更新制度導入、監査の実効性確保、法令違反の罰則強化が柱となっており、秋の臨時国会で道路運送法改正法案を提出し、2017年度中の施行を目指すとしています。

事業許可の更新制度

事業許可の更新制度は新規参入業者だけではなく、すべての貸し切りバス業者が対象になります。更新期間は5年が見込まれています。この背景には規制緩和で行き過ぎた価格競争の弊害、つまり安全対策軽視が今回の事故を引き起こしたとの共通の認識があります。そこで価格競争で安全面への配慮がおろそかにならないように、業者に車両の新規取得や運転手の健康診断の予定を盛り込んだ安全投資計画と収支見積書の作成を義務付けて、参入時と事業許可の更新時に国がチェックするとしています。そして不十分と判断されれば事業許可を取り消すとしています。許可を取り消された業者がバス事業に再参入するのに必要な期間も現行の2年から5年へ延長される見通し。これは国の監査が追い付かない現状を補うため、更新の際に問題のある事業者を徹底的に洗い出し、監査の実効性を確保する目的があります。

安全規定違反の罰金額は数億円になる可能性も

また、1月に事故をおこしたイーエスピー社は運行管理者による点呼を怠り運転手の健康状態の把握を怠っており、ドライブレコーダーの設置も行っていませんでした。そこで改正法はドライブレコーダーを設置することも義務付け、また運行管理者を置かないなど安全規定に違反した場合、即時運行停止とし、罰金額も引き上げられ、違反を厳しく取り締まるとしています。特に法人への罰金が数千万から数億円程度に引き上げ、違反への抑止力を高めることを目的としています。

1月の事故は人手不足や価格競争の弊害といった業界の抱えた問題が浮き彫りになった象徴的な事故でした。遺族の方の一人は「事故は氷山の一角。業界全体が変わらないと事故はなくならない」と訴えています。一瞬の事故は時に周囲の方の残りの人生まで悲惨なものにしてしまいます。悔いても失われたもう命は帰ってきません。同じ悲劇が二度と繰り返されないように私たちは事故を記憶し、そして改正法が実効性のあるものとして機能するよう、常に今この瞬間から国と事業者には襟を正して業務と監督に当たって欲しいと願います。

判断に迷ったら社会全体の利益を優先する

はじめに

先週の人財育成に活かすアドラー心理学に続いて、今週はアドラー心理学を運送会社の組織運営に活かす方法を考察してみたいと思います。

自社の利益より社会全体の利益を判断の拠り所にする

アドラーは共同体感覚を大切にすることを解いています。この共同体感覚とは自分の会社組織だけをいうのではなく、もっと広い意味での社会を意味しています。そして判断に迷った時はより大きな集団の利益を優先させるべきであると言っています。これを経営に当てはめると経営者が判断に迷った時は自社の利益より社会全体の利益を優先させて判断すれば誤ることはないということになります。例えば、不正会計や燃費偽装問題などは社会全体の利益より自社の利益を優先させたために企業の存続が危ぶまれる危機に陥ってしまいました。そうならないために経営者が物事を判断する際にこの共同体感覚はとても重要なのです。つまり、共同体の中での自社の存在の意義を考えることが大切なのです。

「目的」か「原因」かで割り切るのではなく

経営学では計画(Plan)実行(Do)検証(Check)行動(Action)の頭文字をとり、PDCAサイクルという考えがあり、事業はこのサイクルで行うのがセオリーだと考えられています。例えば、計画(Plan)になかった予期せぬ問題が起こったとします。その時、どうして失敗が起こってしまったのか検証(Check)し、次の行動(Action)に移します。この検証の時に失敗の原因を徹底究明し指摘します。これは生産性原理と呼ばれる手法です。この考えでは失敗がなぜ起こったのかという「原因」に着目します。しかし、アドラーは原因ではなく「目的」に着目しますので、失敗の原因を究明することでは個人の成長は阻害されると指摘します。これを企業に当てはめると、失敗をしたことはそのまま受け止めて、次の目的のために今できることに時間を割いた方が生産的だということになります。ですからアドラーの場合、PDCAの生産性原理は必ずしも妥当しないことになります。原因追究は後ろ向きであり、勇気をくじくことに繋がるからです。しかし、交通事故のような問題が起こった場合、その検証を行い反省することは必ず必要だと思います。なぜなら、検証し反省することを怠れば、必ず同じ過ちを繰り返すからです。この点では原因追究を軽視するアドラーの考えは、運送会社の事業経営にそのまま当てはまらないのではないかと思います。

「目的」と「原因」。経営者はどちらを優先すべきかにこだわるのではなく、いずれも事業経営にとっては欠かせない大切な視点であると捉えるべきだと思います。

人財育成に活かしたいアドラー心理学

過去にとらわれず今この瞬間に着目する

最近書店の店頭にはアドラーに関する書籍が山積みになっています。アドラーは心理学者で「自己啓発の父」と呼ばれ、世界中の著名な事業家に大きな影響を与えてきました。心理学者と言えばフロイトが有名ですが、フロイトは「原因」に着目しますが、アドラーは「目的」こそが人を動かす源泉であると考えます。つまり、フロイトは人間の行動は過去により規定され、自分の力で未来をコントロールできないと主張したのに対し、アドラーは人間は未来への目的により行動を自分で決めることが出来ると主張しました。過去にとらわれず今この瞬間に着目するアドラーの考えの方が前向きであり、ビジネスと結び付きやすく、特に人を育てるということに関してアドラーの考えは非常に有益であるようです。そこで今回はアドラーの考えを運送会社で採用した人を育てる場面を想定し、当てはめながら説明します。

従業員をほめても叱ってもいけない

事業運営をしていく中で、アメとムチを使い分けて従業員をコントロールしようとする経営者がいます。人をほめることは一見素晴らしい事のように思えますが、叱られたりほめられたりすることに慣れた従業員は経営者(もしくは上司)が見ている前でしかその行動を取らなくなるとアドラーは考えます。また、叱ることは一時的な効果しかなく、従業員の活力を奪います。そこで、アドラーは信頼関係を重視します。つまり、経営者と従業員の信頼関係を築いた上で、問題行動が起こって時間を置いてから穏やかな空気の話し合いを行うことが解決策だとします。また、アドラーは結末から学ぶことを重視し、失敗を積ませることは経験を積ませることに繋がるといいます。リスクのある仕事を任せ、見守る寛大さが大切だといいます。そして、部下を育てる時の指標として「この体験を通じ、相手は何を学ぶだろうか」と経営者は自答すれば答えは見つかるとしています。また「良くやった」と上から目線で人をほめるよりも横から目線で「ありがとう。助かったよ」と感謝することで従業員は喜びを感じ、強固になった信頼関係の中からはさらに生産性が高まると考えます。

勇気をくじくのではなく勇気づけを行う

アドラーは勇気を重要視します。人が困難に直面した時に勇気があれば解決策を探ろうとします。そこで経営者は従業員に勇気づけを行うため、従業員に「ありがとう。私はあなたのおかげで助かった」と伝えることが大切です。なぜなら、従業員は組織への貢献感を感じ、自分が組織にとって価値があると思える時に勇気を持てるからです。また、事故が起こった時に問題指摘や事故原因の究明は従業員の勇気をくじくことに繋がります。そこで事故原因の究明は本人の前では行わず、「今後このようなやりかたはどうだろうか」と建設的な提案で人を育てるべきです。採用した人材の自律的育成と離職防止のためには従業員の勇気を奪わない教育が大切だということです。

貨物輸送のリスクと保険

商品の輸送リスクをカバーする保険

イギリスからアンティークの輸入を行っている友人と話をしていました。現地で大量に買い付けた後はコンテナ船で輸送するらしいのですが、その輸送中に商品が壊れてしまうことが多いのだとか。そのようなリスクをカバーするために保険があります。

貿易取引条件(INCOTERMS)と外航貨物海上保険

国際間の貿易では「外航貨物海上保険」という保険が一般的に利用されます。貿易取引では売主と買主のどちらが船舶と保険を手配するか事前に十分確認しておかなければなりません。そこでインコタームズ(INCOTERMS)と呼ばれる貿易取引条件があります。代表的なインコタームズにはFOB、CFR、CIFがあります。FOB条件では売主の義務は船積み原価で売るのもので、買主は本船と保険の手配を行います。CFR条件では売主は本船を手配し船積み原価と運賃で売り、買主は保険の手配だけを行います。CIF条件では売主は本船と保険を手配し、船積み原価・運賃・保険料で売り、買主は本船と保険の手配を行う必要はありません。また、貿易における決済の方法は信用状取引(L/C)と呼ばれ、これは買主の取引銀行が買主に代わって商品代金の支払いを保証するものですが、CIF条件の場合、売主は信用状の指示通りに外航貨物海上保険を手配しなければなりません。このように国際輸送では売主買主以外にも銀行が取引に絡んできますので、保険の加入が取引条件であらかじめ決められていることが特徴です。

国内輸送中の保険

国内での貨物保険は海上輸送中の貨物の損害をてん補する「貨物海上保険」と陸上輸送中の「運送保険」に分類できます。東京海上日動の外航貨物海上保険では海上輸送中の損害に加え、オプションで陸上での保管中や荷役中も保険の対象にしています。また、三井住友海上の国内貨物総合保険ではオーダーメイド設計が特徴であらかじめ特定できない倉庫や工場での保管や加工中の事故も補償可能になっています。佐川急便の運送保険では輸送中の盗難や破損などによる貨物の損害を補償します。また損保ジャパン日本興亜の運送業者貨物賠償保険はトラック1台ごとに保険料を算出し1年間包括的に補償されるので保険手配が漏れる心配がない点が特徴です。

このように国内輸送では様々なリスクをカバーする保険が広く販売されており、どの会社を選ぶのか、そしてどのオプションを付けるのかは利用者の選択に委ねられています。但し、国内保険の場合、天災やストライキなどのような不可抗力の場合は保険の支払いがなされないと規定されていることが多いので注意が必要です。また、アンティークのように価格の算定が困難なものは補償対象外となっていることもあります。

運送業の労災認定件数が全業種の中で一番高い理由

大阪労働局の定期監督で明らかになった実態

先月、大阪労働局の定期監督で運送業の約6割に当たる事業所で長時間労働に関する違反があったことが判明しました。違反率は全業種の中で最も高く、具体的には36協定を結んでいないにもかかわらず残業を行わせた事例が多く見られました。

36(サブロク)協定とは

36協定とは「時間外・休日労働に関する届出書」のことをいいます。労働基準法36条に規定されているために36(サブロク)協定と呼ばれます。それによれば、労働者に法定労働時間を超えて労働させる場合や休日に労働させる場合には、あらかじめ労働組合(組合がない場合は労働者の代表)と使用者で書面による協定を締結しておかなければならないとされています。この36協定を労働基準監督署に提出することで初めて残業や休日出勤が可能になります。労働者がたった一人でも時間外労働をさせる場合には届出が必要です。そして、届出を怠り従業員に時間外労働を行わせれば労働基準法違反となるのです。また36協定を結び届出を行っているからといって、無限な残業が許されるわけではありません。「労働時間の延長の限度等に関する基準」があり、残業時間が一定の時間を超えることも認められていません。

運転手と会社を守るための「改善基準告示」

また昨年国土交通省がドライバー5000人に対し行った実態調査では長距離ドライバーの一日の平均拘束時間は16時間を超えていました。ドライバーは指定された時間までに商品を運ばなければならないために早めに出発し納品先近くで待機します。また、納品先から会社に戻っても片付けの時間が発生します。つまり、拘束時間には運転時間以外に荷物の受け渡しの待ち時間や片付けの時間が含まれているのです。この時間がサービス残業として処理されているところに問題の本質があります。そこで、トラック運転手の時間外労働、拘束時間、休憩時間などについては「改善基準告示」で一般の業種とは異なる基準が定められています。それによれば拘束時間とは休憩時間を含む出社から退社までの時間をいい、1月の拘束時間は基本的に293時間まで、36協定があれば320時間まで延長できるとされています。休息時間は継続して8時間以上与えることとし、この休息時間に電話などで運転手の自由を奪うことは認められていません。運転時間は2日で18時間を超えてはならず、また連続運転時間は4時間までとし、4時間経過後には30分以上の休憩を与えることや休日は休息時間に24時間を加算し30時間以上必要なことが定められています。未払い残業代の請求で多大な出費を余儀なくされ経営を圧迫されないように日頃から法令を守ることが大切です。

運送業からの事業多角化としての物流不動産事業

はじめに

運送業に携わられている方で物流不動産ビジネスに関心を持っていらっしゃる方がいらっしゃると思います。事業の多角化を行う上で宅建業は比較的少額投資で開業できる事業です。そこで今回は物流不動産のビジネスモデルについて説明したいと思います。

物流不動産のビジネスモデル

物流不動産とは倉庫や配送センターなどの物流施設のことです。これまでの物流不動産のビジネスモデルは空き倉庫の所有者とそれを利活用したい荷主テナントなどを仲介(売買・賃貸)するモデルが一般的でした。物流不動産には主として商品の保管を行う倉庫を保管型倉庫(DC倉庫)、仕分・加工などの機能を持つ通過型施設(TC施設)があります。しかし、近年では経営資源の選択と集中の流れで物流不動産の活用の方法も変わってきました。かつて物流施設といえば「倉庫」のイメージが浮かぶように港湾に段ボールが山積みになった物件を差していました。しかし、近年はインターネット通販市場の拡大とともに物流施設の需要が急拡大し、供給が追い付かない状態が続いてきました。また、アマゾンの即日配送といったようなサービスに対応できるよう従来型の倉庫とは一線を画すデザインや耐震性、そして最新鋭の機能を揃えた大型物流施設が投資ファンドの出資で東京大阪や福岡など好立地の主要港湾部へ次々建設されています。そこで業務を行う3PL(3rd Party Logistics)企業が注目されます。これは物流業務だけをサービスとして行う企業のことで、物流不動産の運営企業に該当します。例えばネット通販を主に手掛ける企業は販売に専念し、商品の調達や梱包、出荷、配送といった業務を3PL企業にアウトソーシングします。その他、最新鋭の物流施設と引換えに使われなくなった小さな倉庫などはリノベーションし、カフェや店舗として再活用するなどの取り組みも注目されます。

物流不動産業を営むには

3PLのような委託業務や自らリノベーションした倉庫のオーナーとなり他人に賃貸し収益を挙げるケースでは宅建業の免許は不要です。しかし、物流施設の売買や賃貸のような仲介業務を営むためには宅建業の免許を取得しなければなりません。免許は本店所在地の都道府県知事、2以上の都道府県に支店を出す場合は国土交通大臣の免許が必要です。消費者保護のために従業員5人に1人以上の割合で国家資格者の宅地建物取引士を置かなければなりません。また役員が宅建業法上の欠格要件に該当していないことも重要です。免許取得後は1000万円供託するか、宅建協会などへ加入し分担金を納付しなけば営業を開始することは出来ません。その他、運送業の許認可のように宅建業を営むためには細かい法律の規定がありますので、事業を開始される際には専門家へご相談されることをお薦めします。

国の事前シミュレーションが熊本地震で機能しなかった理由

事前のシミュレーションが機能しなかった理由

前回の記事では大規模災害時における行政と民間の協同関係などについてご説明しましたが、今回の熊本地震では必ずしもうまく機能していなかった模様です。その一番大きな理由として挙げられるのが、集積所へ届いた支援物資を避難所にいる被災者へ行き渡らせることが出来なかったことです。これは仕分けを県や市町の行政職員が担うことが想定されていましたが、その行政職員も被災しており、また他の業務で忙殺されたため集積所で仕分けを行う人手が足りず、全国から集積所へ支援物資は次々届くもののそれを避難所の被災者まで届けることが出来ないという問題が発生しました。また、アマゾンの「欲しいものリスト」に登録された物資を被災者へ届けるという試みも一部では成功しているようですが、大多数の被災者はこのシステムの存在すら知らず、また避難所にいる全ての人がSNSを活用出来ないことも問題でした。

福岡市の取り組み~救援物資を絞りピンポイントで配給する

そのような中で個別に対応している隣接市の福岡市の取り組みが注目されています。福岡市はマスコミ報道で避難所の声を見た市民から次々寄せられる支援物資の受け入れがかえって混乱に拍車をかけることを予想し、SNSなどを通じて市民に冷静な対応を呼びかけました。その上で市民に提供を呼びかける支援物資をペットボトル、トイレットペーパー、おむつ、未使用タオル、未使用毛布、生理用品の6種類に限定し、福岡市内の集積所で保管しました。それを熊本市と緊密に連絡を取り合いながら、要請があった避難所へピンポイントで輸送するという非常に効率的な物流を行うことが出来た模様です。近隣自治体による災害支援モデルとして今後高く評価されることでしょう。

一日も早く店を開けたコンビニの健闘

また東日本大震災の時は一部の消費者が物資を買い込み、東京都内でもスーパーからモノが消えるという事態が発生しました。そんな時に非常に心強かったのがコンビニの存在です。熊本地震では被害を受けたコンビニは一時休業に追い込まれましたが、東日本大震災の教訓から早い段階での復旧が進んだ模様です。ローソンは完璧な品ぞろえが出来ていなくても店を開けるべきという考えを貫き、商品の配送をトラックから小回りが利く営業車に切り替えています。またセブンイレブンジャパンは生産から配送までを一貫させることができる強力なサプライチェーンを活かし、迅速な店舗への供給を今回も実現させました。

今回の災害で学んだことは事前のシミュレーションでは想定出来ない事態が起きた時、冷静に判断し素早く実行に移せるリーダーが必要だということです。福岡市長の冷静な判断と実行力やコンビニの素早い復旧で市民に希望を与えたローソンやセブンイレブンの取り組みは評価されるべきだと思います。

被災地に救援物資を届けるため

東日本大震災の反省から

今回九州熊本地方を襲った震度7をはじめとする大地震の被害に遭われた方に心よりお見舞い申し上げます。東日本大震災の時もそうでしたが、大災害によりライフラインや交通網や遮断されると援助物資の輸送が喫緊課題となります。そこで、今回は大災害時の物流について考察してみたいと思います。

国土交通省は東日本大震災の際に問題とされた物流支援システムを見直しました。東日本大震災では情報の途絶、関係者間の連携不足、物資集積拠点の機能低下、被災者のニーズの把握などが出来ておらず、円滑な物流が機能せずに救援活動の妨げとなってしまいました。そこで、災害時には物流事業者の能力を最大限活用できるように物資集積拠点の選定や行政の協議会に物流事業者を参加させ意見交換を行ってきた模様です。物流における官民の協同関係が見直された契機だったと言えます。

集積所までは救援物資は届いたものの

災害時では被災者が必要としている物資(需要)と全国からの寄付で集まる支援物資(供給)のかい離が発生します。一刻を争う被災地のニーズにマッチした支援をするためには正確な情報伝達と配送スピードが不可欠になります。そこでアマゾンジャパンとヤマト運輸、徳島県の取り組みが注目されます。これは被災者がSNSを活用し、アマゾンのサイトへ「欲しいモノリスト」を登録し、それをヤマト運輸がアマゾンの物流センターから支援物資を徳島県の支援物資集積所や避難所へ届けるといったシステムです。県はヤマト運輸に緊急車両通行証を発行し、また輸送に必要な道路情報などを提供します。これにより被災者のニーズにあった物資の迅速な提供が可能になります。徳島県以外にも物流会社と協定を締結し、災害時に協同する協定を締結している自治体は多数あります。しかし今回の熊本地震では集積所までは十分な救援物資が届いているもののそこから先へは物資が行き届かないという問題が発生しており、今後の検討課題であると思います。

通行可能な道路を把握するためビッグデータを活かす

今回の熊本地震では高速道路が寸断され多くの家屋の倒壊や橋の崩落なども起きています。そこでビッグデータを活用し、通行可能な道路を把握し可視化するためカーナビが活用されます。被災地での車両の通行経路をモニタリングすることで行き止まりになっている道を瞬時に把握し、輸送物資を届ける車両に提供することで効率的な輸送を助けることが出来ます。グーグルはホンダ自動車からデータの提供を受け被災エリアの「自動車運行実績マップ」を公表し、またトヨタ自動車も車両搭載の通行実績データを分析し「通れた道マップ」を公開しています。災害時では一部誤情報が飛び交い、混乱に拍車をかけることが指摘されていますが、データの的確な分析と提供が被災者の迅速な救援に繋がります。被災地の皆さまに1日でも早く平穏な生活が訪れるようこれまでの経験と英知を活かして欲しいと思います。

安全とドライバーの労働環境を守るために

縦割り行政の垣根を越えて

スキーツアーバス事故では国土交通省の監査が行われ、次々と法令違反や不備が指摘されました。このように運送業は国土交通省運輸局の監督下にあります。また運転手の安全衛生などは厚生労働省労働局の監督下に置かれています。縦割行政の弊害がかつてから指摘されてきましたが、近年では省庁の垣根を越えた相互通報制度が稼働しており、合同監査も行われています。

安全に関することは国土交通省の監督下

一般貨物運送事業は許認可権を持つ国土交通省の監督下に置かれています。事業を開始する場合、国土交通大臣又は地方運輸局長の許可が必要であり、これに違反した場合1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金科料に処せられます。事業許可の要件に営業所に関すること、最低車両台数(一営業所につき5台)のような事業用自動車に関すること、車庫・事務所休憩施設に関すること、勤務割や運行管理者の設置などの運行管理体制に関すること、安全輸送管理体制の整備に関すること、資金計画・収支計画に関すること、保険への加入のような損害賠償能力に関することなどがあり、これらに違反していないかが監査の対象になります。運輸局によるこれらの事項の監査は国土交通省の告示により行われますが、事故防止に重点が置かれています。具体的にどのような監査が行われるのかは2/23の記事でご紹介しておりますのでそちらをご参照ください。

ドライバーの安全衛生は労働基準監督署の調査を受ける

賃金不払いや長時間労働のような拘束時間違反などの違法行為は労働局(労働基準監督署)が対応します。特に、トラック運送業界では労働者の労働条件は厳しいものがあり、そのことが大きな事故に繋がることから安全衛生確保はかねてからの喫緊課題です。具体的に労働基準法では労働時間割増賃金関係や労働条件明示等に違反していないか調査されます。また自動車運転者の労働時間の改善のための基準があり、これはトラック運送業改善基準告示と呼ばれ、そこでは拘束時間や休憩時間、最大運転時間や連続運転時間、休日労働に関する違反があるかどうかが調査の対象となっています。監督署の調査は長時間労働など労働者から申告があった場合に抜き打ちで行われますが、その結果非常に高い確率の事業所で違反が認められています。労働基準監督署の調査の結果違反があれば是正勧告や指導を受け、それの対応をしなければなりません。

普段から法令順守意識があれば監査対策に必要な時間を割かれることはなく、安定的な事業運営が出来ます。また、専門家を活用することで監査対策に係る費用をアウトソーシングすることも可能かと考えます。

運送事業に関する第一種と第二種

はじめに

世の中に一種と二種といった分類がされている事柄って多いですよね。
運送事業では自動車運転免許や貨物利用運送事業の分類があります。そこで今回は運送事業に関わる第一種と第二種について解説したいと思います。

第一種自動車運転免許と第二種自動車運転免許

履歴書を書く時「第一種普通自動車運転免許取得」と書いている方も多いと思います。はたして「第一種って何ぞや?」と疑問に思われていた方も多いのではないでしょうか。第一種運転免許とは日本の公道で自動車及び原動機付自転車を運転するために必要な免許です。これに対し、第二種運転免許は旅客を輸送する目的で、旅客自動車を運転するために必要な免許です。堅苦しい言い回しですが、タクシーやバスなどのようなお客様を乗せて走る車両を運転するのであれば、第二種免許が必要ということです。運転代行も第二種免許が必要です。他人から対価を得て命を預かり走るので、注意力や運転能力も求められるため、実技試験の合格点も第二種運転免許の方がより厳しく、学科試験も問題数が多いのです。

第一種貨物利用運送事業と第二種貨物利用運送事業

貨物利用運送事業とは、荷主と運送契約を締結し、自らは運送を行わずに他の運送事業者の輸送手段を利用して輸送を行う事業です。その貨物利用運送事業にも第一種と第二種があります。

第一種貨物利用運送事業とは、第二種貨物利用運送事業以外のものをいいます。ですから最初に第二種貨物利用運送事業を検討してみます。第二種貨物利用運送事業とは鉄道、海運又は航空による利用運送に自動車による集配をプラスし、荷主から荷受人まで一貫した運送サービスを提供する事業です。例えば、東京から沖縄まで荷物を運ぶ場合、荷主のところへ車で集荷に伺い羽田空港まで運び航空機を利用して那覇空港まで運び、那覇空港から荷受人のところまで再び車を利用して荷物を運ぶといったケースです。

第一種はこれ以外ということですので、単純です。船舶であれば船舶のみ、航空機であれば航空機のみ、自動車であれば自動車しか他人の輸送手段を利用することができません。様々な輸送手段を複合して利用できる第二種のほうが複雑高度な輸送手段と言えます。そのことは事業の許認可にも表れており、第一種では国土交通大臣の「登録」で良いとされていますが、第二種の場合はより厳しい「許可」が必要とされています。

つまり自動車運転免許も貨物利用運送事業も第一種より第二種のほうが複雑高度で試験や許認可が厳しいのです。

夢の宅配サービスは目の前まで迫っている

アマゾン日本法人の売上が1兆円を超えた理由

インターネット通販最大手のアマゾン。日本市場での売上高は約1兆円を超えるなど順調に成長を続けています。そのアマゾンが急拡大した理由には物流拠点を整備し、配送スピードの改善に努めたことに大きな功があるようです。今では翌日配送は当たり前の感がありますが、今後もドローンを使った宅配サービス「Prime Air」を考案するなど、アマゾンの挑戦はまだまだ続く模様です。

ドローン宅配のメリットとは

アマゾンのドローン計画では配送エリアは配送拠点から半径16Km以内、運べる荷物の重さは約2.27kgとまだまだサービスは限られるようですが、実現すれば急成長を続けたインターネット通販市場と慢性的な人手不足が続く宅配業界にとって救世主となることは間違いないでしょう。また排気ガスを出さないために環境への負荷が少ないのもドローン宅配のメリットです。そしてなにより注文から30分以内にお届けといった夢の宅配サービスを享受できるかもしれないのです。

ドローン宅配サービスの問題点

しかし、問題点が全くないわけではありません。まずプライバシーの問題があります。ベランダ付近を小型無人機が飛んでいる日常を住人が甘受できるか問題です。ドローン宅配のメリットを全ての住人が認めればクリアできそうです。次に空中での衝突事故が懸念されます。これは機体につけた衝突防止装置が解決してくれそうです。またドローンの飛ぶ高度は航空機が飛ぶ高度よりはるかに低いため航空機との接触事故は想定していないとの事。自動操縦で飛行禁止区域に誤って侵入しないようにするなどの配慮もなされるのだとか。ドローン専用空域の設定も考えられているようです。

日本では昨年千葉市の幕張新都心が国家戦略特区に指定されました。これにより特区内でのドローンの運用が可能になります。来月11日に初の実証実験が行われるとの報道がありました。具体的には物流倉庫やドラッグストアで荷物を積んだドローンが川や海を越えて高層マンションのベランダまで荷物を運ぶ模様です。実現すれば世界発のサービスとして注目を集めるでしょう。幾つかの場所で実証実験を積み安全性やプライバシーの問題をクリアし、ドローン宅配が安定的な宅配サービスとして成長することを期待しています。

許認可制度の趣旨と貨物利用運送事業における登録・許可基準

はじめに

前回まで2回、事業を始めるためには「個人事業主」として事業を始める場合と株式会社等の「法人」を設立して事業を始める手続を説明しました。その中で許認可が必要な事業は国や地方自治体の許認可を受けることが事業開始の要件であると説明しましたが、今回は許認可制制度の趣旨及び許認可が必要な事業の一例を挙げ、最後に貨物利用運送事業における許認可に当たる登録・許可基準について考えてみたいと思います。

許認可制度の趣旨と許認可が必要な事業

3/1の記事で説明した通り、誰でも憲法上職業選択の自由が保障されており、やりたい仕事を遂行する「営業の自由」も保障されています。しかし、自由に任せていると力関係で弱者が生まれ、また他人の人権と衝突する場面が生じてきます。そこで、このような自由競争の弊害から個人の人権を守るために、行政が監督指導する必要が生じてきます。そのために許認可が必要な事業があるわけです。

例えば次のような事業に許認可が必要とされています。飲食店、ホテル・旅館・民宿、旅行業、医薬品化粧品販売、クリーニング店、美容室・理容室、映画館、貸金業、建設業、宅建業などは都道府県知事の許可・登録が必要です。また、バー、古物商は都道府県公安委員会の許可、タクシー、運送業、建設業・宅建業(2以上の都道府県に渡る場合)では国土交通大臣の許可、人材派遣ビジネス、人材紹介ビジネスでは厚生労働大臣の許可、そして金融商品販売の内閣総理大臣の登録が必要となっています。

貨物利用運送事業における登録・許可基準

貨物利用運送事業を始める際にも国土交通大臣の登録・許可が必要です。貨物利用運送事業法は貨物利用運送事業の運営を適正かつ合理的なものとすることにより、貨物の運送サービスの円滑な提供を確保し、もって利用者の利益の保護及びその利便の増進に寄与することを目的とするとされています。つまり、法は「利用者の利益の保護」のための制約を予定しています。細かく見ると、第一種貨物利用運送事業では国土交通大臣の「登録」が、第二種貨物利用運送事業では大臣の「許可」が事業開始の要件とされています。登録許可基準ですが、第一種貨物利用運送事業では①事業遂行に必要な施設を備えているか、②財産的基盤はどうか、③経営主体が欠格要件に該当していないかどうかが登録における確認事項とされており、必要最小限度の客観的な要件への適合性についてのみ確認するものとされています。一方、第二種貨物利用運送事業では①事業計画の適切性、②事業の遂行能力、③集配事業計画の適切性などが許可における確認事項となっており、的確な審査を行うとされています。いずれも全体的に事業者の営業の自由を基本的には認めつつ、利用者の利益の保護と過当競争を防止することのバランスを考えた規制となっています。

法人の意味と株式会社の設立の手続

法人とは

前回は個人事業主として事業を始める場合を説明しましたが、今回は法人である株式会社を設立するケースについて説明します。ここで、法人とは人間のような自然人ではないが、法律上人格を認められ権利義務の主体となりうるものを言います。そのため個人事業主と異なり、財産的法的責任も株式会社である法人そのものが負うことになり、原則個人は出資の範囲内で責任を負います。

株式会社設立の手続

株式会社を設立するための手順は会社法という法律で規律されています。まず定款と呼ばれる会社の根本規則を定めます。定款には最低限①目的、②商号、③本店、④設立時資本金の額、⑤発起人の氏名住所を記載しなければなりません。そしてこの定款を公証人に認証してもらいます。次に、出資金の払い込みをします。これが設立時の資本金になります。それから取締役などの役員を選任します。役員の選任は発起人の議決権の過半数で行います。最後に必要書類を揃えて本店の所在地の法務局で設立の登記を申請します。これで法人格をもった株式会社が成立します。ここまで収入印紙や登録免許税などで約25万程度費用がかかります。

その後、税務署へ設立の日から2月以内に「法人設立届出書」を、給与支払事務所になった場合はその日から1月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出します。また税制上有利な「青色申告の承認申請書」「棚卸資産評価方法の届出書」「減価償却資産の償却方法の届出書」なども提出しておきます。さらに都道府県へ「事業開始等申告書」、市町村へ「法人設立届出書」を提出しなければなりません。また、労働基準監督署や社会保険事務所へ労働保険や社会保険関係の届出書を提出します。許認可が必要な事業は監督官庁への届出や免許が必要な点は個人事業主の場合と同じです。すべての届出が完了してから、株式会社としての事業開始です。

株式会社は運営面でも規制がある

事業規模が大きくなると社会的な信用の面や税制、責任などの観点からも法人格を持った株式会社を設立するのがいいでしょう。株式会社では新株や社債を発行することで資金調達が行えます。しかし、株式会社の場合、上記の設立だけではなく、資金調達や組織運営面でも会社法をはじめ様々な法律で規制されています。例えば会社法では、1年に一度は決算を公告すること、株主総会を開なければないこと、任期ごとに取締役等の役員の変更を行わなければならないことなどが規定されています。また、変更の都度登記が必要な事項も規定されています。そのため専門家のアドバイスを受けながら事業運営を行うのが得策だと考えます。

個人事業主として事業を開始するためには

個人事業主か法人か

段々春らしくなってきました。春になると新しいことを始めたくなります。そこで今回から2回「事業を始める」ことについて書いてみたいと思います。事業を始めるに当たって最初に決めておきたいのは「個人事業主」として事業を行うのか、株式会社等の会社を興して「法人」として事業を行うのかです。個人事業主と法人では支払う税金の種類が異なります。また、責任の範囲も個人事業主と法人では異なってきます。今回は個人事業主として事業を始める場合を考えてみます。

個人事業主が納める税金は「所得税」

個人事業主は年の1月1日から12月31日までの期間の収入から経費を引いた所得に対し国税の「所得税」、地方税の「住民税」「個人事業税」がかかるため、毎年確定申告を行わなければなりません。そこで、個人事業主として事業を行う場合最初に提出しなければならない書類として、税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を、都道府県税事務所と市役所へ「事業開始等申告書」を事業開始日から1月以内に提出しなければなりません。青色申告を選択していれは10万若しくは65万の控除を受けられます。その青色申告を受けようと思われる方は事前に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署へ提出しておきます。また、人を雇う場合には事業主はその従業員の賃金から所得税を源泉徴収し、本人に代わって納税する義務があります。そこで、従業員に給与を支払うことになった日から1カ月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出しなければならないことになっています。

上記の届け出以外にも運送業のような許認可や不動産業のような免許が必要な事業は所轄官庁への届け出や免許取得が事業開始の条件になるため注意が必要です。

個人事業主の責任は無限

個人事業主の責任の範囲は無限です。つまり、法人(株式会社や有限会社など)と異なり、事業主が金銭的法的な全責任を負わなければなりません。銀行から借り入れをした場合、会社財産だけで返済できなくなった場合は個人の財産で返済しなければなりません。また事業中交通事故などで他人に損害を与えた場合には、事業を廃止した後でも時効が完成するまでは法的責任を負うことになります。

個人事業のメリット・デメリット

法人に比べて個人事業主として事業を行う場合のメリットは上記のように事業を開始するに際し基本的には費用がかからないこと、所得税の確定申告を済ませておけば住民税や個人事業税の申告は不要なこと、小規模ビジネスであれば税金面で法人より有利なことです。一方、デメリットは事業規模が大きくなると税金が法人より高くなることや事業主の責任が無限であることが挙げられます。

次回は法人設立について書いてみます。

職業選択の自由と貨物自動車運送事業法による規制

職業選択の自由とは

日本国憲法22条では職業選択の自由が保障されており、「公共の福祉」に反しない限り、好きな場所で好きな仕事を営むことが保障されています。これには選択した職業を遂行する「営業の自由」も当然含まれています。この職業選択の自由は個人が働くことを通じて自己実現を図るといった観点からも重要な人権だと考えられています。そこで今回は貨物運送事業法と憲法について考えてみたいと思います。

貨物自動車運送事業法の目的

貨物運送事業を行う上で守らなければならない法律は幾つかありますが、代表的なものに「貨物自動車運送事業法」があります。普通、法律には第1条に立法目的が書かれており、貨物自動車運送事業法の第1条によれば「貨物自動車運送事業の運営を適正かつ合理的なものとする」こと、「輸送の安全を確保」し「貨物運送事業の健全な発達」を図ることが目的とされています。つまり、合理性追求ばかりではなく、安全と事業の健全な発展を目指しましょうと謳われています。そこで、その目的を達成する手段としての規定が幾つか置かれています。例えば、運行管理者の国家資格を持つ者を一定規模の事務所に置くことや事業参入に許可がいること、運賃の届け出が必要なことなどです。

経済的自由権に対する違憲判断には裁判所は消極的

そこで、この貨物自動車運送事業法による規制が憲法の保障する職業選択の自由に対する制約にならないかが問題となりますが、似通った経済的自由権が争われた判例では立法目的が正当であり、その目的と目的達成手段との間に合理的な関連性があれば違憲ではないとしています。ややこしい言い回しですが、裁判所は国会の裁量を尊重し、法律が自由に対し行き過ぎた過度の規制である場合にのみ違憲判断をするという考え方です。つまり、表現の自由のような精神的自由権と異なり、職業選択の自由のような経済的自由権に対する違憲判断に裁判所は消極的なのです。その背景には行き過ぎた競争から国民の安全な生活を守り、弱肉強食を許さないとする憲法の福祉国家の精神が反映されています。

しかし、そもそも憲法は権力を縛るものであり、経済的自由権に対する規制であっても国による「公共の福祉」に名を借りた無制限な法規制は許されるものではありません。経済的自由権は好きな場所で好きな職業を遂行するといった自己実現と関わることから精神的自由権と密接に関わる人権であると思います。規制が行き過ぎているような場合は主権者である私たちが選挙を通じて判断すべき問題であると裁判所から提起されていることには注意が必要です。

運送事業者に対する監査にはどういったものがあるのか

貸し切りバス事業者に対する抜き打ち監査

先月軽井沢で起きたスキーツアーバス転落事故を受けて、国交省の調査員が抜き打ちで貸し切りバス事業者への監査を始めました。その中で約半数の事業者で運行指示書の記載漏れなどの違反があったことが判明。このような無通告で行われる抜き打ち監査は最も監査の効果が上がるとされていますが、運送事業者に対して行われる監査にはどのようなものがあるのでしょうか。

運送事業者に対する監査の種類と方法

運送事業者に対する監査の種類には「特別監査」「一般監査」「呼出指導」の3種類があります。特別監査が最も厳しく社会的影響の大きい事故を起こした会社や重大な法令違反が疑われる事業者が対象になります。特別監査と一般監査は事業者による書類などの意図的な改ざん・廃棄を防ぐために原則無通告で行われます。監査の方法は「臨店監査」「呼出監査」「街頭監査」の3つに分けられます。臨店監査は事業者の営業所に立ち入って行われるもので、この度イーエスピー社に対し行われたものです。また、冒頭の貸し切りバスの抜き打ち監査は街頭監査に当たります。

トラック運送事業に対する行政処分基準と監査体制は飲酒運転や居眠り運転などによる重大事故が後を絶たないために年々厳格化されてきました。監査対象は「運行の安全」に関わることが主であり、運行管理者を選任しているか、運転手に対し適切な点呼を実施しているか、車両の定期点検整備を行っているかなどとなります。また、元請事業者の下請イジメなどの実態があるかどうかも監査対象とされています。その他、労働基準法に抵触する場合は労働局の監査も並行して行われることがあります。

監査は公正な競争実現のためのブレーキである

監査のイメージは概して「厳しい」ものですが、監査は公正な競争社会実現のためには欠かせない社会のブレーキです。そこで経営者は監査で指摘されなくても業務の適正を確保できる体制を維持し、かつ利益を上げ続けられる好循環を作りたいものです。つまり、日頃から法を守り業務を行っていれば、内部告発や抜き打ち監査による処分におびえる必要はありません。事故が減れば、保険料の負担も減り、利益が上がります。不正のない風通しの良い職場は従業員の士気向上にも繋がります。胸を張って監査を受けられる事業者が増え、悲惨な事故が減っていくことを願ってやみません。

高付加価値商品を運ぶ手段としての航空輸送

航空輸送とは~ベリー便とフレーター便

先日、空港で飛行機を眺めていたら、旅客機とは異なる窓がない飛行機を見つけました。航空貨物(エア・カーゴ)と呼ばれる飛行機です。航空貨物とは飛行機によって運搬される貨物のことです。航空貨物では具体的に次のようなものが運ばれます。美術品・動物のような繊細なハンドリングを要するもの、医薬品のような緊急性を要するもの、さらに精密機械のような高い付加価値をもった商品です。つまり、通常の輸送とは異なり高い輸送品質が求められる商品が運ばれます。

航空貨物には大きく2つの種類があります。一つは普通の旅客機の貨物室を使って運ばれるケース。これを「ベリー便」といいます。これは日中乗客を運び、深夜空になったその旅客機を利用します。ANAではこの貨物便の客室の一部に搭乗者を乗せて運ぶといった試みが行われています。もう一つは貨物機を用いた貨物専用の航空機を用いる場合です。「フレーター便」と呼ばれます。窓のない航空機はまさにこれです。DHL,日本貨物航空(NCA)、近鉄エクスプレス(KWE)、JAL CARGO、ANA Cargoなどの会社があります。

航空輸送の特徴

航空輸送の場合、手続きがやや煩雑であるといった難点があります。例えば、JAL CARGOの場合、①輸送の準備→②搭乗便の予約→③出発空港への搬入→④航空機搭載→⑤空輸→⑥到着空港での引渡し、といった流れでモノは運ばれます。海外へ輸送する場合は通関手続などの複雑な書類を求められますので専門家に依頼するか代理店などを使うのが得策かと思います。また、リチウム電池単体では輸送できず、さらに危険物に該当する物品を輸送する場合運賃が5割増しになるなど輸送できる貨物に制限がありますので注意が必要です。航空貨物のコストはコンテナを乗せて運ぶ海上輸送と異なり、スペースが限られているため海上輸送の約7倍です。それでも、成田からロサンゼルスへ翌日には配送されます。船便だと1週間以上かかるために時間をお金で購入する輸送だともいえます。

羽田がアジアのハブ空港となるために

日本では騒音問題などの影響のため、24時間離発着出来る空港が現在羽田、関西、中部、新千歳、那覇、北九州の6空港に限られています。そのため上で上げたベリー便で搭乗者を運ぶ試みはANAの羽田と那覇を結ぶ一便でしか実現していないようです。今後、羽田空港が国内の各地の空港とベリー便で結ばれれば、消費者の選択肢が増え、羽田がアジアのハブ空港として国際競争力を高めていくことも可能となるでしょう。

消費者が安全な商品を選ぶことには限界がある

高速道路の整備と共に便利になった高速バスネットワーク

先月15日の未明に起きたスキーツアーバス転落事故。新たに亡くなった一人の方を含め15名の命が失われました。高速道路が全国津々浦々まで整備され、都市間移動や国内旅行ではもはや欠かせない高速バスですが、安全なバスを情報弱者である私たち消費者が選ぶにはおのずと限界があります。

消費者には隠された情報は知らされていない

今回の事故の中では監督責任のある国土交通省、ツアーを企画した旅行会社、バスを運行したバス会社3つのプレーヤーの責任が問われるべきであると思います。旅行会社のキースツアー社は国の基準を下回る金額でバス運行会社のイーエスピー社に業務を委託していました。国は事故が起きるまでその実態を見抜けませんでした。また、報道で明らかにされたイーエスピー社のずさんな労務管理。しかし、一般消費者の私たちはツアーを予約する際にその実態を全く知ることはできないのです。旅行は「夢」を売る商品です。だから、明るい情報が目に入るようなパンフレットやサイトが溢れ、約款や旅行条件書は小さな文字で書かれているにすぎません。そこで、先日観光庁が旅行会社に対し、パンフレットにどこのバス会社を利用するのか明記するように求めるという報道がありました。しかし、消費者は業界の主従関係や運行会社の労務管理まで知ることはできないのです。ですから、今後消費者に出来る予防策としては、インターネットで旅行会社やバス会社の評判を事前に調べ、評判の芳しくない会社でしたら当日ドライバーの表情を確認し、バスを見てタイヤがすり減っていたり、黒い排気ガスを吐いていたり目視で危ないと思ったら旅行をその場でキャンセルすること位でしょう。しかし、その場合も今の制度だと当日キャンセルでは50%もしくは100%のキャンセル料がかかります。相場に比べて極端に安いツアーの裏側には何かがあると疑ってみることが必要かと思います。

行き過ぎた競争と疲弊した社会

しかし、根本は事業者と行政のモラルの問題であると思います。違法行為を繰り返す業者が市場でしぶとく生き残り、法律を守って適正な活動をしている会社が競争に敗れ市場から淘汰され、また、違法な労働条件であることを知らない従業員が無理な勤務に追い込まれ、心身をすり減らし事故を起こす事態が発生します。そうなると最終的に市場では良い物の取引が阻害され、粗悪品しか出回らないという結果になります。このように「市場の原理」に任せていると力関係で必ず弱者が追い込まれます。それを防ぐための法規制であり、国の監査であるわけですが、今回のように大きな事故が起こったあとに監査が行われても失われた命はもう戻ってきません。価格競争の裏側で、疲弊しきった社会全体の歪みが今回の事故に凝縮されている気がします。

監督責任のある行政、商品を提供する事業者が今回の事故を教訓に法律や制度を守って私たちの生活に「安全」を提供してくれることを願ってやみません。また、私たち消費者も商品を選ぶ際に、自己防衛の意識を持ちたいと思います。

乗用車やバイクの引越しには「陸送」が便利

陸送とは

先週は赤帽の引越しサービスについて一部ご紹介しました。料金が距離によって決まってくる赤帽の運賃体系では、荷物が少ない単身者の近距離の引越しに最適でした。一方、バイクや乗用車も一緒に引越ししたいという方もいらっしゃると思います。そこで自動車やバイクの「陸送」を行っている運送会社があります。「陸送」とは長距離の引越しなどで自家用車などを引越し先まで送り届ける輸送サービスのことです。

料金体系は業者により様々~「ドアtoドア」サービスから「エコノミー」サービスまで

例えば、大手のヤマトホームコンビニエンスだと400ccクラスの二輪車で東京から福岡まで65,340円、乗用車だと68,904円かかります。車の場合、専用のキャリーカーに乗せて、途中からフェリーに乗り、再びキャリーカーに乗せられて現地まで運ばれます。北海道のような豪雪地帯へ運ぶ際にはスタッドレスタイヤの装着が必要との事。また、不可抗力を除いて傷などの損害は補償範囲内で賠償してもらえますので安心ですが、高級車の場合運搬そのものを断られる場合もあるので事前に確認しましょう。

ヤマト以外にも乗用車の陸送を行っている業者は多々あり、料金や輸送形態も幾つかあります。例えば、A業者の「ドアtoドア」コースは指定した場所から指定した場所まで運んでもらえる荷主にとって最も便利なサービス。便利な分、費用が若干高めで、東京福岡は49,500円です。自分で運転して行こうと思えば、片道の高速とガソリン代だけでも40,000円近くしますので、安心して移動したい人には最適なサービスだと言えます。少しでも安く抑えたいという方には「エコノミー」コースというサービスも。これは業者が指定したヤード(車両基地)に車両を持ち込み、指定されたヤードで車を引き取るというもので、東京から福岡まで35000円です。

一方、バイクの場合は小型であるため、「ドアtoドア」で引き取りから受渡までしてもらえるところがほとんどです。専用のトラックに乗せて運搬されますので、故障して動かなくても大丈夫です。ただ、近距離だと屋根が付いていない場合もあります。

突然の引越しで慌てないために

引越しを依頼するときは数社に見積依頼し、料金、輸送期間、補償などを比較して安心して依頼できる業者を選ぶようにしましょう。また、突然の引越しで慌てないように、時間がある時に家財を整理しておくこと大切です。長年使った家財を処分するのは勇気がいることかもしれません。そういったときは感謝の気持ちをもって処分すれば、気持ちよく片付けられると思います。最初は目安として3年間使っていないものから片付けていくと良いでしょう。

赤帽は単身者の引越しの大きな味方

引越しシーズン到来の幕開け

大学入試センター試験が終わり、本格的な受験シーズンが到来しました。この時期になると「赤帽」のチラシがポストに入っています。引越し料金を少しでも安く抑えたい学生のみなさんにとって赤帽は大きな味方です。そもそも赤帽とは個人事業主である軽自動車運送事業者の方々が出資者となり設立した組合です。組合というと農協や生協などが思い出されますが、一人で事業を開始するよりも組織に加入したほうが、例えば、少ない資金で独立開業ができる、組合から仕事を斡旋してもらえるなどのメリットががあります。但し、組合員になり、独立開業するまでにはいくつか手続が必要です。まず面接があり、貨物軽自動車運送事業許可申請に必要な書類を作成し、運輸支局へ提出します。営業ナンバーを取得した後に研修を受けます。研修後に車両を購入し、業務開始となります。

赤帽加入のメリットとデメリット

赤帽加入のメリットとしては、個人事業主として働けるので、自分のペースで仕事が出来、年齢制限なども気にする必要がない点です。また、仕事を自分で獲得出来ない最初の間は仕事のあっせんをしてもらえます。そして、能力があれば働いた分だけ自分の収入になることが一番の魅力です。一方、デメリットもあります。最初に車を買わされ、その返済をしていかなければなりません。また、毎月組合費がかかります。さらに仕事を組合から斡旋してもらった場合、手数料を支払わなければなりません。また、個人事業主であることには変わりないので、自分から進んでポスティングなどの営業をし、仕事を開拓していかなければ赤帽だけで生活をしていくのが厳しいようです。

利用者からみた赤帽のイメージ

一方、利用者からみた赤帽のイメージですが小回りが利き、比較的安価な料金で引越し作業を請け負ってもらえ、「赤帽」のブランドがあるので安心して仕事を頼むことが出来るなど、悪くはありません。一方、作業を手伝わなければならない、軽運送なので運べる荷物の量が限られる、遠方への引越しになると大手の料金の方が安かったといった意見もありました。赤帽の料金は20kmまでは4860円のように走行距離で決まっています。学生や単身者の近場の引越しには赤帽は大きな味方であるようです。

どうして悲劇は繰り返されるのか

スキーツアーバス転落事故は氷山の一角

年明けから暗いニュースが続きます。今月15日長野県の国道でスキーツアー客41人を乗せた大型バスが道路脇へ転落し、大学生を含む14人の方が亡くなりました。バスを運行していたイーエスピー社へ国土交通省の特別監査が入り、運転手に対する健康診断を行っていなかったこと、運行管理者による運行指示や点呼が適切に行われていなかったことなどが判明しました。また、事故2日前には行政指導を受けていたことなども報道されています。今回の事故が氷山の一角であると思うのは私だけでしょうか。

構造改革で失われた安全に対する意識

2001年から2006年の間に小泉内閣で行われた聖域なき構造改革。規制緩和のあおりを受け、多くの会社が高速ツアーバスへ参入し、価格破壊を売り物にしたツアーが次々に企画販売されました。また、近年のアベノミクスによる円安と政府の訪日外国人倍増計画により、昨年の外国人観光客は年間2000万人に迫り、安さが売りの高速バスの需要は留まるところを知りません。その一方で、運転手不足により過酷な労働条件の中、身を削り働くドライバーの問題はかつてから指摘されてきました。起こるべくして起こった悲劇ではなかったかと思います。運ぶモノは異なりますが運送業界も同じような状態が続いています。取り扱う荷物量は増える一方で、慢性的な人材不足といった構図は高速バスツアー業界と非常によく似ています。

法規制は過去の失敗を繰り返さないためにある

今一度、何のために法規制があるのかを考え直すべき時ではないかと思います。それは言うまでもなく、「安全」の一言に尽きます。役人による法規制は悪だというレッテルを貼られ、その多くが構造改革により取り除かれました。多くの民間企業の参入により価格競争が起こり、安さと引換えに「安全」に対する意識を消費者も事業者も忘れた結果、命が失われるという最悪の事態が起きてしまったのです。行き過ぎた規制は必要悪ですが、緩め過ぎた規制を見直す勇気も必要です。そもそも、法律は過去の反省や失敗を基に積み上げられて、改正されていくものです。その過程には犠牲になった尊い命が幾つもあったことを忘れてはならないと思います。

求職者が会社を選別する時代に人を集めるためには

信頼回復への足がかり

杭打ちデータ流用事件により信頼が大きく揺らいだ建設業界。一度失った信頼を取り戻すことは簡単ではありませんが、その足掛かりとなるような記事を見つけました。元請会社が下請会社の雇用する従業員の社会保険料を負担するという記事です。請負の仕組みについては昨年11月24日のブログで書きましたが、元請と下請は本来別会社なので、社会保険の加入はそれぞれの会社の義務です。別会社である下請会社の社会保険料を元請会社が負担するということは一連の工事の進捗をグループ全体で捉えようとする良い心掛けだと思います。工期優先のプレッシャーと人手不足の中で起きた今回の事件。現場で働く人を単なる労働者と捉えるか、会社にとってかけがえのない財産と捉えるかは経営者により異なるでしょう。しかし、若年人口減少の中、ただでさえ敬遠されがちな職種に人を呼び込むためには労働者を「財産」と考えるべきです。

ブラック企業には人は集まらない

運送業界にも同様のことがいえるのではないでしょうか。高い給与を支払えば優秀な人材が集まるかと言えばそうではないと思います。今の若い人が何を基準に会社を選ぶか、それは入社する会社が「ブラック企業」ではないことです。スマホでいつでもどこでも簡単に会社の情報や評判を入手出来るようになりました。高い給与を掲げても、応募しようとした会社がブラック企業にノミネートされていたら応募者が集まらないのは当然です。

では何が応募者の心を捉えるのか

では何が応募者の心を引き付けるのでしょうか。第一に経営者の発信するメッセージです。会社のトップが従業員のことをどのように思っているのかは特に重要です。また、無理なノルマや長時間サービス残業の有無、過去に重大な事故や訴訟があったかなども今はネットですぐに分かります。会社が応募者を選考するのと同様、応募者も会社を調べています。第二に職場環境も大切です。社内で働く人の表情はどうだろうか、経営者の方針は末端で働く従業員の意識にまで浸透しているか、応募者は面接時に見抜きます。つまり、関係法令を遵守し、企業が地域において社会的責任を果たしていると評価されている会社が選ばれるのです。

交通事故による経済的損失と危機管理マネジメント

年間3兆円を上回る損失が発生している

交通事故による経済的損失は年間約3兆円を上回ると言われています。運送業界全体の市場規模が18兆円ですから、交通事故が事業経営にどれだけダメージを与えるかお分かり頂けるかと思います。ここで、経済的損失とはその事故が起こったことにより発生した費用(①)と、その事故が起こらなければ得られたであろう利益(②)の合計をいいます。例えば、ドライバーが高速道路で事故を起こした場合、事業者には事業者責任がありますので、被害者からは慰謝料や道路の復旧などの費用を請求されます。また、そのトラックの荷主からも損害賠償請求を受けます。これが上記①の費用に当たります。また、トラックとドライバーを失ったことによりそれらにより得られるはずであった売上が失われます。これが②の利益になります。

利益を生むことと損失を未然に防止することは等価

「危機管理マネジメント」という言葉をご存じですか?事業経営上、利益を生み出すことと損失を未然に防ぐことは同じ価値を持っているという考えです。運送会社にとって最大の損失はやはり交通事故による損失になります。そこで、社内に安全管理室を設置し、従業員に対する安全意識の向上を常に図っている会社があります。例えば、運行管理者を置く会社は運転前の点呼、違反者に対する指導などを行います。また、車両にドライブレコーダーを設置し、危険運転を予防している会社もあります。また、優良運転手を表彰するなど、社内で安全運転に対する士気を高めさせる取り組みも効果的です。一方、運転手へは安全運転をしている「つもり」にさせないことが大切です。目視にとどまらず、口に出して「よし」と確認をさせたり、日中でもヘッドライトをつけて走らせるなど、安全運転を癖として教える指導も大切です。こうした取り組みにかかる時間と費用は、安全という利益を生み出すために欠かせない大切な投資です。

繰り返し行うことが結果を生む

人手不足で無理なシフトを組んだ結果、ドライバーが疲弊し時間に追われ、事故を起こすという負の連鎖を断ち切ることが大切です。運送会社を経営するということは危険と常に隣り合わせであることを経営者は常に意識しておく必要があると思います。上で述べたように、危機管理マネジメントの考えでは、「安全」は会社の利益です。年の初めに「安全」への意識を高め、1年を通じてその意識を持ち続けたいものです。

運送会社ではどのような人材が求められるのか

ドライバーに運転免許は必須

今回は運送会社で働く上で必要な適正と資格を取り上げてみたいと思います。運送会社の最前線で活躍するのはやはりドライバーです。トラックを運転するためには運転免許が必須です。まず、運転免許は普通免許、中型免許、大型免許に分けられます。また、街中を走っているトラックは2tクラス、4tクラス、10tクラスに大きく分けられます。法改正された平成19年6月以前に第1種普通自動車運転免許を取得した人は4tクラスまで運転可能です。それ以降に「普通免許」を取得した人は2tまでに制限されます。つまり、普通免許の取得者が4t車を運転するためには「中型免許」が必要になります。さらに、10t車を運転するには「大型免許」が必要になります。大型取得の条件は21歳以上で普通免許などを取得後、3年以上の運転経験が必要です。大型は免許取得費用が30万円位かかりますが、会社が一部補填してくれるところもあるようです。また、大型を取得していれば手当が月数万円つく場合があり、長距離ドライバーを志すのなら取得したい免許です。運送会社に就職したら、初めは2t車で実務経験を積ませ、能力と適正を見てから4t車へ移行させるといった研修形態を取っている会社が多いので、大型免許はその後に取る人も多いようです。

事務職はコミュニケーション能力が求められる

これに対し、事務職は会社を裏方から支えます。運送会社の事務職は荷物に対する問い合わせやクレームなどの電話が多いのが特徴です。クレーム対応の際には、お客様の立場に立った細やかな気配りが必要とされます。また、ドライバーの運行管理や配車手配などを担当する場合もあります。その場合は、ドライバーとのコミュニケーションや業務が円滑に進むような調整能力が必要となってきます。PCスキルとして、ワードとエクセルが求められています。その他、フォークリフトの免許を持っていると重宝されます。また、10月13日のブログで取り上げた運行管理者の資格は将来管理業務に就きたい人は目指すべき資格だと言えるでしょう。

いずれの資格も安全に業務を遂行するためにある

以上のように担当する職種により求められる適正や資格は様々です。能力に応じた働く場が運送会社には用意されていると言えるでしょう。共通しているのは、安全運転を心掛け事故を未然に防ぐ姿勢が大切だということです。危険予知の頭文字を取り「KY」という言葉があります。時間に追われて取り返しのつかない事故を起こした場合の損失は、時間に遅れることの経済的損失をはるかに上回ります。常に安全運転を意識できるかどうかがこの業界で働く上で資格より大切な適正だと思います。

大量の契約を迅速に処理するために

契約と約款

普通、私たちがモノを購入したり、サービスを依頼する場合、その都度契約が交わされています。例えば、コンビニでお弁当を買う時はお店と売買契約を結びます。契約は口約束だけでも成立します。また、不動産の売買契約など、契約条項が複雑になってくる場合、契約内容を証拠化し、当事者を拘束する目的で契約書を交わします。

しかし、運送業では不特定多数の利用者と大量の取引を行います。その都度いちいち契約書を作っていては仕事が進みません。そこで考えられたのが、「約款」と呼ばれる契約条項です。約款とは、不特定多数の利用者との契約を画一的に処理するために、あらかじめ定型化された契約条項のことをいいます。消費者は事業者が提示した約款に示された契約内容を承諾することで、契約に拘束されることになります。

貨物利用運送事業と約款

貨物利用運送事業を営む場合も不特定多数の消費者と契約を大量に結ぶため、それらを画一的に処理したほうが双方にメリットが生まれます。そこで、貨物利用運送事業法では、第一種貨物利用運送事業者は運送約款を定め、国土交通大臣の認可を受けることが義務付けられています。変更するときも同様です(第8条1項)。そして、大臣は次に掲げる事情によってその有効性を判断するものとされています。つまり、①荷主の正当な利益を害するおそれがないこと、②運賃や料金の収受並びに第一種貨物利用運送事業者の責任が明確に定められていること(第2項)。さらに、大臣が作成公示する「標準運送約款」と同一の運送約款を用いる場合は、その旨を届け出ることでも良いとされています(第3項)。

民法改正で「約款」が明文化されることに

約款は事業者が一方的に定め、消費者がそれに従うといった性質を持つために、力関係で消費者が不当な契約条項を飲まされる恐れも出てきます。約款の有効性が争われるケースも後を絶ちません。そこで、今回改正される民法では、約款の条項を新たに設け、①相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項で、②その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして信義則に反して相手方の利益を一方的に害するものについては、合意をしなかったものとみなされ拘束力はないとされました。消費者の保護を明文化し、約款を用いる事業者利益とのバランスが図られています。

国際物流におけるフォワーダーの役割と課題

国際物流業界におけるフォワーダーの役割

今年から復活したJリーグのCSがとても盛り上がりました。サッカーでフォワード(FW)と言えば点取り屋です。物流に似た言葉でフォワーダーと呼ばれる業者があります。国際物流業界におけるフォワーダー(Forwarder)とは、貨物利用運送事業者のことをいい、荷主から荷物を預かり、他の業者の輸送手段を用いて運送を引き受ける業者のことをいいます。一方、キャリア―(Carrier)とは、船や飛行機などの輸送手段を持っている会社のことをいいます。つまり、フォワーダーはキャリア―の貨物スペースに対し対価を支払い、荷主の荷物を運ぶので、国内運送の貨物利用運送事業者と似ています。フォワーダーは国際物流の司令塔であり、コーディネーターという役割を担っています。これはサッカーのポジションだとミッドフィルダー(MF)に該当するのではないでしょうか。

複合一貫輸送とは

グローバル化が進行した今日、国際物流におけるフォワーダーの役割は益々高くなっています。特に、国際物流は輸送手段の選択や通関や保険などの手続きが複雑であるため、専門業者のフォワーダーに頼らざるを得ない局面が多々あります。そして、日本のような島国の場合、フォワーダーは「複合一貫輸送」という輸送手段を選択します。複合一貫輸送とは、例えば、船舶とトラック、飛行機とトラックといった具合に、特定の運送品が、二つ以上の異なる運送手段により運ばれることをいいます。荷送人の下で封印された貨物が一度も開封されることなく、荷受人のもとまで運ばれます。この輸送手段により、荷主はドアtoドアのサービスを受けることが出来、安心して荷物の輸送を依頼することが可能になるのです。

ハードとソフト両面の改善が急務

一方で、複合一貫輸送は通常コンテナで運ばれます。東京や大阪などの大消費地では港湾内にコンテナを置く場所が不足しているため、コンテナを運ぶドライバーが港湾内で待たされるといった問題や、コンテナを陸上で牽引するトラックのドライバーが不足しているなどの理由ために、スケジュール通りに荷物が運べないといったデメリットも生じています。TPP妥結により、今後、さらなる物流増が見込まれています。港湾整備のハード面と人材育成のソフト面、双方の改善が急務だと思います。

再配達の経済的損失

1年で一番忙しい時期が始まった

今年も師走に入り、街角ではクリスマスのイルミネーションが点灯されました。配送業者のドライバーの方々にとって一年で最も忙しい時期です。日本のきめ細やかな時間指定サービスの配送システムが世界で最も優れているサービスであることを11月3日のブログで取り上げました。しかし、その一方で時間指定をすることによる経済的損失も生まれているようです。

再配達の損失は9万人分もの労働力に匹敵

国土交通省の試算ですが、宅配便の再配達に必要とされるドライバーの走行距離は全走行距離の25%に上るらしいのです。時間にして年間約1.8億時間、約9万人分の労働力に相当します。特に、農村部への再配達は配送拠点から1時間近くかかるところもあるようです。人材不足に悩む宅配業者にとって、再配達ロスは大きな損失であることは間違いありません。また、再配達で排出するCO2の量が地球環境にかかる負荷も看過できない数値になっています。

確実に荷物を受け取ってもらうために

そこで、こういった損失を埋めるために一部の宅配業者ではメールやスマホアプリを使って荷物を受け取る人が確実にいる時間にピンポイントで配達するといった取り組みや、コンビニや最寄り駅構内で受け取れるシステムの構築などを検討しています。また、午前中は比較的消費者の在宅が多いという統計データを利用して、午前の時間帯に働ける家庭を持つ主婦の力を活用し、その時間帯に集中的に配達するといった取り組みを行っている宅配業者もあります。

最近では荷物を受け取る側もドライバーさんに気を使います。時間指定をした場合、買い物やちょっとした用事も足せないため指定した時間帯は拘束感を覚えます。そのため、あえて時間指定をしない方も多いと聞きます。しかし、そうなると再配達のリスクは高まります。消費者が気持ちよく荷物を受け取れるような宅配業者の取り組みはまだ始まったばかりです。
日本が世界に誇る宅配システムが今後も進化していくことは間違いないようです。

ブランドより大切なこと

マンション傾斜事件と建設業界の闇

今年は大手不動産会社が販売した横浜のマンションが傾いた事件がありました。大手だから安心といった価値観が大きく揺らぎ、消費者の利益より自社の利益や納期優先といった建設業界全体の歪みがクローズアップされました。また、責任の所在が未だにはっきりとしていません。これは、建設業界の仕事の流れが「請負」といった形を取っているために必然的に発生した事件だとも思います。発注者と元請、また元請と下請、さらに下請と孫請など、様々なプレーヤーが一つの建物を作る過程で出てきます。その中で、最も弱い立場にあるのは零細の孫請企業です。

請負のからくり

運送業界も下請や孫請が非常に多い業界です。「請負」とは仕事を完成させることによる成功報酬ですので、発注者から業務を請け負った元請会社はどのような形であれ仕事を完成させれば良いわけです。極端ですが例を出してみます。発注者が元請会社Aに1000円で荷物を運んで欲しいと依頼します。元請会社Aは電話一本で荷物を下請会社Bに500円で運ばせます。これでAは自分では荷物を運んでいないにも関わらず、500円の利益を上げることが出来ます。また、下請会社も孫請会社Cに200円で荷物を運んでくれと依頼します。Bも何もしないで300円の利益がでます。結局、実際に荷物を運ぶ孫請会社Cには200円しか転がらないことになります。1000円がこの取引の適正な価格だとしたら、200円しかもらえないCの会社経営は成り立つでしょうか。ガソリン代や車両維持費など仕事で必要な経費は全てC社の負担です。これでは悲鳴に近い声が聞こえそうです。極例ですが、これが請負の実態なのです。

大手のブランドに頼らざるを得ないかもしれないが

自分で仕事を獲得する手段を持たない下請や孫請会社は大手のブランドの傘下でないと活動できないといった実情があります。しかし、お客様が求めているものは、ブランドよりも安心と安全です。大手だから安心できるとは限らないことは今回のマンション傾斜事件が示してくれました。運送業界においては、孫請の立場にある零細企業は横の繋がりが非常に強いと聞きます。横のネットワークを活かして、健全な経営ができるように業界全体が取り組めば、お客様が最も求めている安心と安全に繋がるような気がいたします。

配送求人に応募し自家用車を使用する方法と貨物利用運送

年末の人材獲得競争

年末に差し掛かり、運送業界においては取り扱う物量が急増します。それに合わせて、短期の配送求人も見かけるようになりました。中には、車持ち込み可、とか車両手当付といった高時給求人も見かけます。しかし、運送を業として請け負い行うためには営業用ナンバーを取得しなければなりません。応募先が貨物利用運送事業者であれば、営業ナンバーを持つ人に業務を委託することができるからです。

貨物利用運送とは

貨物利用運送事業とは、荷主との運送契約により、国内外を問わず陸海空のうち最適な輸送手段を利用して貨物の集荷から配送までを一貫して行う輸送サービスです。そして、貨物利用運送事業者は、他の事業者が経営する船舶や航空機、鉄道、自動車の輸送手段を利用して荷主の貨物を輸送することが出来ます。つまり、営業ナンバーを持つ人に業務を委託し、その人の車を利用して、荷物を運ばせるのが貨物利用運送です。緑ナンバーのような営業ナンバーを取得するためには審査や試験が必要です。また、許可までに普通3か月程度時間がかかります。そこで、会社が貨物利用運送事業の許可を予め得ておけば、他社または他人と業務委託契約を結ぶことで、営業ナンバーを持つ他人の自動車で荷物を運んでもらうことが可能となるわけです。

車負担には様々な手当も

車を所有していると様々な諸費がかかります。自家用車の場合、車検や自動車保険などで年数万円かかります。そのため、短期の配送求人ではガソリン代以外にも車持ち込み手当などが付与されるのが特徴です。しかし、営業ナンバーを取得していない個人が配送の仕事を請け負う場合、原則として業務ではその車は使用できません。そのため、自家用車を持ちこみ配送の仕事をしようと考えている方は、会社がその自動車を営業用に登録する必要があります。営業ナンバー取得のための登録料を会社が負担してくれるところもあるみたいなので、雇用主と契約前に確認しておくといいでしょう。

物流とは単なるモノの流れではない

物流を英訳すると二つの意味がある

今日、当たり前のように聞く「物流」という言葉。英訳すると「フィジカル・ディストリビューション」(Physical Distribution)と「ロジスティクス」(Logistics)の二つの訳が出てきました。前者はモノの流れを意味し、物流の直訳に近いニュアンスですが、後者の方は発展系といった感じを受けます。では、この二つはどう異なるのでしょうか。

フィジカル・ディストリビューション(Physical Distribution)~狭義の物流

Physical Distributionを直訳するとモノの流通を意味します。
この意味が持つ物流には①調達物流、②社内物流、③販売物流、④消費者物流、⑤回収物流の5つがあります。①まず「調達物流」。これは生産者が材料などを仕入れるための物流です。②次に「社内物流」。これはメーカーが生産した商品を工場から自社内各店舗などへ移動させる物流です。③さらに「販売物流」ですが、メーカーから各小売店へのモノの移動です。④そして、「消費者物流」です。これは私たち消費者が一番身近に感じる物流で、お店で買った商品が宅配便で送られてくるようなモノの流れを言います。⑤最後に「回収物流」というものもあります。これは①~④とは逆の流れのモノの流れで、商品の返品やリサイクルのようなモノの流れを意味します。
このようにPhysical Distributionは単なるモノの流れを意味しています。

ロジスティクス(Logistics)~今日的意義を持つ広義の物流

これに対し、Logisticsは物流を機能の観点から分類しています。つまり、物流には輸送、保管、荷役、流通加工、包装といった5大機能があります。
「輸送」はモノを移動させる役割、「保管」は倉庫業のようにモノを保管する役割、モノを飛行機や船、自動車へ積み込む「荷役」という役割、物流の過程で商品が壊れないようにまた効率よく運ぶことが出来るように「包装」し「加工」する役割です。
Logisticsが持つ物流という意味はPhysical Distributionを内包し、より高度で効率化した物流と言った意味で、今日的物流の意味づけとして最適であると思います。

物流を人体で例えると循環器に似ていると思います。血液が体の隅々まで流れなければ、私たちは生きていくことはできません。それと同様にモノがスムーズに流れなければ経済活動は停滞してしまいます。モノがスムーズに山間部や離島などの社会の末端まで行きわたるようにしてくれているものが高度なロジスティクス(logistics)なのだと思います。

人材獲得には安心して働ける職場環境のアピールが必要

深刻化する物流業界の人手不足

インターネット通販市場の拡大により取り扱う物量が激増し、成長が著しい物流業界。一方、日本のどの産業にも共通する問題ですが、労働者の高齢化により人手不足が懸念されています。その中でも物流業界の人手不足は深刻なものとなっています。長時間労働、低賃金などの負のイメージが原因で応募が少なく、また職場環境のため採用したドライバーが定着しにくいことが原因として挙げられます。

世界に誇るきめ細やかな日本の物流システム

今日注文した商品が翌日指定した時間に届く。このようなスピーディーできめ細かい日本の物流システムは世界でも例がなく、非常に高く評価されています。しかも、保険を付けることもでき、消費者は安心して荷物を受け取ることが出来ます。しかし、その高度にきめ細やかなシステムを支えているのは現場で働く「人」です。サービスが複雑化するにつれて、そこで働く人の負担も増えます。また、労働集約型の産業である物流業界にとって人手不足は時に致命的な問題となります。ドライバーの仕事はロボットではまだ代用できません。数年前まではリストラで人件費を削り、合理化で労働者は過酷な労働条件を突きつけられました。景気が過熱してくると今度は人材の獲得競争です。「人手不足倒産」といった言葉も聞くようになりました。

人材獲得競争に勝つためには

付加価値の総和がGDPであるのなら、物流業界の人手不足は日本経済全体にとっての大きな損失であると思います。なぜなら、上記のような物流業界のきめ細やかなサービスが日本経済の付加価値の一部であるからです。TPP交渉妥結の際には一時的に倉庫・物流業界の株価は上昇し、期待感が先行しました。しかし、少子高齢化が進む日本において、近い将来人手不足を一気に解消できるような明るい材料はありません。物流業界に目を向けてもらえるよう限られた人材へアピールが必要だと考えます。例えば、人が安心して働ける職場環境づくり、労働者の効用を高めるような賃金体系の構築。特に、今後は退職者の再雇用や女性が働きやすい職場環境作りが人手不足を解消する一つのテーマになっていくと思います。

TPP交渉妥結により脚光を浴びる倉庫業

倉庫業の形態

運輸・物流業界と切っても切れない関係にある倉庫業。小樽運河や横浜の赤レンガ倉庫などをイメージしますが、倉庫業には大きく分けて3つの形態があります。一つは普通倉庫業といって言葉のとおり、普通の物品を保管する倉庫業で、全国の大部分の倉庫業がこれに属します。二つ目は冷蔵倉庫業といい、水産物、畜産物、農産物、冷凍食品など8種物品を10度以下の冷蔵温度で保管します。3つ目は水面倉庫業というものがあり、これは切り倒した木材を海面上で保管するものです。

私たちの生活と切っても切れない倉庫業

倉庫業は運輸業と同じく、私たちの生活に極めて密接に関わっています。食料や物品の安定供給の為の一時貯蔵施設である倉庫ですが、倉庫業は公共性が高い事業です。また、倉庫業者は寄託契約により依頼主の荷物の保管責任を負います。そのために倉庫業法という法律で規制されています。倉庫業を行うためには、国土交通大臣の行う登録を受けなければなりません。また、倉庫業の登録を受けるためには倉庫ごとに倉庫管理主任者を置かなければならないとされています。さらに、倉庫を建てる場所も都市計画法や建築基準法の用途規制を受けます。つまり、住居系の用途地域(準住居地域を除く)には倉庫を作ることが出来ないことになっています。海外近くに倉庫が多いのは物流の便益上の理由のほかに、用途規制の影響も受けているからです。

TPP交渉妥結により脚光を浴びる倉庫業

先日5年にわたる長い交渉を経て、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉が妥結されました。今後は関税撤廃の影響を受けて、参加加盟国からの農産品の輸入や海外への国内製品の輸出増加が見込まれます。これらの物流需要の増大に伴って、倉庫業界や運輸業界への影響もさらに高まっていくものと考えられます。

プロの証の緑ナンバーと利用運送事業

ナンバープレートの種類

街を歩いていると様々なナンバープレートの車やバス、トラックなどを見かけます。それらを大雑把に、営業用か自家用か、軽自動車か否かの観点から「緑ナンバー」「白ナンバー」「黄色ナンバー」「黒ナンバー」に分類できます。

まず、軽自動車以外には主に「緑ナンバー」か「白ナンバー」が付けられます。
緑ナンバーは「営業ナンバー」とも言われ、お客様から対価を得て有償で物品を輸送する事業を行う車両に用いられます。つまり、事業として運送事業を行うためにはこの緑ナンバーを取得しなければなりません。タクシーや路線バス、宅配業者に緑ナンバーが多いのはこのためです。
一方、白ナンバーは自家用車でおなじみの「自家用」の車両に用いられます。

次に軽自動車には「黒ナンバー」か「黄色ナンバー」が付けられます。黒ナンバーは軽自動車の「営業ナンバー」です。軽貨物運送事業を営業されていることが分かります。
最後の黄色ナンバーは軽自動車の「自家用」ということになります。

営業車が白ナンバーということも

トラックがすべて緑ナンバーかといえばそうではありません。白ナンバーのトラックを見かけることも多いと思います。自分の会社のトラックは白ナンバーだよという方も多いのではないでしょうか。
これには、自分の会社で作った商品を納入先まで自分の会社のトラックで運ぶといったケースが考えられます。この場合は輸送で対価を得ていないために、白ナンバーでも可能なのです。
他方、他社商品を自社の白ナンバートラックで対価を得て運ぶ行為は違法です。そこで、緑ナンバーのトラックを所有していなくても、対価を得て運送業を営む方法があります。それが「貨物利用運送事業」です。

緑ナンバーのメリット

緑ナンバーを持っているメリットは、運送業のプロである証です。緑ナンバーの車を所有していることで、お客様は安心して荷物を頼むことができます。貨物利用運送ではそのような緑ナンバーを持つプロの業者に仕事を依頼するのです。

通販市場と利用運送事業の拡大と「運行管理者」の役割

通販市場と利用運送事業の拡大

インターネット通販市場の拡大により、運送業はますます私たちの身近になってきています。それに伴い利用運送事業も拡大してきました。コンビニやスーパーで私たちが当たり前のように商品を買うことが出来るのはそこに商品を運んでくれる運送業界で働く人たちがいるおかげです。街を歩いて、運送会社のドライバーさんを見ない日はないのではないでしょうか。そのドライバーさんたちの安全を守り、私たちが安心して荷物を受け取ることを担保する資格として、国家資格の「運行管理者」があります。

運行管理者とは

 運行管理者は運送事業の適正な運営に欠かせない資格です。つまり、トラック・バス・タクシーなどの営業用自動車の運行の安全確保のために設けられた国家資格であり、一定の数以上の事業用自動車を保有している営業所ごとに、一定の人数の運行管理者を置くことが法律で義務付けられています。
 その運行管理者の仕事内容ですが、運転手の勤務表の作成や交代要員の配置、点呼による運転手の疲労・健康状態の把握や安全運転の指示などの運行管理に関することがメインですが、時には経営者に助言したりするなど運送会社で重要な役割を担っています。

 受験資格は次の①または②のいずれかを満たす必要があります。つまり、①運行の管理に関して1年以上の実務経験を有する者、もしくは②実務経験に代わる講習を受講した者です。

慢性的な人手不足と運行管理者の大切な役割

 運輸業界は扱う物量が増えたために慢性的な人不足状態が続いています。今後さらなる人手不足が深刻化すると予測されています。そのような中で過酷な労働条件で体調を崩し休職退職に追い込まれたとか、高速道路での居眠り運転で死亡事故が発生したといった悲劇も報道されてきました。そのような悲惨な事件事故が起こらないようにするためにも、運行管理者の果たす役割と責任は今後もますます大きくなっていくと考えます。

利益目標を設定するなら何らかの基準を持ちましょう

実現不可能な利益達成指示の意味すること

東芝不正会計問題以降、各部門の損益責任を持たされている幹部は、目標を設定する場合に、注意しなければならない点が増えたと考えてよいでしょう。

佐々木氏は、東芝社長時代に、三日間で120億円の損益改善を指示したと報道されています。いかに大企業であったとしても、あまりに厳しい損益改善を指示すれば、それをチャレンジと呼ぼうが、必達目標と呼ぼうが、それが明らかに達成不可能であれば、今後は会計操作の指示ととられかねなくなるでしょう。

特定額の増益を見込むには、これまでの実績をベースにした利益率に、合理的な伸び率を考慮して、目標達成の実現性を裏打ちする根拠が必要になります。それは現有スタッフで対応可能なものであるのかないのか、そのような検討や実施可能性の見込みもなく、単に、三日間で120億円の利益を新たに増加せよというのは、会計上の操作をしろ、と言っているのと同じと考えられる可能性が増えました。

東芝事業内容の特殊性が導き得る問題の進展

たとえ今回の問題で、東芝歴代社長や、不正会計に関与して辞任した経営幹部が、粉飾決算を理由に訴追されることがないとしても、是非はともかく、それは政府の方針である原子力発電機を製造している大企業であるがゆえの、または、防衛省へ納入する製品の技術を持っているが故の対応かも知れぬと、貨物利用運送業や実運送業に携わっておられる皆さんには、認識して頂きたいと思います。

利益改善目標や売上高伸長を具体的数値をもって指示する際の注意点

以前、「1500億円以上(今では2248億円になっていますが)の利益の嵩上げをしていたけれども、国策と言われている原子力事業を担っている会社の役員は、刑事訴追されないかも知れませんが、その30分の1以下の50億円の粉飾で刑務所に入った人もいる」と指摘しましたが、結果として利益の嵩上げなり、粉飾なりを行わなくとも、あまりに厳しい、損益改善の要求や指示は、不正会計の要求なり指示と認められても仕方がない、ということになっていくのではなかろうかと思います。

更に、今回の不正経理につながった、損益改善の要求や、指示や、チャレンジだけではなく、たとえば、売上高の目標に関しても、あまりに厳しい要求をすれば、無理矢理売上高を伸ばすため、潜在顧客に対する詐欺・脅迫の教唆にもつながるのではないかという懸念すら生まれてきます。

貨物利用運送業に従事する皆さんに

以上、物流のベストマッチを模索して、事業展開を図っておられる、貨物利用運送事業に携わる皆さんにも、経営戦略や事業計画を策定する際の参考になれば幸いです。

企業経営者の内心に存在し得る「しがらみ」

私情に絡んだ「しがらみ」

「しがらみ」と言えば、腐れ縁など、第三者との関係において認められるものが、まず頭に浮かびますが、「しがらみ」そのものは、人の内心においても存在し得るもののようです。

しがらみ事業経営

本日、東芝が決算発表を再度延期すると報道されていました。二度の決算発表という、異例の事態の端緒を作った責任は重大であります。東芝パソコン事業で功なり名を遂げた西田氏からの「チャレンジ」により、事業規模の大きいパソコン事業からの、なにがなんでもの、より大きい利益創出に、事業経営が呪縛されていました。利益の水増しが常態化する端緒になったと思われる、2008年のパソコン事業の50億円水増しに至るまでの全社月例報告会で「こんな数字恥ずかしくて公表できない」と発言があったとのことですが、この発言などは、事業成果の係数が個人の面子に置き換えられてしまっています。まさに私情にしがらんだ事業経営と言えるのではないでしょうか?そしてそのような事業経営が継続されたことに、今般の東芝不正会計問題の原因の一部があるのではないでしょうか?

しがらみ人事、後任者の選任について

東芝社長としての西田氏の前任者二人が、経団連副会長という地位を得ていましたが、これを越えるには、経団連会長という地位しかない、という西田氏の競争心、よく言えば上昇志向ですが、そのような地位への執着というしがらみに絡んで、以下のようなトップ人事が行われました。

西田氏の目指していた「経団連会長」に選出されるには、会社の現役の社長か会長であることが不文律と言われています。リーマンショックの影響で、同氏は社長から降板しますが、それまでの慣例に従い東芝の会長に就任します。数ある大企業、優良企業の中から、経団連会長を出す企業として一歩抜きん出るには、会社のあくなき成長が求められたのでしょう。それを実行していくのは、後任の社長ですが、当初は高く評価し、後任社長の人選の際「この人以外にはいない」と西田氏が高く評価していた佐々木氏が、成長路線からの経営方針を変更する兆しを見せ始めると、西田氏は、自分に相談してこない、彼は傲慢だというような理由で、佐々木社長(当時)を交代させることにしました。これが自身の経団連会長就任という私情に絡んだ一つ目のしがらみ人事。

また、社長を退任する佐々木氏の処遇は、社長から会長へというのが従来のトップ人事でしたが、それでは、西田氏自身が会長職を退き、経団連会長の芽が全くなくなってしまう。逆に佐々木氏が、経団連会長の候補となってしまう。そのようなことを防ぐため、それまでなかった副会長というポジションを新たに作ってまで、佐々木氏を就任させています。これが私情に絡んだ二つ目のしがらみ人事。

佐々木氏の後任として、自らの経団連会長への就任に役立つと思われる、会社の成長路線を維持するために、西田氏の腹心の部下である田中氏を社長に就任させるという、これは従来の意味でのしがらみ人事。これが三つ目。

更に、西田氏が役員定年で相談役に退く前に、自分を追い抜かせないという、自身のプライドのしがらみに絡められ、会長の座を、社長職経験のない室町氏に譲り、佐々木氏を飛び越えさせて東芝会長に就任させ、あくまでも佐々木氏の経団連会長就任を防いだ、ということが報じられています。仮にこれが本当ならば、トップ人事がしがらみに基づいたものといわざるを得ません。これが四つ目のしがらみ人事。

上記一連の人事は、まさにしがらみの四重奏と言え、現在の想像されていた以上の根深い問題の下地であったようです。

企業の成長の障碍となる「しがらみ」発露の多様性

「しがらみを断って、企業の成長力を増す」という際の「しがらみ」とは、なにも第三者との関係だけではなく、経営者の内心にも存在し、その発露は非常に多様である、ということを参考にして頂ければと思います。

自由闊達な議論の出来る企業風土

しがらみ人事について

本サイトの7月3日の記事で、日本通運が「国内物流のしがらみを断ち切って成長力を取り戻した」ことについて縷々述べましたが、一般に「しがらみ」は人事においても生じ、それが今般の東芝不正会計問題を引き起こした一要因とも見ることができるようです。

退任する社長が自身の経営方針維持に拘るということ

西田社長(当時)は、自らが仕掛けたウェスティングハウス社買収という大型M&Aで活躍した佐々木氏を自分の後継者にしました。買収時は39基の原子炉受注を見込んでいましたし、その実現を目指して会社の成長路線が維持されれば、自らの経団連会長就任に一歩でも近づくのに資すると思ったのでしょう。しかし、佐々木社長(当時)が成長戦略を変更する気配を見せると、再度社長人事に介入し、自身の成長路線を踏襲する田中氏を社長に就任させました。
自分の経営方針を踏襲してくれそうな人物を後継者に指名するのは、なんら問題ないようですが、まず、一旦後継者を選んだ後で、自分の方針に沿っていないとわかると、自身の任命責任も問われることなく、自身の方針を継続してくれる他の人物を指名し直すというのは、自身の経団連会長就任というしがらみに基づいた人事と言わざるを得ません。

後継者選びと企業風土

上司の意向に逆らえない企業風土での後継者

後継者に引き継ぐに際して、「自分の経営した期間に発生しているかも知れない問題があれば正して欲しい」というような態度で臨んでいれば、一時的には、自分が進めてきた路線を、ある意味で否定されることがあるかも知れませんが、問題の芽が小さなうちに摘み取られ、ここまで大きな問題にならなかったかも知れません。ただ、週刊誌情報によれば、西田氏は「意見する部下を次々に左遷」していたようなので、そのような期待はできなかったでしょうし、そうであればこそ「上司の意向に逆らえない企業風土」が醸成されたのでしょう。もともと学者を目指していたといわれる頭のきれる西田氏に議論を挑んでも、コテンパンに論破されるのがオチでしょうし、果敢にも意見した部下の末路を見れば、逆らう気力も湧いてこないでしょう。そして、結果的には、後継者として自らと同じタイプの人物、または少なくとも任命当初はそう思われた人物を選択し、その後継者のもとでも引き継がれた、「上司の意向に逆らえない企業風土」の中で、成長路線という同じ経営方針を、三代10年間にわたって続けることになり、その誤謬を質す機会を失ったと言えるのでしょう。

自由闊達な議論ができる企業風土での後継者

後継者選びについては、経済同友会の小林氏が「トップ選びは自分にないものがある人を選ぶ」「(会長と社長が) 補完する関係でないと、どうしても張り合ってしまう」(日経新聞電子版7/22 付け)と言っていますが、参考に値すると思われます。
社長のミッションとして、短期的な利益を細かくフォローするのではなく、また前任者の経営方針を墨守するというのではなく、「企業の方向づけ」を重視するという観点から思い出されるのは、西田氏の前任の社長、岡村氏(現日本商工会議所名誉会頭)が東芝の社長であった時のエピソードです。2000年6月に社長に就任した岡村社長(当時)は、2001年12月に不採算事業からの撤退を始めました。その中に、当時の西室会長がその出身母体とする半導体部門の事業の一つである汎用メモリー事業から撤退し、アメリカの企業に売却すると決定したことがありました。決定後、岡村社長(当時)は西室会長(当時)に、あいさつをしに行ったという報道がありました。これなどを見ても、西室氏の最近の発言にありますように、同氏が社長時代に「闊達に議論できるよう改革を進めた」結果だったと言えるでしょう。岡村氏の挨拶に対して、西室氏は、仕方がないというような大人の対応でした。もともと西室氏はネットの記事によりますと「残しておいても黒字化するメドがない事業を売却することは、業績改善のみならず、危機意識の醸成にもつながる」と考えるような人なので、後継者も客観的な経営判断ができたように思われます。

自由闊達な議論の出来る企業風土の醸成が重要

以上、メーカーとサービス業の違いはあるものの、貨物利用運送業や実運送業に携わっておられる皆さんに、ツートップの会長と社長は互いに補完する関係を作るために、トップ選びは前任者が自分にないものがある人を選ぶという方法や、上司に逆らえない企業風土ではなく、自由闊達な議論のできる風土の醸成こそが重要、ということが参考になれば幸いです。

功名心に操られた会社経営の危うさ

健全な利益追求と不健全な利益追求

前回、二種類の利益ということについてお話しました。
「会社の維持・成長に貢献する利益」については、その追求の動機がどうあれ、「健全な利益追求」と言えるでしょう。経済活動に携わる人達が、利益を獲得しようとする動機には、「利己的」なものであれ、「利他的」なものであれ、種々様々なものがあるでしょうが、法律上許されている経済活動を通じて得た利益を、帳簿に適正に記帳されていれば、利益追求の動機の内容は問題とならないのです。

「会社を毀損する見せかけの利益」についてはどうでしょう。その獲得動機が、たとえ「利他的」なもの、たとえば、会社の倒産を防いで従業員の雇用を少しでも継続しようなどといった、自分自身ではなく、会社のため、従業員のためなどであったとしても、その追求は「不健全な利益追求」となります。なぜなら、会社の利益関係者、例えば株主などを法的に保護するため、会社には利益を適正に帳簿に表示する義務が課せられているからです。動機が「利他的」であったとしても、「不健全な利益追求」なのですから、まして利益を求める動機が「利己的」なものであれば、これに勝る「不健全な利益追求」はないでしょう。

今回の東芝不正会計問題に関して、報道されている内容をベースに、「会社を毀損する見せかけの利益」を追求する「利己的な動機」を具体的に見てみることにしましょう。

特定の地位に就任したいという動機

「財界総理」といわれている経団連の会長に選出されることを目的として、「10年後よりも、自分が退任するまでの数字を重視」したのでは、との報道がありました。もしそうであれば、これは「利己的な」動機と言わざるを得ません。本来、「会社の維持・成長に貢献する利益」を出しているにも拘らず、個人的な功名心をより達成しやすくするために、「会社を毀損する見せかけの利益」をも求めるのは、「不健全な利益追求」でしょう。全体の利益に占める後者の利益の割合が、それほど高くないことを考慮すれば、少しの見せかけの利益を求めることにより、全体として「会社を毀損した」とすれば、まことにもったいないことをしたものです。前々任者、前任者が経団連副会長に就任したあと、叙勲の受章者になっていますが、前々任者、前任者を越えようとのこだわりが、叙勲の可能性まで潰してしまったように思われます。

地位を求める競争に勝とうという動機

前任者と対抗するために、自らも経団連会長の候補にならんとして、「会社を毀損する見せかけの利益」をあげるのも、上記に述べましたように、これもまた「不健全な利益追求」でしょう。いくら大企業とはいえ、三日間で120億円の利益を要求しているのを見ますと、その合理的実現性を考慮しない点において、精神論だけで軍を押し進めた旧陸軍のやり方の様にも思えます。

抜擢に報いたいという動機

社長に指名されるまでは、業界ではノーマークだったにも拘らず、指名委員会の委員でもある当時の会長から、「もう一度成長軌道に乗せてほしい」と言われて社長に抜擢してもらったため、その抜擢に報いたいとの動機も、個人的、私的な動機、すなわち「利己的な」動機です。その動機に基づき「会社を毀損する見せかけの利益」を追求するのも、「不健全な利益追求」と言わざるを得ないでしょう。「会社の維持・成長に貢献する真の利益」を求めるべきところ、結局は、先々代、先代の社長からの流れを断ち切ることはできず、行きがかり上、ずるずると引きずられ、深みにはまっていったようです。

ケーススタディとして学ぶべきこと

今回、このような「会社を毀損する見せかけの利益」を、社長三代にわたって、「利己的な」動機に基づいて「不健全な追及」をしていたとすれば、社長辞任会見で述べられた「140年の歴史の中で最大とも言えるブランドイメージの毀損」は実際にその通りでしょう。これまで東芝には、「海の家事件」「東芝機械事件」など、新聞を賑わした事件が何件かありましたが、今回のようにトップが関わったというのは初めてでしょう。今回の事件は、上記のような功名心に操られた会社運営が如何に危ういものかということを教えてくれたのではないでしょうか?
貨物利用運送業、実運送業の経営に携わる皆さんにも、他山の石として読んでいただけたなら幸いです。

会社の維持・成長に貢献する利益、会社を毀損する見せかけの利益

会社の維持・成長に貢献する利益、会社を毀損する見せかけの利益

昨今の東芝不適切会計問題を目のあたりにしますと、利益とはいったい何かと考えさせられます。利益には、会社の維持・成長に貢献する利益と、会社を毀損する見せかけの利益とがあるようです。以下少し長いですが、他山の石となれば・・・。

会社の維持・成長に貢献する利益

会社の維持・成長に貢献する利益とは、純粋な経済活動の結果、即ち、需要を満たす供給により、需要者と供給者の双方が「経済的に」満足した結果が、適正に当事会社の財務諸表に記帳される利益と言えるでしょう。供給者からみれば、供給物が部品であれ、製品であれ、サービスであれ、供給物の対価と供給物の入手に必要だったもろもろの費用との差額が、適正に記帳されて、初めてこのような利益になります。需要者からみれば、受領した物が、部品やサービスであれば、それを利用する自らの生産活動の準備、商品であればその転売の準備という、いわば会社の維持・成長に貢献する利益を生み出す準備ができるのです。会社の維持・成長に貢献する利益は、その適正な配分により、会社の株主、債権者、取引先など、関係者の全てが、その享受者となります。

会社を毀損する見せかけの利益

会社を毀損する見せかけの利益もあります。経済的な取引実態の有無に拘らず、損益計算書のボトムラインの数字の嵩上げのみを目的として、帳簿上の数字を意図的に操作したり、複雑な取引関係の中にトリックを組み込んだりして得られる、財務諸表上に表現されるものがこれに当たるでしょう。
東芝不適切会計問題での、インフラ事業部門においての一例は、長期プロジェクトの採算を管理する「工事進行基準」と呼ぶ会計処理をする際に、意図的な操作が行われていました。期間対応していない売上げの過大計上や費用引当金の過少計上などで、利益の嵩上げを行っていました。パソコン事業部門においては、部品の調達コストに上乗せした価格で、完成品製造業者に販売し、その差額を利益として計上していました。この「利益」は完成品を購入する段階で、完成品の購入価格の増額となって、結局相殺されるのですが、部品の完成品製造業者への販売時期と、その業者からの完成品の購入時期がずれることによって生じる見せかけの利益を、引き当ても取らずに前倒して計上していました。はては、必要以上の部品を完成品製造業者に買い取らせて、利益を生み出したりしていました。このような部品の押し込み販売による見せかけの利益は、当期の本来の利益でもなければ、翌期以降の利益でもなく、それゆえ利益の前倒しでもありません。

会社を毀損する見せかけの利益は、利益として会社に留まらない

会社を毀損する見せかけの利益は、当面は、会社の維持・成長に貢献する利益と同様な効果を見せます。しかし、それは一時的には通用しても長続きはしません。
東芝のインフラ事業部門では、工事原価の見積総額が増加して、初めから最終的には損失が出るのがわかっていながら、費用の増額を認識しなかったり、費用の引当金を後ろに倒して、当期利益だけをよく見せていたりしていましたたが、そのようなケースでは、いずれは損失が露呈してしまいます。
パソコン事業部門では、完成品に必要な部品の販売額と部品調達額の差に基づく、帳簿上の見せかけの利益は、近い将来、完成品の第三者への売上げが実現すれば、その段階で、本来の利益から、記帳済みの見せかけの利益と同額が圧縮されて、年度末では、その経緯も霧散し、正味の利益になる可能性もあります。しかし、ある期間内に完成品製造業者に販売した部品の全てが、完成品に使用され販売されるということはなく、どうしても期末には部品の販売による見せかけの利益が残ってしまいます。さらに、必要以上の部品の押し込み販売なども行なわれて、そこから生ずる見せかけの利益は、完成品の製造に利用されるまでは、帳簿上残りますが、その期間は、押し込み販売を受けた相手方の費用すなわち損失として留まるのです。会社の維持・成長に貢献する利益のところで述べた、「需要者と供給者の双方が『経済的に』満足した』結果は生じていないのです。今回のケースでは押し込み販売を引き受けた相手方は、子会社という位置付けですから、キチンと連結決算されていれば、相殺されるようなものですが、そうはなっておらず、さらにその子会社が海外法人でもあり、まさに国際的な複雑な取引形態の中に組み込まれていたのです。

会社を毀損する見せかけの利益の創出に関わった人達の心境は如何に

上記のような対応をしていた事業部門では、最終的にどのようにケリをつけようとしていたのかわからないのですが、上司の指示に逆らえない風土と言われる中、心苦しい毎日を送っていた人も多くいたでしょう。
不必要な部品の押し込みに基づく見せかけの利益については、いつかは部品が使われるだろう、最後はなんとかなるだろうという期待、また、完成品に使用された部品に関わる見せかけの利益については、完成品が販売されれば、期間対応の原則違反という点は残るものの、いずれ完成品が第三者に販売されて、経緯も霧散するだろう、そんな淡い期待を持っていたのかも知れません。しかし、もともと高い経済成長が見込めない昨今では、いずれの期待も本当に淡いものとなったのでした。

会社を毀損する見せかけの利益の影響

見せかけの利益を計上することにより、会社を毀損する損失はどのようなものがあるのでしょう。
まず、不適切な会計処理と認定されれば、通常の経済活動をしていれば支払わなくともよい課徴金を科せられます。
また、国内外からの株価下落による集団訴訟が発生すれば、窓口的・法律的には、法務部が対応するのでしょうが、その対応に際して具体的には、事業部門への資料提出要求など、本来であれば事業活動に注入し得る従業員の時間とエネルギーを使わざるを得なくなり、見えざる負の影響を与えるのは必至なのです。仮に最終的に、訴訟で見せかけの利益に関わった者の私的財産から会社への賠償が実現されたとしても、訴訟対応などで費消された会社の人的・物的損失は戻ることはありません。
仮に今回の事例のように、トップから強烈な指示なりプレッシャーを受けて、意に染まぬ仕事をやってしまった部長級の人などの実務者が、社内的に懲戒処分などを受ければ、その人達のモチベーションは下かるでしょう。これも会社の将来の事業活力を毀損することになります。
更に、役員や従業員の報酬について成果主義を採用している場合を考えてみますと、会社を毀損する見せかけの利益が、通常の利益に見えていた期間に、見せかけの利益を根拠に業績の評価が行われ、報酬や賞与などが支払われていれば、それは受領した人達の手元に残ります。これも本来であれば会社から流失すべきものではないでしょう。これらの毀損は、第三者委員会の報告書の対象期間である過去五年間に限定されることではないのですが、見せかけの利益に基づいて支払われた報酬が返還されることはなさそうです。この部分も会社を毀損しているのですが。

貨物利用運送業においては、見せかけの利益の可能性を排除しよう

貨物利用運送業務とは、発送人の貨物運搬義務を果たさせ、荷受人が貨物を入手するベストな方法を提供することにあるのですから、今回の問題のような、工事進行基準による会計処理も発生しないでしょうし、部品の有償社給による売上げ計上・利益の前倒しの問題もないでしょう。しかし、貨物利用運送業に携わる皆さんは、社員や従業員に対しては「信ぜよ、されどチェックは怠るな」の心構えで日々の経営を遂行して頂き、仮に、経理的にボトムラインが悪化するような処理でも、長期的な視点から「会社の維持・成長に貢献する利益」の追求を目指して頂きたいと思います。学生の理屈だ、現実はもっと厳しいという声も聞こえてきそうですが、一つだけ皆さんの頭の片隅に残して欲しいことがあります。今回の事件では刑事訴追はないだろうという報道と、あるだろうという報道が、相半ばしているように思えます。1500億円以上の利益の嵩上げをしていたけれども、国策と言われている原子力事業を担っている会社の役員は、刑事訴追されないかも知れませんが、その30分の1以下の50億円の粉飾で刑務所に入った人もいると事実です。

貨物利用事業者が利益率の目標を設定する場合、投資家の視点からの利益率に引きずられないように注意しよう

日本通運の利益率が、ヤマトホールディングのそれに及ばない、と日経新聞電子版にてふれられていました。投資家の目から見れば、会社全体の利益率や配当性向が主な関心事となるでしょう。そして企業トップは、投資家の視点を重視する必要があるでしょう。しかし、貨物利用運送業務に携わる皆さんが、事業の計画策定の為に、自社の利益率の評価をした上で、ターゲットとすべき会社を選定する場合、その会社の具体的な事業内容を精査する必要があります。同じ事業内容の利益率になっているかということを検討する必要があります。アップルーツーアップルで行う必要があるのです。他社と競業されている実運送事業の皆さんには、経験的に認識されていて言わずもがなではあるでしょうが。

前回に登場してもらっているヤマトホールディングのアニュアルレポートを一覧してみますと、小口貨物輸送サービスであるデリバリー事業は、同社の全売り上げの四分の三以上を占めています。また、海外への展開があまりはっきりしません。一方、日本通運に関しては、セグメント別の実績値を見てみますと、ヤマトホールディングでいうところのデリバリー事業と簡単に比較し得るようにはなっていません。もし日本通運にても、デリバリー事業の利益率が一目瞭然であるならば、それとヤマトホールディングのものを比較して、その業務効率を論じるのは意味があると思います。しかし、日本通運では、自社のエレベーターの中にも掲げていたポスターにあるように、美術品の運送など、非常に特殊な運搬も、事業の一環としてやっています。宅配便のように頻繁に、美術品の運搬が発生するかは疑問ですし、代替品の存在しない美術品の運搬には、そのノウハウの蓄積も必要でその為の人員確保も継続的に必要でしょう。しかし、美術品の運送のような他社には真似ができない事業も、その為に全体の利益率が下がったとしてもやっていくというのが事業方針であれば、そのことも含めて利益率を評価すべきなのです。美術品の運送に限らず、日本通運では、プラント工事などの重量品建設関連業務も行っています。海外にも大きく事業展開をしています。それらを事業の一環としてやっていく限り、結果的には、宅配便のような利益率を出せないかも知れません。事業内容のミックスによって、全社の利益率も異なってくるということです。こうして見てきますと、日本通運がヤマトホールディングと同じレベルの利益率を追い求めることが、はたして正しいのかどうか判然としません。

少なくとも、利用運送事業や実運送事業など、実業に携わる人が目標とすべき利益率は、投資家が関心をよせる利益率とは当然異なってきます。利益率の評価をしたり、目標を設定する場合、投資家の視点からの利益率に引きずられてはなりません。間違った目標を設定し、それに向かって人的・物的資源を投入することだけは避けなければならないでしょう。

しがらみとグローバリゼーション

日本通運の成長力復活に寄与した「しがらみを断つ」ことと、昨今のグローバリゼーションとについて、少し考えてみましょう。

6月26日の日経新聞電子版の記事では、日本通運よりも利益率の高い企業としてヤマトホールディングがあげられていました。ヤマトホールディングの16年3月決算予想での売上高営業利益率は、「しがらみを断」った日本通運よりも高い5%前後を見込んでいるとのことでした。この両社を、「しがらみ」という観点から比較してみましょう。

<h2>日本通運について</h2>

二つの会社のホームページで役員の経歴を見てみます。まず日本通運ですが、現在の会長、社長、副社長三人の計五人は、すべて日本通運に入社して現在のポジションについています。同社の幹部になった人を数年間にわたって調べたわけではないのですが、ここ数年は日本通運以外の会社から日本通運に移って幹部になった人がいないとしておきます。その前提でお話しますと、日本通運に入社し、若い頃から物流業界に長い間身を浸していると、仕事の上で、それなりにいろいろな関係ができるでしょう、個人的な関係も出来てくるでしょう。いわゆるしがらみも、本人の意図如何に拘らず、醸成されていたのではないでしょうか?更に、日本通運は1937年の「日本通運株式会社法」に基づく国策会社として発足しているというのも関係があるかも知れません。

<h3>ヤマトホールディングの社長について</h3>

次にヤマトホールディングについてです。少し古いのですが、2013年6月3日のDOL特別レポートに、2011年にヤマトホールディングの代表取締役社長に就任した木川氏の「常時革新の秘密を聞く」という趣旨でのインタビュー記事があります。それによると、木川社長(当時)は、2005年にみずほコーポレート銀行(当時)の常務取締役から、ヤマトホールディングの常務取締役として移籍し、非常に規制の強い金融業から、基本的に規制の束縛から解放された運輸業に移って自由な競争ができると感じていたようです。「自分がやりたいと考える戦略を具体的に前に進めることができるということは、銀行から来た人間から言えば開放感があります」と述べています。 金融業界から転職した木川氏は、物流業界でのしがらみには無縁であったろうし、仮にあったとしても、金融界からの転職ということを見ると、どちらかというと、金融業界での優位な立場からのしがらみであったように想像できます。あくまでも仮にあったとしてもです。インタビューの中では、創業者であり、路線事業という新しい業態に日本で始めてチャレンジしたり、宅急便事業を始めたりした、創業者とそれに続く先輩社長の行動原理をヤマトグループの変化し続ける原動力として賞賛していますが、2008年のリーマンショックの年に、初めて宅急便の取り扱い個数が前年割れをした危機を乗り越えたのは、社長就任前からの同氏の活躍に負うところも多々あったと思われます。社長就任の二年間と就任中の四年間は、2014年3月期の4.6%を除き、全ての期間で5%以上の営業利益率を維持しています。「自分がやりたいと考える戦略を具体的に前に進める」ためには、しがらみを持たない人の方が、やりやすいポジションにいる、と言えるでしょう。尚、2015年4月、社長はヤマトの生え抜きの人が社長になり、木川氏は会長になっています。

<h4>グローバリゼーションの環境下での貨物利用運送業務の拡大の可能性</h4>

日本通運のしがらみ断ちとは、むしろ物流業界に押し寄せてきたグローバリゼーションの波への対抗上から、やむを得ぬものであったように思われます。しがらみは、狭い領域内で通用しても、広い範囲では経済合理性が優先し、いわゆるしがらみなしのビジネスライクな付き合いかたをしなければ、競争原理から振り落とされる危機感があったのではないでしょうか? そこで大手物流会社とはしがらみを持たない、貨物利用運送業務従事者にとっては、日本通運のような大手物流会社の組織変更により、利用運送業務の拡大を期待することは、前回にも述べましたように困難でしょうが、グローバリゼーションという環境下では、しがらみなしのビジネスライクな関係で、業務を遂行していけるという事ですから、ある意味では、ビジネスチャンスが広がると言えるかも知れません。それは、これまでは狭い領域内(例えばしがらみ)を通してしか得られなかったビジネスに必須の情報の多くが、昨今ではインターネットを通じて、努力と時間を惜しまなければ入手できるようになっています。その情報の範囲も広がってきて、ビジネスチャンスを捕まえられる可能性が高まってきているのではないでしょうか? 上げたり下げたりの話しになってしまいましたが、小さくても、開いたしがらみの隙間に手を差し込み、関連情報取得によりそれを広げ、更に知恵をまぶして、しがらみに大きな穴を開けて、ビジネスチャンスを広げるていけないでしょうか。むしろ、しがらみが通用しないグローバリゼーションの環境下で、ロジスティクスのベストマッチを提供できる貨物利用運送業務を拡大するチャンスがあるとも言えそうです。

日本通運の、陸海空の垣根を越えた営業が、貨物利用運送業者に与える影響

前回7月3日の記事での内容を一部繰り返します。すなわち、日本通運が23年ぶりに最高益を更新し、成長力を取り戻したと評価されているのは、3PL業務を自社に遂行し、「陸海空の垣根をこえた営業」を実施できたことによるが、内容的には、しがらみを断ち切った組織変更を超えるものではなさそうである、と。今回はその組織変更が、貨物利用運送業や実運送業に携わっている皆さんにどのような影響があるのかについて、考えてみましょう。

利用運送業や実運送業に携わっておられる皆さんは、既に日々の業務遂行から、肌で感じられているとは思うのですが、これはどうしてもネガティブな影響が出てくると見ざるを得ません。

6月26日付けの日経新聞電子版によれば、「13年9月に営業・事務系社員を対象に8年ぶりの希望退職を募集」して、それにより、「764人が会社を去」ったということですが、これは、これまで陸海空それぞれの縦割りされていたと想像される営業部の果たしてきた機能を、横串をさした横断的な組織が担うことになり、従前であれば、大手物流会社の業務領域の外枠に存在し得た貨物利用運送業務が、大手運送会社の中に組織的に取り込まれたことを意味するのです。つまり、貨物利用運送業者のプレーイングフィールドに、これら大手物流会社自身が、乗り込んできたということです。

「トラック台数も減らして外注に切り替え」られることにより、大手物流会社が減らしたトラック台数分の実運送業務は、系列化されている事業者に流れなければ、第三者である実運送業者に回ってくる可能性もあるでしょうけれど、これとても、大手物流会社の実運送業務関係者の固定費などが、割高であるとの判断に基づくものでしょう。これは、日経新聞電子版にもありますように、日本通運について「国内物流が大半を占める単独売上高に対する労務人件費の比率は、前期で23.4% と13年3月期に比べ、1.6ポイントさがった。今期はさらに22%台にさがる」 というのですから、 間違いがなさそうです。それゆえ、第三者実運送業者に回ってくるとしても、その仕事の単価は、厳しいものになるでしょう。

大手物流会社の組織変更により、その活動領域が、従前の貨物利用運送業者の活動領域までカバーし始め、大手物流会社の傘下の外枠で活躍している貨物利用運送業者の出番が少なくなっていくのは確かなようです。

日本通運が成長力を取り戻したのは、他社へではなく、自社への3PL業務遂行の結果

6月26日の日経新聞電子版に「会社研究 取り戻した成長力(3)日本通運 国内物流、しがらみ断ち復活」という記事がアップされていました。この記事によりますと、かねて「お荷物」とされてきた国内物流の採算改善により、日本通運の「2015年3月期の連結経常利益が、595億円と23年ぶりに最高益を更新、今期も増益を見込」んでいるということです。その原因は、「陸海空の垣根をこえた営業」にあるとも。

「物流のデパートである」日本通運にとって、「陸海空の垣根をこえた営業」は、記事も触れているように、当然のことと思われます。しかし、「しがらみ」によって、「陸海空の事業部が地域ごとに支店を構え」、「顧客の窓口も分かれてい」て、「人事交流もほとんどなかった」ため、簡単ではなかったということです。「それを昨年5月に九州、 同10月に関西で統合。今年5月には関東も続いた」結果としての、最高益を更新しての「快走」ということのようです。

もともと日本通運は自社の提供するサービスとして3PL(サードパーティ・ロジスティックス)を掲げています。同社のホームページでの3PLの定義として、「物流業務のアウトソーシングを前提として物流改革を提案・実現し・・」とありますが、今回の同社の「快走」は、自社に対して(アウトソーシングを前提にしないで)物流改革を実現した、とも言うことが出来るように思えます。

しかし、最高益の更新として挙げられている記事の内容を見れば、①地域ごとの支店の統合、②顧客の窓口の統合、③人事交流の実現、といった、通常の会社の組織変更としか言えない要素が有るだけで、日本通運という一大手「物流」会社の、社内組織の「改革」により、「物流改革」がなされたに過ぎない、という厳しい見方も可能なのかも知れません。①、②、③の内容を「しがらみを断ちきっ」て実行したということは、それなりに物流業界においては大変といえば大変なのでしょう。しかし、組織変更を超越した「改革」が、少なくとも記事からは見えてこず、「物流改革」と素直に呼べるものなのかどうかは、なかなか判じがたいのです。

確かに、「しがらみ」の多い国内物流業界において、これを断ち切ることは、「改革的」なのかも知れないのですが、外資系物流会社によるグローバルなロジスティクスが、日本国内物流業界にも敷衍してきて、それが大手の物流会社にも影響を与え始め、その対抗上の処置に取ったに過ぎないとみることも可能でしょう。日経新聞の電子版では、日本通運の今期見込みの219億円の営業利益と、2.7%の連結営業利益率に触れたあとに、「ただし胸を張れる利益率ではない。物流大手では16年3月期予想で5%前後のヤマトホールディングス、近鉄エクスプレスに見劣りし、自己資本比率(ROE)でも後じんを拝する。欧米大手の背中はさらに遠い。」とあり、先手を打った結果としての「快走」ということではなさそうです。

纏めますと、日本通運が23年ぶりに最高益を更新し、成長力を取り戻したと評価されているのは、3PL業務を、他社ではなく、他ならぬ自社に適用し「陸海空の垣根をこえた営業」を実施できたことにあり、内容的には組織改革を超えるものではなさそうです。

11兆円超の消費者向け電子商取引市場規模(平成25年度)には、利用運送・実運送が発生しない「情報通信業」も含まれている

前回の6月19日の記事では、2013年度に11兆円を越えたとされる、消費者向け電子商取引の市場規模の中に、利用運送や実運送の業務の発生という観点からは、注意すべき業種としてサービス業を取り上げました。

今回は、前回と同じ観点から「情報通信業」を取り上げますが、前回記事の注1の尚書きでも述べましたように、平成27年5月29日付けで、『平成26年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書』がウェブページにアップされ、2014年度の国内消費者向け電子商取引の市場規模が12.8兆円と発表されておりますが、本記事でも前回記事と同様に、本ウェブページの5月22日以降の公開記事からの一貫性を保つため、2013年度の市場規模をベースに、以下述べていきたいと思います。

2013年度に関する報告書(以下単に「経産省報告書」と呼びます)では、この業種の中に、「通信、放送、情報サービス、インターネット付随サービス、映像・音声・文字情報製作業」が含まれております(経産省報告書57ページ)。この中では「消費者向け電子商取引(BtoC-EC)市場規模の業種別内訳」には、情報通信業全体で2兆6970億円の市場規模とされていますが、これは物販系の電子商取引をも含んだ数値です。ここでは、物品の利用運送や実運送が発生するとは思えないアイテムのみの市場を割り出すために、「経産省報告書」の「情報通信業」に関する市場動向でも触れられている(71ページ)総務省情報流通振興課により、平成25年8月9日付けで発行されております「モバイルコンテンツの産業構造実態に関する調査報告」の別添(以下単に「総務省調査結果別添」と呼びます。別添の日付は平成25年7月)をみてみます。

総務省調査結果別添では、調査の対象として取り上げている市場は、フィーチャーフォン市場とスマートフォン市場とに限定されてはいますが(パソコンやタブレットによるものは含まれていないという意味)、次のようなものが掲載されています(総務省調査結果別添3ページ、4ページ)。すなわち:
着信メロディー、着うた、モバイルゲーム、装飾メール、電子書籍、リングバックトーン、占い、待ち受け、着せ替え、天気/ニュース、交通情報、生活情報、ソーシャルゲーム、動画専門、芸能エンターテイメント、メディア・情報、その他コンテンツ
であります。このように具体的にモバイルコンテンツのアイテムをみてみますと、いずれも利用運送や実運送が発生しそうにありません。

では、金額面から見たモバイルコンテンツの市場規模はどうなっているのでしょう。結論からいいますと、「・・平成24年のフィーチャーフォン市場は4793億円となり、前年比で26.7%減となった。スマートフォン等市場は3717億円の361.2%の増となった。・・」となっています。出典は下の注を参照してください。この合算額8510(4793+3717)億円は、経産省報告書の中の「2012年のモバイルコンテンツ市場規模は8,510億円(前年比116%)であった(※フィーチャーフォン、スマートフォン合計)」との記述の金額と一致しておりますので、パソコンやタブレットによるコンテンツ市場は除かれており、且つ、2012年度の数値ではありますが、2012年度のモバイルコンテンツ市場は8510億円となります。では2013年度の市場規模はどうなっているのでしょうか?2013年度の数値が公表されていないので、2013年度も同程度との仮定が成り立つでしょうか?

「モバイル」コンテンツ市場においては、成長するスマートフォン市場と、縮小するフィーチャーフォン市場が混在していますが、「デジタル」コンテンツ市場としては、モバイルコンテンツ市場に加わえ、パソコンやタブレットによって購入されるデジタルコンテンツもあります。ここまで、2013年度消費者向け電子商取引の市場の一部として含まれている「情報通信業」の中に、どの程度、利用運送や実運送が発生しないものが含まれているかを、割り出そうとしてきましたが、上記に述べてきましたように、2012年のデジタルコンテンツ市場だけで8510億円あり、これに加え、具体的な規模が記載されていない、パソコンやタブレットによる電子商取引もあるわけですから、「2013年度」においても、少なくとも8510億円程度は、利用運送や実運送が発生しない「デジタルコンテンツ市場規模」と推定することは許されるのではないでしょうか。

前回の記事と今回の記事をまとめますと、11兆円を超える、と報告されている2013年度の消費者向け電子商取引のうち、前回6月19日にお話したサービス業の市場規模1兆9920億円、今回の情報通信業のうち少なくとも8510億円(推定市場規模)とを合算した2兆8430億円、すなわち11兆1660億円の実に四分の一にあたる25.5%が、実は利用運送業にも実運送業にも関係のない市場であるということが言えるのではないでしょうか。

以上、「清水建設が・・大型設備運営に本格参入する」という日経新聞電子版の記事に端を発し、不動産事業者が本格参入する動機として、インターネット通販事業の拡大が取り上げられ、そのネット通販が含まれる「消費者向け電子商取引の市場規模」が2013年度において11兆円を超えていると報道されていることについて、その根拠となっている(と思われる)経済産業省の報告書を参照しながら、「利用運送や実運送に携わる皆さんにとっての」市場規模はどの程度なのかを、6回にわたってお話してきました。

経済誌はおおむね、経済の肯定的な側面を強調して、景気を牽引して行こうとする傾向があり、これ自体は、いいことなのですが、報道される数値については、そのような経済紙としての性向を認識する必要があるでしょう。もちろんネット通販の市場規模は今後も拡大していくと思われます。それはいろいろな関連事業の状況から間違いはなさそうなのですが、利用運送や実運送に携わっている皆さん、これから携わろうとする皆さん、現在携わっていて、更なる投資を考えられている皆さんには、「自分たちの事業にとっての」市場規模を、公表されている数値から割り出して、より確度の高い事業予測なり、事業計画の策定をしていただきたいと願い、この記事がその際の参考になればと念じております。

(注)「総務省調査結果別添」の2ページ、”モバイルコンテンツ及びモバイルコマースの市場規模の推移”のコメント部分

11兆円超の消費者向け電子商取引市場規模(平成25年度)には、利用運送や実運送が発生しないサービス業が含まれている。

前回の6月11日公開の記事を除き、これまで、大型物流設備とネット通販事業の関連性について注意すべき点のお話をして参りました。

今回は、国内で11兆円を越えたと言われる消費者向け電子商取引の市場規模について、その中に含まれてはいるものの、利用運送や実運送が発生しそうにない、又は発生してもごくまれであろうと思われる業種を取り上げてみましょう。そしてその業種の電子商取引市場の規模を金額面から見てみましょう。尚、以下はすべて消費者向け電子商取引に関するものであって、企業間電子商取引の市場は含まないものとします。

5月22日公開の記事で、「13年には消費者向け電子商取引の国内市場は11兆円を越えた」と報道されていることをご紹介しました(5月18日付け日経新聞電子版)。日経新聞電子版の記事は、経産省の報告書(注1)をその根拠としていると思われますが、そうだとすれば、その報告書(以下「経産省報告書」と称します)に記載されている11兆円を超える市場規模の対象業種として、小売業、サービス業、建設業、製造業、情報通信業、運輸業、金融業、その他、の八つが挙げられています(報告書57ページ)。この中で「建設業」については、経産省報告書60ページでの市場規模を示す欄がN.A.(Not Available)となっており、具体的な数値が示されておりませんので、実際にはこの建設業(注2)を除いた、七分類での合計が11兆円を越える市場規模ということになります。

この七つの業種のうち、利用運送や実運送の業務の発生という観点からは、注意すべき業種がいくつかあります。今回はまずサービス業について見てみましょう。

サービス業の中には、小分類として、宿泊・旅行業、飲食業、娯楽業が含まれています。宿泊・旅行業について、パソコン、タブレット、スマートフォン、フィーチャーフォンなどにより、インターネットを用いて、鉄道などの切符を予約するような電子取引が成立するケースを想定してみますと、これらの支払いにクレジットカードを使用すると、切符を自宅に送付してもらうような特別な手配をしない限り、ほとんど利用運送も実運送も発生しません。電子取引成立後は、実際に乗車する駅でチケットを発行してもらうことができるからです。

又、高速バスなどのチケットの場合も、インターネットを用いて予約した後、自分のプリンターでサイト運用者から送られてくる、予約確認のメールをプリントしてその印刷物を乗車時に提示するだけで済んでしまいます。プリンターが無くとも、コンビニでの支払いを選択して、最寄りのコンビニまで出向き、支払いをすると、コンビニでチケットが発行されその場で受け取ることができるようになっています。

日本の消費者に関して、電子商取引を利用する理由として、一位の「実店舗で買うよりも価格が安いから(64.1%)」に次いで、「店舗までの移動時間、営業時間を気にせず買い物ができるから(63.5%)」となっている(経産省報告書103ページ)ことからみても、ほとんど利用運送や実運送が発生していないのではないでしょうか。

次に、映画館などの娯楽業などについてもほとんど、利用運送や実運送が発生するようには思えません。余談になりますが、通信を用いた消費者との取引の先進国であったアメリカでは、30年以上前、1983年当時、例えばミュージカル『コーラス・ライン』のチケットを取るのに、電話で予約し(まだインターネットは個人レベルではありませんでした)、クレジット番号を伝えて、そのままシューベルト劇場(随分前に閉館しましたが)に行き、ピクチャーID(写真付身分証明書)を見せると、その場でチケットが手渡され、劇場に入れました。この場合はパソコンなどでの電子商取引ではなく、電話での通信販売となるのでしょうが、このような形態の取引が、現在日本でもインターネットの普及で成立が可能になっているのです。

又、この宿泊・旅行業及び飲食業に関しては、「宿泊・旅行業・飲食業が2012年に対して2013年は122.1%成長している」こと、及び、宿泊・旅行業、飲食業、娯楽業のすべてを含んだサービス業に関して、「サービス系の電子商取引での購入に関する利用品目では、「各種チケット」が61.7%、次に「旅行サービス」の58.1%となっている」ことも付記しておきます。

このように、宿泊・旅行業、娯楽業などのサービス業についてはほとんどの場合、利用運送や実運送の発生が期待できません。上記の宿泊・旅行業と娯楽業とを合わせた、サービス業の市場規模として約2兆円が、国内市場11兆円の中に含まれております。これは全体の17.8%にもなります。市場規模の数値の詳細は下の(注3)欄に記載しておきます。

念の為、書き加えておきますと、電子取引の市場規模とは、電子取引「金額」を意味します。又、経産省の報告書での「EC」すなわちElectric Commerceである電子取引の定義では、「決済がコンピュータネットワークシステム上で行われることを要件とはしておらず、決済手段は問わない」となっています(32ページ)。

いくら消費者向け電子商取引の市場規模が11兆円をこえたからと言っても、このサービス業の様に、ほとんど利用運送なり、実運送が発生しそうにないものも多く含まれている事に、利用運送業や実運送業に携わる皆さん、又は消費者向け電子商取引の市場の拡大を念頭に、今後関わっていこうとされる皆さんに注意を促していただければと思います。

(注1)『平成25年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書』
経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 (発表日:平成26年8月26日)
尚、経済産業省から、平成27年5月29日付けで、平成26年度の国内Btoc-EC市場、すなわち消費者向け電子商取引の市場規模を12.8兆円とする調査報告書がアップされましたが、本ホームページの5月22日公開記事からの一貫性を保つため、本記事は、平成25年度の市場規模をベースにしております。
(注2)経産省報告書60ページの「市場規模の業種別内訳」を示す表では「建築業」と表現されていますが、同57ページの「市場規模推計の対象業種」のところに示されている「建設業」と同じものを示すと解釈していいでしょう。
(注3)宿泊・旅行業と飲食業を合わせた市場規模として1兆8260億円で、全体の市場規模である11兆1660億円の16.4%を占めます。又、娯楽業の市場規模は1660億円で全体の1.5%を占めています。これら宿泊・旅行業と娯楽業を合わせたサービス業の市場規模として1兆9920億円となり、消費者向け電子商取引市場全体の11兆1660億円の17.8%になります(以上すべて2013年度のもの)。

大型物流施設がネット通販事業に向いている側面もある。

5月22日と31日、及び6月5日掲載の記事では、大型物流設備とネット通販事業との関連性の否定的な側面のお話をしましたが、倉庫自体に関連しては、両者の関連性の肯定的な側面のお話をここでして、そのギャップを少し埋めましょう。

それは、大手による大型物流設備と言うからには、当然、帳票類に関しては、倉庫管理システムなどで呼ばれるウェアハウス・マネジメント・システム(WMS注1)が採用されているでしょう。倉庫管理システムには、会計システムや販売管理システムとも連動しているものもあるのですが、ここではあまり範囲を広げないで、基本的な機能を念頭にお話します。また、自動入・出庫システム(ASRS注2)をも導入しているケースもあるでしょう。ここで言う自動入・出庫システムとは、帳票類などに関するものに加え、特に倉庫内における物理的な荷捌きのことを念頭においています。

ネット通販事業に関連する商品については、消費者がパソコン、タブレット、スマートフォンなどで、自分のオーダーした商品が今、どこにあるのかをトレースできるようになっている場合が多いのですが、自動入・出庫システムなどの採用により、オーダートレースが容易になっています。

これから利用運送業や実運送業に携わろうとする皆さんのために、自動入・出庫システムの一例をあげます。製品をストックするための、ある程度の高さのラックが数十本以上設置されている倉庫に、通常カートが荷捌きをするスペースであるラックとラックの間に、自由に高さを変えられるクレーンが通れるようになっていて、クレーンのオペレーターが入・出庫依頼票のデータをそのシステムにインプットすると、クレーンそのものが自動的に商品を入庫すべきスペースまで、または出庫すべき商品がストックされているスペースにまで、オペレーターの席を誘導します。商品の大きさによっては、立体倉庫、いわゆるヴァーティカル・カルーセルが用いられている場合もあるでしょう。因みに、欧州では、これらの大掛かりなシステムは遅くとも1993年には採用されていました。

上記は物理的な入・出庫の動きですが、次にデータの面から見てみます。オペレーターが商品をピックアップして、タッチパネル上で操作すると同時に、その情報が管理センターのコンピューターに自動的にインプットされ、ある商品がラックにあるのか、荷捌き中なのか、車に積まれたのかなどがリアルタイムで分かる様になっています。この様にして、ネット通販を利用した消費者が、自分のオーダーした商品が今どこにあるのかを、自分のパソコン、タブレット、スマートフォン等の端末から知ることができるようになっているのです。

ネット通販の拡大をにらんでの、新規物流施設を建設する際に、自動入・出庫システムが採用されていれば、入・出庫頻度の高い事業に対応しやすいことは間違いなく、大型物流施設の運用者の観点からは、ネット通販で扱われる多くの種類の商品を探し出す時間が最小限になり、注文者の観点からは、自分のオーダーした商品が今どこにあるのかを、自分の端末から知ることができるようになっているのです。これなどは大型物流施設とネット通販事業の親和性を物語るものと言えそうです。このような意味で、大型施設がネット通販事業に向いている側面もあります。

(注1)Warehouse Management System
(注2)Automated Storage and Retrieval System:ネット通販で扱う多品種少量の商品のピッキング、配送、保管など、保管・管理をするシステムであるが、多品種・大量の部品を、仕分け(kitting)、ピッキングするなどの機能が追加されて、製造中・製造後の保管・管理をする製造業にも用いられている。

施設が大型であることによる利用形態の多様性

前回の5月31日の記事では、大型物流施設の利用業界の多様性について述べました。大型施設の運用者は、その顧客層として、消費者向け電子商取引事業者(ネット通販事業者などを含む)のみではなく、企業間電子商取引を行う事業者も含むことができます。利用業界そのものが多様性に富んでいるということです。

もともと大型物流施設を運用したり、新規に供給したりできる建設・不動産業界の「大手」は、事業規模の大きさ自体から、企業間電子商取引のロジスティクス/サプライチェーンに既に参画しているか、又は、参画しやすい立場にありますが、大型施設の延べ床面積の大きさからも企業間電子商取引に絡んでいきやすいのです。つまり、顧客となり得る業界の幅は広いのです。利用運送事業や実運送事業に携わる皆さんには、既に企業間電子商取引のロジスティクス/サプライチェーンに参画されていれば兎も角、ネット通販事業拡大のみに注目して大型物流施設の新規増設がなされていると考えるのは危険ということを認識して頂きたいのです。

このように前回は利用業界に注目したわけですが、今回は施設が大型であることそのものから導くことのできる、利用形態の多様性についてみてみましょう。

大型物流施設の運用者は、大型であるが故に、入・出庫頻度は低いけれども多くの保管スペースを必要とする事業者に物流施設を貸し出すことも可能です。

まず、入・出庫の頻度について考えてみましょう。入・出庫の頻度が高くない顧客からの預かり製品は、バースから遠い倉庫スペースに割り当てればいいでしょう。反対に、入・出庫の頻度が高い顧客には、バースに近いスペースを割り当てます。一般的に言って、顧客の入・出庫の頻度差は、バージ近くのスペースをどの顧客に割り当てるかなどの、保管場所の工夫で対処できるのです。

次に、多くの保管スペースを必要とする一例をあげますと、産業関連機器・精密機械などの、中・大型機器やそのサービス部品に携わる事業者を顧客とする場合です。因みに、前回にも引用しました経済産業省の報告書(51ページ)では、次の様に説明されています。
(引用開始)「産業関連機器・精密機器」は市場の拡大に加えて、各企業における効率化を目的としたIT活用が拡大しているが、特に医療機器業界では積極的な取り組みが見られる。厚生労働省の薬事工業生産動態統計によれば、わが国の医療機器市場規模は・・・平成16年以降増加し、2兆円超の規模で推移、平成23年は約2.4兆円となり、過去最大の市場規模となった。(引用終了)

物流施設が大型であればあるほど、施設運用者は、消費者向けの小型の商品だけを扱う事業者だけではなく、産業関連機器など中・大型の製品を取り扱う事業者にまで、その顧客層の幅を広げることができます。産業関連機器などは企業間電子商取引であって、ネット通販事業ではありません。大型物流施設はなにもネット通販事業者に限定される訳ではないのです。

顧客層の多様性を維持するには、大型物流施設運用者において、いろいろな業界のニーズを満たすことが前提ですが、仮に、比較的小型の商品を取り扱う消費者向けの電子商取引の国内市場の拡大を見込んで、新規に大型物流施設を増設したけれど、思うように顧客を獲得できなくとも、この様に企業間取引に転用することが可能なのです。

利用運送事業や実運送事業に携わる皆さんが、ネット通販事業の拡大をベースに、新規参入や新規投資を考慮するのであれば、風が吹いても、桶屋は儲からないこともあるので、ネット通販事業そのものの事業の規模やその成長性を十分見極める必要があるでしょう。もちろん吹いている風が、何の兆候を示しているのかを、関連情報を収集しながら、事業の舵取りをする必要があることは論を待ちませんが。

大型物流施設の利用業界の多様性に留意しよう

前回、建設・不動産事業者が大型施設の新規建設物件の供給を拡大する「動機」として、ネット通販の拡大がその念頭にあったとしても、建設物件の供給拡大が、ネット通販事業の拡大そのものを裏打ちするものではないことを述べました。

今回は、大型施設の新規建設物件の供給拡大とネット通販事業拡大の間にある、もう一つのギャップについて述べます。それは、建設・不動産事業者の大型物流施設の「利用業界の多様性」です。

大型物流施設の運用者の目から見れば、実運送が短時間の間に発生する頻度の高いネット通販事業者も、運送がそれほど頻繁に発生しない事業者も、施設賃借人である顧客としてはなんら差異はありません。ネット通販事業の拡大を見込んで、大型物流施設の供給面積を拡大した後に、その見込みがはずれたとしても、大型施設の持つ「利用業界の多様性」が、建設・不動産事業者による新規建設の一つの安全弁となっています。

大型物流施設の運用者にとっての市場は、前回引用しました日経電子版(5月18日付)の記事に見られる様に11兆円を越える「消費者向け電子商取引の国内市場」(2013年度)に加え、186兆円の企業間電子商取引市場があります。これはインターネット技術を用いたコンピュータネットワークシステムを介しての商取引(狭義の企業間電子商取引)に限定したものであり、インターネット技術に限定せず、広くコンピュータネットワークシステムを介しての広義の企業間電子商取引については269兆円とされています(注)。
言い換えれば、大型物流施設の運用者は、運送頻度を問わず、顧客層としては、消費者向け電子商取引に携わる事業者(ネット通販事業者を含む)と、企業間電子商取引に携わる事業者の双方を対象にできるのです。特に後者の市場は、前者の20倍の規模があることは留意に値するでしょう。又、大型物流施設を運用したり、新規に供給したりできる建設・不動産業界「大手」は、企業間商取引のロジスティクス/サプライチェーンに既に参画しているか、又は、参画しやすい立場にあると言えることも見逃せません。
因みに、狭義の企業間電子商取引市場は2009年の131兆610億円から2013年の186兆3040億円へと年平均9.2%成長しています。又広義の企業間電子取引市場は2009年の204兆8550億円から2013年の269兆3750億円へと年平均7.1%と、消費者向け電子商取引ほどではありませんが、兎も角成長しています(注)。企業間商取引のロジスティックス/サプライチェーンに既に参画されている実運送業に携わっておられる事業者の方にとっては、兎も角いい傾向ではありますが、消費者向け電子商取引の拡大のみを見込んで自らの事業の見通しを策定される利用運送業や実運送業に携わっておられる皆さんには、大型物流施設の利用者の多様性に留意して頂きたいのです。

(注)『平成25年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書)』46ページ参照

大型物流施設の新規供給面積拡大は、必ずしもインターネット通販の拡大を裏打ちするものではない

先日、「清水建設が最大600億円をかけて首都圏に3拠点を整備し、物流施設運営に本格参入する」と報道されていました(5月18日日経電子版)。参入の動機はインターネット通信販売(以下「ネット通販」と略す)の拡大をにらんでのことのようです。清水建設に限らず、建設・不動産業界の「大型の物流施設の新規建設」に関して、「賃貸物件の供給面積」が2015年には、過去最高を更新する勢いを示すグラフも掲載されていました。

「建設・不動産大手により」、「新規建設物件の供給面積」が拡大されている傾向を、利用運送事業や実運送事業に携わる皆さんが、自身の事業の参考にされる場合、次の点を認識しておく必要があると思われます。

まず、新規物流施設の供給面積の拡大傾向は、建設・不動産業界等大手の投資の結果であって、ネット通販事業の規模の拡大傾向そのものを示すものではありません。「建設・不動産大手が都市部近郊に大型物流施設を相次ぎ建設する」動機そのものが、「ネット通販の拡大」ではあっても、新規物流施設の供給面積が、ネット通販事業の規模の拡大に直接繋がるものではないことに留意する必要があります。

利用運送事業や実運送事業に携わる皆さんが、もし、実運送が頻繁に発生するネット通販事業の拡大を見込んで、自らの事業の見通しをたてるならば、まず参考にすべき数値は、賃貸物件の新規「供給」面積ではなく、新規に「賃貸された」延べ床面積の実績値なのです。「13年には消費者向け電子商取引の国内市場は11兆円を越えた」ことは、利用運送事業や実運送事業に携わる皆さんの事業にとってはいいニュースでしょうし、昨年8月に経産省から出されている報告書(注)によれば、同市場は2009年の6兆6960億円から2013年の11兆1660億円へと4年間で年平均13.6%成長しておりますので、2014年以降の国内市場規模についても、明るい見通しを持てるでしょう。しかし、建設・不動産事業者の、将来に関する見通しと、賃貸施設を必要としている事業者(ネット通販事業者を含む)の見通しとは、ギャップがある可能性を見落としてはならないのです。

更に絞り込みましよう。もし(くどいようですが)ネット通販事業の拡大をベースに皆さんが事業の見込みを策定されるなら、新規に「賃貸された」延べ床面積のうち、ネット通販事業者が賃借人となっている延べ床面積が占める割合の照査が欠かせません。大型施設が、市場の拡大している医療機器など、中・大型機器のサービス部品などの保管に使用される可能性なども考えれば、新規に賃貸された延べ床面積には、ネット通販とは全く異なる事業者の賃借スペースも含まれていることも認識しておく必要があるでしょう。

上記二点より、大型施設の新規建設物件の供給を拡大する「動機」として、ネット通販事業の拡大見込みが、建設・不動産事業者の念頭にあったとしても、建設物件の供給拡大が、ネット通販事業そのものの拡大を裏打ちするものではないことを、利用運送事業や実運送事業に携わる皆さんに認識して頂ければと思います。

(注)『平成25年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書』
経済産業省 商務情報政策局 情報経済課

運送委託の手数料について

利用運送をキーワードにしてインターネットで検索してみると、まず出てくるのはピンハネ云々の記事だ。それもかなり多い。内容は仲立ちマージンの話が中心。四割もの手数料を取られていることがわかったりするという。
大手からの実運送を請け負う中小の企業としては、確かに大手のブランド力が引き出す物量は、中小実運送業者が太刀打ち出来るものではなさそうだが、だからと言って法外な仲立ちマージンに多くの実運送業者が泣かされているのは、いかがなものかとも思う。
あまり政治的な話になるのも若干躊躇するのであるが、数からすれば、大手利用運送業者よりも実運送業者の方が多いはず。東京都トラック協会や各都道府県のトラック協会等が全国レベルで協調し、利用運送業における、中間手数料の上限を法律で規制するような動きもできるのではなかろうか。そんな行動を取っているとわかれば、実運送業の仕事が回ってこないという心配を抱えることになるかもしれないが、個々の実運送事業者が活動するのではなく、協会等の別の組織の活動を下支えしていけばいいだろう。
利用運送そのものの歴史がそれほど古くはなく、業態が固まっていく段階で、いろいろ不都合も出てくるであろうが、利用運送業自体の業務の効率的改善とともに、それを支える実運送業者の継続的事業運営が併存しうる、運送業システムを積極的に構築していく必要があろう。

利用運送事業こそが物流業の全体最適を実現する

前回の「日本通運(日通)における社内体制の再編」のニュースは、大手運送事業者の社内リストラクチャリングとして報道されましたが、流通産業に携わる関係者にとっては、物流ニーズの変化に対する自社リソースの再配分と受け止めた方が多いと思われますし、それが正解です。しかしながら、このニュースは、ありとあらゆる分野の運送に携わる大手運送業者だけの問題ではないのは言うまでもありません。

最大手以外のプレーヤは利用運送事業を行わなくてはいけない

変化する事業環境に対応することは、経営幹部層の意思決定マターですが、市場環境の変化に対して最適解を求めて事業行動を変化させて対応することは、全社的な行動マターです。したがって、業界のトップ企業だけに関わることではなく、その影響は業界全体に波及し、各プレーヤの業界ポジションに多大な影響を及ぼします。特に、物流のような上流から下流まで一機通関していることが競争優位性に直結する業界では、その影響のスピードと規模は、IT社会の現代では非常に大きなものがあると言えるでしょう。だからこそ、最大手以外のプレーヤは利用運送事業を行わなくてはいけないのです。

利用運送事業は物流プロセスや流通チェーンの全体最適を求める

貨物利用運送事業は、従来は運送業界のなかにあって、営業に強みを持つ事業者が、実運送授業に対する営業と配達を分業する手段と、業界内で捉えられていました。あえて悪い言葉でいえば「ピンハネ」の手段と捉える人がいたことは一部の事実でしょう。しかしながら、21世紀における物流の最上流から末端の消費者までがスマートフォン(スマホ)に代表される情報端末を持つ時代では、物流プロセスと運送状況はデジタルデータによってコンピュータ管理され、いたずらに非効率的なシステムや不合理なプロセスは、一瞬にして付加価値と競争優位性を失います。ですから、もはや「利用運送を登録すれば、自社は動かなくてもピンハネできる」などというビジネスモデルは成り立たないのです。そうではなく、これからの利用運送事業は、物流プロセスや流通チェーンの全体最適を求めてポジショニングをしていくことが経営戦略マターになったといえるでしょう。

日本通運が組織改正。53年ぶり陸・海・空輸送を一本化

物流大手の日本通運が、本日5月1日付での組織改正を発表しました。これによると、「日通グループ経営計画2015-改革と躍進-」を大きく推し進めるために、社内組織を53年ぶりに抜本的改正を行うというものです。

日通は物流デコンストラクションの象徴

具体的には、陸海空のワンストップ体制を構築することにし、2014年5月から地域ブロックレベルでの組織改正を実施してきましたが、今回の発表は、さらに海運事業部と航空事業部を廃止し、代わりに海運事業支店と航空事業支店とを新設して陸上輸送部門に統合、営業本部、国内事業本部、国際事業本部、ネットワーク商品事業本部、管理本部であった5本部体制を、今後はグローバル営業戦略本部、海外事業本部、管理本部の3本部制とし各地域ブロックに集約して、陸海空ワンストップ体制構築を完了するとしています。
まず、グローバル営業戦略本部では、産業マーケティング部と事業開発部を新設し、商品開発やマーケティング機能を強化する。また、海外事業本部では、海外事業の強化のためグローバル・フォワーディング企画部、グローバル・ロジスティクス部を新規に開設するとしている。さらに従来からの各ブロック支店では、関東ブロックに営業開発第一部・第二部とロジスティクス開発部を新設して顧客のニーズに即応する現場体制を構築し、中部ブロックには、自動車関連事業者に特化するオートモーティブ・ロジスティクス支店を開設するとしています。さらに愛知県には、航空宇宙産業が集積するため、こういった各産業に対応する中部営業開発部も新設されます。

日通の組織改正は、社内体制の変更に止まらない利用運送の思想

今回の組織変更によって、例えば、航空輸送の顧客に対して、空港や倉庫間でのトラック輸送をワンストップで一体提供することが可能となるなど営業の効率化と収益機会の増加が見込まれます。このことは即ち、まさにこれまで触れてきた物流プロセス全体でのデコンストラクションが進行していることに他なりません。今回の事例は日本の物流最大手であるため、自社内のリソース再配分に映りますが、物流現場の効果ベースで観れば、物流手段の最適化であることはいうまでもありません。つまり、利用運送事業の思想の具現化なのです。

物流デコンストラクションにおける利用運送事業の革新

利用運送事業は、従来運送業の一形態として認識され、荷主が届け先へ配送する運送プロセスの中流において、実運送事業者に対する使者の機能を果たしてきました。しかしながら、IT革命の浸透による、いわゆる”中抜き”現象によって、ありとあらゆる業界において中間流通業者が不要な時代に突入していることは、これまでの記事でも指摘してきたところです。それでは、利用運送業はお役払いとなってしまうのでしょうか?

実運送手段のトラック、船舶、航空機には自ずと限界がある

運送業のおける利用運送事業は、上記の通り役割を終えつつあります。実運送手段であるトラックをはじめ、船舶、航空機の物量には数、量ともに自ずと限界があり、各々がこれまでも効率化の経営努力を行ってきたことによって、機会を活用する領域や二次利用にも限度があるからです。この物流効率追求の限界点まで到達した折に登場したのが、ITによる人力を超える効率化と高速化の波であり、循環社会での人知や知恵では対応しきれないキャパシティと進化スピードにより、この流れが加速することはあっても無くなることはもはやあり得ません。

運送業だけに限らない業界再編

このように業界全体で効率化の限界点に到達した場合、つぎに起こるのがバリューチェーンの再構築であり、脱落したプレーヤをリプレイスしながら既存プレーヤがその規模を拡大したり、破壊的な革新技術を持った新規プレーヤによって業界全体の時代がワンノッチ前に進みます。これは運送業だけに限ったことではなく、ありとあらゆるすべての業界で起こります。いわゆる業界再編です。業界再編の波のなかでは、レイヤーマスターやオー消すトレーター、マーケットメイカー、パーソナルエージェントといったバリューチェーンの再構成がおこなれますが、一般的な通例では市場リーダーによる業界標準確保を狙ったオーケストレーター化や、中小零細プレーヤによるレイヤーマスター化が起こります。

利用運送事業者が物流のマーケットメイカーになる

こういったデコンストラクションが進行する環境のなかで、利用運送事業はどうなるのでしょうか?ごく一般論としては、上記の事業再編業界の波のなかで、それぞれの競争ポジションに応じた地位の変動が起こりますが、利用運送の特異なところは、運送業にあって輸送手段を持っていないことです。したがって、利用運送事業者のなかからマーケットメイカーやオーケストレーターとして名乗りを上げるプレーヤの登場により、物流業界にまでバリューチェーン再構築の効果が波及するのです。

利用運送事業が運送業収益性のカギとなる理由

勘のいい方なら、ここまでお読みになってお気づきかもしれません。つまり、これまでお伝えしてきた、利用運送事業が21世紀型の運送業にとって何故重要なのかということのカギは、従来の運送業の常識の枠を越えるところにあるのです。

利用運送事業のカギは運送業の常識を越えたところにある

1990年代の後半になって、パソコンに代表される情報処理端末とインターネットの一般家庭への普及により、IT技術がすべての業界で事業の革新をもたらすと云われたIT革命が勃発しました。これによって、一見目立つところではIT関係の産業やネットビジネスの業界が新たに立ち上がっていますが、じつはありとあらゆるすべての業界でIT化あるいはIT導入は行われることになり、業務プロセスの効率化が果たされました。この業務プロセスの効率化こそがカギの本質です。すなわち、これまでの運送業では、基本的には「運ぶこと」のみが業務であったところ、あるいはせいぜい条件的に対応可能なタイムシフトや、車両運行効率の最適化といった経営改善であったところ、ITによる物流全体の最適化が業務支援システムの形態を伴って導入され、隣接する上流あるいは下流だけの取り込みでは十分な収益性を確保できないまでに効率化が求められるようになったのです。

経営努力を怠ってきた運送会社は淘汰された

すなわち、運送業が活動する流通というカテゴリのなかで、全体最適のプロセス革命が起こったため、お客様である荷主、または商品である荷物、あるいはサービス品質保証である管理部門の、これらのどの部分にも直接コミットしていない運送業は、そのバリューを劣化させ収益性を失っていくことになったのです。この20年ほどで取引先の顧客から単価の引き下げを要求され、コスト削減努力が追いつかず、あるいは日本のバブル経済崩壊後のデフレ経済を理由として経営努力を怠ってきた運送会社は、ことごとく淘汰される結果となりました。

利用運送事業による運送手段の最適運用が生き残りのカギ

しかし、運送業者さんのトラックが走らなければ、お客様の荷物がお届け先に届かないことも事実です。この末端の決め細やかなサービスを担っているのが、ハードで語られがちな物流業界のなかのソフトパワーなのです。このソフトパワーを最大限に発揮し、ルーティーンの業務に埋没することなく、収益の機会を求めて成長努力を続けた会社こそが、強い運送業として生き残っています。その生き残りのカギが利用運送事業による運送手段の最適運用というビジネスモデルであることは論を待たないでしょう。

物流運送ビジネスの成功は利用運送事業の理解がカギ

前回まで、利用運送事業の優位性について触れてきました。国土交通省をはじめ、利用運送事業について掲載している殆どの書籍・ネットを含めた各媒体では、利用運送の特異性に触れるに留まっており、優位性について掲載しているのは、当サイトのみなのが現状です。

利用運送事業とは第2種貨物利用運送事業の許可が基本

つまり、運送業における利用運送の特異性とは、実運送手段を持たなくていいということであり、その特徴とともにビジネスモデルについて語られ、場合によっては「ピンハネ」といった言葉で語られることによって尽くされている感すらありますが、実体はまったく異なるものなのです。すなわち、国がより強い規制で許可制を引いている第二種の方の貨物利用運送事業でピア・トゥ・ピア輸送を行うことこそが最重要であり、そこに運輸運送業界の中で持続性のある競争優位性を確立することが事業の存続可能性に貢献し、ひいては広く社会に運送業への信頼を向上させることに貢献するのです。

道をよく知っているは強みか?

20世紀までの運送事業においては「道をよく知っている」に代表される、地の利を活かした貨物輸送/旅客運送が特徴付けられ、それぞれの地域において運送業が発達をしていきましたが、経済が成長期から安定期に移行し、道路も高速道路/一般道を含めて非常に充実した整備が行き届き、さらにはIT技術の浸透によって初心者や初めて訪れるドライバーであっても、ベテランと同じように荷物を運ぶことができる時代となっています。つまり「道をよく知っている」ということは、もはや優位性ではないのです。

もはや第一種貨物利用運送事業登録でピンハネは古い

また、利用運送に目をつける多くの方は、実運送手段を確保しなくて良い特異性から、荷主と荷物を見つければピンハネができると儲け話を考えることが多いようです。また、普通トラックを走らせている一般貨物運送事業の方も、運送という作業を仕事としていることに事業ドメインを置いている事業者が多く、バリューチェーン上の仕入れフェーズやマーケティング段階に注力する事業者が少ないのが現状です。

第一種利用運送では模倣者が増えるだけという現実

しかしながら、上記でみたように、もはや地域に根ざした運送手段を確保することが競争優位性の確保に繋がらず、また荷主と荷物があれば運送手段は外注できると考えた場合、先行事例をみれば誰でもマネできる模倣者があふれ、反って業界環境は悪化することになるのは容易に想像できるでしょう。ですから、考えるべき方向はまったく逆なのです。

本当の利用運送ー第一種と第二種の本質的な違いとは?

これまでの数回に亘って、利用運送事業が21世紀の最新ビジネスモデルになり得るというお話を書いてきました。長年運送業の仕事に携わってきた方や、物流業界全般にお詳しい方ならば、容易に想像力を働かせていただければご理解いただける内容で、そのポテンシャルに驚いていらっしゃるかもしれませんね。

利用運送が運送業のデファクト・スタンダードになる

つまり、要するに何が言いたいのかといえば、20世紀末から21世紀初頭に亘って巻き起こったIT革命が、物流や流通業にまで影響を及ぼし、一般消費者の生活を起点として大革命が進行しているということなのです。これを踏まえて考えると、利用運送事業が運送ビジネスの中核を担う運送業のデファクト・スタンダードの地位を占める可能性が高いということとなります。そのうえで、これから利用運送を始めようと考えている方には、第一種貨物利用運送事業の登録を取得するのか、第二種貨物利用運送事業の許可を取得しようとするのかの、重大な選択を考えなくてはならない時代に突入しています。

まったく新しい価値基準での利用運送判断が求められる

従来の枠組みで考えると、単一の輸送モードだから第一種の利用運送事業で登録するとか、鉄道や航空機、船舶で長距離輸送をした後のデリバリーも手掛けるから第二種の利用運送で許可を申請するとかといった、いわゆる許認可取得のための要件確認作業が、そのままビジネスモデル採用の意思決定基準の大部分を占めるような、行政書士の許認可取得相談に類似したフレームワークで捉えられていましたが、このアプローチはもうすでに過去のものであり、荷主からの運送依頼に対して最適な方法で品質を管理し保証する手段として、第一種利用運送で対応すべきなのか、第二種利用運送でなければ競争優位性を確立・維持・発展させることができないのではないか?という、ビジネスモデル採用基準で判断すべき問題なのです。すなわち、経営幹部層の戦略的経営意思決定における判断基準を提示しているのが、この第一種貨物利用運送事業の登録と、第二種貨物利用運送事業の許可という二制度であるという、まったく新しい価値基準での判断が求められているのです。この判断によって、事業者の発展性および事業の存続可能性の範囲が大幅に異なっていきますので、「だれか利用運送ができる行政書士はいるか?」「同じ許可を取るなら安い事務所でいい」といったフレームワークでは、もはや対応できないビジネスであると言えます。

利用運送事業が21世紀の最新ビジネスモデルである理由~その3

利用運送事業が、なぜ隠れた人気ビジネスになっているのか、商売がお上手な方、あるいは勘の鋭い方ならお気づきになられる頃かと存じます。それでは答えをそろそろ明かしましょう。そうです。ネット通販時代に相性がいいビジネスモデルだからです。

ネット通販に相性がいい利用運送事業

インターネットは、マイクロソフトがWindows95を発売した1995年に普及が始まった元年とされています。その後、爆発的に普及が進み、一般の生活に入り込んで、もはやなくてはならないツールにまで成長しました。とくに2013年後半のアップルiPhone4sのブームにより、それまでの携帯電話からスマートフォン(スマホ)が普及することになったため、かつてユビキタス社会が到来するといわれていたものが、スマホというデバイスのブーム到来によって携帯電話ルートで実現することになったのです。これによる商業流通の物流チャネルも大きな影響を受けることになり、小売業においてオムニチャネルと呼ばれる多対多での情報出入り口に対して、パラレルに対応できる販売チャネルの構築と流通ルートの確保が事業者の競争優位性確立において非常に大きな要素を占めるようになったためです。

並行物流に対応するには利用運送が最適な運送手段

商業取引において、実際に物流がフローするにあたっては、確実な輸送運送の実現と同時に配送管理網が確立されることが不可欠であり、21世紀の物流においては単品管理が前提でシステムが構築されることになります。したがって、いわゆるモグリの業者が適当な仕事で荒稼ぎできるような世界は一掃され、オーサライズされた販売チャネルを確立した営業が、最適な運送手段を適宜に選択したうえで、顧客ニーズを最大限充足する流通システムに加わることが必須になるためです。と同時に、許認可事業と呼ばれる規制産業の代表格である運送事業においても、総合的な最適環境において最大のパフォーマンスを高稼働率でオペレーションできる事業者が選別されて生き残る時代となりますので、最適運送を選択する能力を持つ運輸運送事業者と、最適配送を実現する能力を持つ実運送事業者との間で都度取り交わされる、選び×選ばれる体制こそが、今後成長していく運送業の姿ですし、当然運送業界の一翼を担う利用運送事業者も、この流れに大きな影響を受けることになります。ということは、逆算して換言すると、配達先である一般消費者等からバリューチェーンの上流に遡り、利用運送登録できる事業者がイニシアティブを握ることになるでしょう。

利用運送事業が21世紀の最新ビジネスモデルである理由~その2

利用運送のビジネスモデルについて、前回は一般消費者と貨物運輸運送事業者との近い接点にある「引越し」をモデルにお伝えしました。今回は、また別の視点から触れてみたいと思います。

トラックという貨物運送自動車を走らせる画一的なビジネスモデル

長く続いた日本のデフレ経済下において、輸送・運送業界は荷主からの値下げ圧力に晒され続けてきました。それは、トラックという貨物運送自動車を走らせることを業務とする画一的なビジネスモデルによって、顧客である荷主企業への価値提案において差別化できず、「この」荷物を運ぶのであれば、A社でもB社でもZ社でも品質が同じであれば、一番安いところが自社の利益に直接反映するからです。しかしながら、運転手の高齢化や引退が進み、原油価格の高騰などから油脂費が上昇すると、企業がどんな経営努力をしたところで売上原価が上昇するわけですから、上代ある売上に下方圧力がかかり、利益を生むための原価に上昇圧力がかかれば、自ずと経営状態は悪化します。デフレーションの環境下では金利負担感は増大する一方だったといえるでしょう。

若い運転手を確保できず運送業を伝授する中間層が育たない

そうして時代が一巡し、アベノミクスの第一の矢(金融緩和)によってインフレに経済環境が変化すると、これまで長年に亘って消耗してきた経営体力が下限値の限界を維持することに適応してきているため、上昇圧力についていくことができない。すなわち、若い運転手を確保できない。運送事業のノウハウを伝授する中間層が育っていない。利益を生み出す車両更新に対する経営負担が重過ぎて、低燃費の最新車両が導入できない、という悪循環に陥ります。

スマホビジネスの変革は物流・運輸運送業界にも押し寄せる

そうしているうちに、市場ではどんな変化が起こっているのでしょうか?それは皆さんの、あなたの手の中にあります。自分自身の手を見つめてみましょう。何を持っていますか?数年前と現在とでは何が違うのでしょうか?答えは携帯電話です。ここ数年でガラケーからスマホに急速に進歩しました。この進歩は生活シーンの変化です。生活者の変化はビジネスの変革を促します。ビジネスの変革の波は、当然物流・運輸運送業界にも押し寄せます。すなわち、旅客運送であるタクシー業界で起こっているスマホアプリによる革命が、貨物運送であるトラック運送事業にも起こりうるということです。それがいつかは確約できませんが、そう遠い将来ではないでしょう。そのときに競争優位を築くのが、効率的な物流システムを構築した利用運送事業であることは、物流業界の3PL革命をみれば、容易に想像できることではないでしょうか。

利用運送事業が21世紀の最新ビジネスモデルである理由

利用運送ってなんですか?とよく質問を受けます。この質問を受けると、従来は利用運送事業の説明、いわゆる商売の話か、あるいは、よくある第一種貨物利用運送事業登録申請の許認可を取得する法律手続の話のどちらかだったのですが、最近は更にマーケティング視点での利用運送を解説することが増えてきました。

最新ビジネスモデルとしての利用運送事業

マーケティング視点と書きましたが、もう少し厳密に突き詰めて言えば、ビジネスモデルとして運送業の位置づけを捉えた場合のイノベーションといった方が正しいでしょう。つまり、インターネットの普及とアクセスデバイスのユビキタス化の進行によって、ダイレクト・マーケティングによる販売が拡大していることに引っ張られる形で、物流業や運送業といった流通の最適化が進んでおり、その最適化プロセスの中の一端として利用運送業がクローズアップされているのです。

運送業にも最適化の影響が波及している

すなわち、21世紀に入ってから物流業で3PLというコーディネート型流通ターミナルが出現したことによる最適化(ここは、決して効率化ではないことに注意が必要です)に運送業が強い影響を受け、運送業も最適化が求められているのです。これは、一般消費者に近いところにいる小売業の進歩に流通プロセスが引っ張られていることに起因しますが、流通プロセスからみれば、上流に当たる物流ターミナルが更に上流に当たる倉庫業と一体化して最適化を進めた結果、達成された最適化による成果の次段階として運送業にもその影響が波及していると捉えるのが正しいです。

運輸運送業の最適手段としての利用運送事業

このように書くと、一見効率化を進めれば良いのかという風に捉えられがちですが、必ずしもそうではありません。効率化を求めて無駄を省く努力を進めていくと、その結果としてサービス・ニーズに対する受け側の幅を失ってしまい、反ってさまざまな業者が同じ努力をすることによって競争激化を招き、取引単価が下がって、業界全体で疲弊するということになるからです。従って、取り組むべきキーワードは「効率化」ではなく、あくまで「最適化」なのです。その流通プロセス全体における運輸運送業の最適手段として利用運送事業が位置づけられるのです。

利用運送事業を活用した引越しサービス

これまで、利用運送事業の全体像を概要として触れたり、第一種貨物利用運送事業登録申請や、第二種貨物利用運送事業許可を取得するための法律手続きについてのQ&A、あるいは普通トラックや軽貨物自動車を活用したり、鉄道貨物や航空貨物、外航貨物との組み合わせといったビジネスモデルについて解説してきました。しかし、今日はこれまで触れてこなかった、新しいビジネスモデルをご紹介します。

引越しサービスを利用運送で!

それは、利用運送事業を活用した引越しサービスです。一般に貨物運送事業は、普通トラックを使用する一般貨物自動車運送事業であったとしても、軽貨物自動車を使用する貨物軽自動車運送事業であったとしても、圧倒的に多くの事業者は運送約款に「標準貨物自動車運送約款」を採用することが多く、引越し用の標準引越運送約款を採用する会社はほとんどないといっていいでしょう。なぜならば、標準引越運送約款では、業務が引越しに限定されてしまうからで、標準約款ならば「なんでも運べる」からです。じつは、ここにみんなが陥る死角があるのです。

標準約款を採用して「引越し」ビジネスを忘れてしまう

業界内のほとんどの会社が標準貨物自動車運送約款を採用するのですが、ほとんど全社がこれを採用して引越しビジネスに参入するため、顧客である一般消費者からみると、誰が運んでも同じに見えてしまって、価格競争に陥ってしまっているのです。また、この標準約款を採用することで「引越し」をビジネスにすることを忘れてしまうのです!なんてことでしょうか。でも、これが現実です。

利用運送にも標準約款と引越約款がある

もうひとつ忘れていることがあります。それは、利用運送にも標準約款と引越約款があるということです。それぞれ「標準貨物自動車利用運送約款(平成2年11月26日号外運輸省告示第579号)」と、「標準貨物自動車利用運送(引越)約款(平成2年11月26日号外運輸省告示第580号)」といいます。要するに何が言いたいかといえば、つまり利用運送業で引越ビジネスをすることができる、ということです。この死角というか盲点を皆さんご存知でしょうか?

引越し一括見積りサイトは運送業者ではありません

例えば、いまあなたが引越しをすることになったとして、どこの引越業者に頼もうかと考えたときに、インターネットの一括見積りサイトの見積サービスが便利に利用したいですよね?しかし、このサイトは運送業者ではありませんから、情報を引っ越し業者に渡しているだけの情報業です。しかしながら、タクシー配車アプリのように「運送業の許認可が必要」だという法解釈が導き出された場合には、このようなネットサービスをIT企業が営むことができなくなるのです。規制産業の許認可に関する知識をしっかりと持っていることが、競争が厳しい業界で優位性を確立することを理解すべきケースだと思います。

利用運送は現代の日本人にとって身近な存在

利用運送は耳慣れない言葉ですが、現代に生活するの日本人にとって通販などで身近な存在です。利用運送には第一種利用運送と第二種利用運送のビジネスモデルがありますが、21世紀の現在ではそのビジネスモデルも複雑となって、新しいビジネスモデルが誕生しているといっていいでしょう。とある有名な上場企業も、外航運送ができないのはいけないというので、トラックの第一種利用運送事業でトレーニングをしてノウハウを積み、その後エキスパートになったという事例もあります。

これからどんな利用運送の登録や許可取得をすればいいか?

通販に関して言えば、オンラインでビジネスするため、別に倉庫を確保する必要はありません。もちろん必要ならば運送業として営業所や倉庫を確保することもできます。あくまで、ホームページやパンフレットの利用運送・運送会社というのは、会社が作った広報活動の一環ですから、良いことだけしか書かれていないので、配送の良し悪しまでを判断するのはなかなか困難なのです。ビジネスをしていれば運送業も10年は儲かると考え判断するのが一般的ですが、これからどんな方法で利用運送に対しての登録や許可取得をすればいいと思いますか?運送荷物には、鉄道や外航をはじめ、航空貨物、ビジネス運送、定期利用運送、特殊運送、3PL対応まで、幅広く事業計画の可能性があります。グローバリゼーションの時代で、個人輸入にも使用されますので、利用運送は有用なビジネスであるといるのです。

貨物運送取扱事業法の施行に伴う経過措置等に関する政令

利用運送事業は、かつて存在していた貨物運送取扱事業とその法規制が非常に似ており、時代の進展に伴うビジネスモデルの変化に影響を受けた側面が強いために、法律が改正されて政令によって経過措置も設けられた経緯がありました。ここでは、平成2年の7月10日に制定され平成7年の1月20日に最終改正された、「貨物運送取扱事業法の施行に伴う経過措置等に関する政令」についてみてみることにしましょう。

貨物運送取扱事業者に対する許可申請時の経過措置

従来の貨物運送取扱事業者として確認を受けた事業者に対する許可申請時における欠格事由等に関する経過措置というものがあり、貨物運送取扱事業の確認を取消しが適用され、また道路交通事業抵当法の買受人が確認を受けた者である場合における規定の適用に関して読みかえるものとされています。具体的に確認を受けた者に対して、法律の規定を準用する場合の読み替えとしては、政令第二条の第一項の表に掲示されており、以下の通りです。

読み替える法の規定 読み替えられる字句 読み替える字句
第九条第一項(第二十二条において準用する場合を含む。) あらかじめ 当該附則第十条第二項の確認(以下単に「確認」という。)を受けた後遅滞なく
第九条第二項第三号 利用運送事業 利用運送事業者(利用運送事業に該当する事業について確認を受けた者を含む。)
第十一条第一項(第二十二条において準用する場合を含む。) 運輸大臣 当該確認を受けた後遅滞なく、運輸大臣
第十五条第一号(第二十二条において準用する場合を含む。) 事業計画又は集配事業計画 当該確認に係る事業の範囲その他の事項
第十七条第四項 許可 確認(利用運送事業者たる法人との合併後存続する当該確認を受けた者たる法人にあっては許可、当該合併により設立された法人にあっては許可及び確認)
第十八条第二項 利用運送事業の許可 確認
第十八条第四項、第二十一条各号列記以外の部分 許可 確認
第二十条、第二十一条第三号 第三条第一項の許可を受けた者 確認を受けた者
第五十五条第一項 利用運送事業 利用運送事業者(利用運送事業に該当する事業について確認を受けた者を含む。)
第六十条第二号、第六十一条第二号 第十六条第一項 附則第十条第四項において準用する第十六条第一項
第六十条第三号、第六十一条第三号 第十六条第二項 附則第十条第四項において準用する第十六条第二項
第六十三条第二号 第二十一条 附則第十条第四項において準用する第二十一条
第六十四条第一号 第十一条第一項 附則第十条第四項において準用する第十一条第一項
第六十四条第二号 第九条第一項 附則第十条第四項において準用する第九条第一項
第六十四条第三号 第九条第二項 附則第十条第四項において準用する第九条第二項
第十五条(第二十二条 附則第十条第四項において準用する第十五条(附則第十条第四項において準用する第二十二条
第六十四条第六号 第五十五条第一項 附則第十条第四項において準用する第五十五条第一項
第六十四条第七号 第五十五条第二項 附則第十条第四項において準用する第五十五条第二項
第六十五条 第六十条から前条まで 附則第十条第四項において準用する第六十条(第二号及び第三号に係る部分に限る。)、第六十一条(第二号及び第三号に係る部分に限る。)、第六十三条(第二号に係る部分に限る。)及び前条(第四号及び第五号に係る部分を除く。)
第六十六条第一号 第十九条 附則第十条第四項において準用する第十九条
第六十六条第二号 第十二条(第二十二条 附則第十条第四項において準用する第十二条(附則第十条第四項において準用する第二十二条

二 運送取次事業に該当する事業について確認を受けた者に準用する場合

読み替える法の規定 読み替えられる字句 読み替える字句
第十条 運賃又は料金 料金
第十五条(第三十四条第二項において準用する場合を含む。)、第十六条 利用運送事業 運送取次事業
第十五条第二号(第三十四条第二項において準用する場合を含む。) 利用運送約款 運送取次約款
第二十八条第一項(第三十四条第二項において準用する場合を含む。) あらかじめ 当該附則第十条第二項の確認(以下単に「確認」という。)を受けた後遅滞なく
第二十八条第二項 利用運送事業者」とあるのは、「運送取次事業者」 「当該利用運送事業者」とあるのは「当該運送取次事業に該当する事業について附則第十条第二項の確認を受けた者」と、「他の利用運輸事業者」とあるのは「他の運送取次事業者(運送取次事業に該当する事業について附則第十条第二項の確認を受けた者を含む。)」
第二十九条第一項(第三十四条第二項において準用する場合を含む。) 運輸大臣 当該確認を受けた後遅滞なく、運輸大臣
第二十九条第二項 運送取次事業者 運送取次事業に該当する事業について確認を受けた者
第三十二条各号列記以外の部分 登録 確認
第三十二条第二号 第二十三条の登録又は第二十七条第一項の変更登録 確認
第五十五条第一項 運送取次事業者 運送取次事業者(運送取次事業に該当する事業について確認を受けた者を含む。)
第六十二条第二号及び第三号 第三十四条第一項 附則第十条第四項
第六十四条第一号 第二十九条第一項 附則第十条第四項において準用する第二十九条第一項
第六十四条第二号 第二十八条第一項 附則第十条第四項において準用する第二十八条第一項
第六十四条第三号 第二十八条第二項 附則第十条第四項において準用する第二十八条第二項
第十五条(第二十二条及び第三十四条 附則第十条第四項において準用する第十五条(第一号及び第三号に係る部分を除く。)(附則第十条第四項において準用する第三十四条第二項
第六十四条第四号 第三十二条 附則第十条第四項において準用する第三十二条
第六十四条第六号 第五十五条第一項 附則第十条第四項において準用する第五十五条第一項
第六十四条第七号 第五十五条第二項 附則第十条第四項において準用する第五十五条第二項
第六十五条 第六十条から前条まで 附則第十条第四項において準用する第六十二条(第二号及び第三号に係る部分に限る。)及び前条(第五号に係る部分を除く。)
第六十六条第一号 第三十条の二第二項 附則第十条第四項において準用する第三十条の二第二項
第三十一条 附則第十条第四項において準用する第三十一条
第六十六条第二号 第三十条(第三十四条第二項 附則第十条第四項において準用する第三十条(附則第十条第四項において準用する第三十四条第二項

貨物利用運送事業者の遵守すべきルール(事項)

貨物利用運送事業法施行規則における貨物利用運送事業者が遵守すべき事項とは、規則の第二章に定められています。具体的な内容としては、一般常識に近いようなものもありますが、そこはやはり他人の荷物を希望の配送先に届けなくてはいけない運送業でありますので、総論でありながらも明文として定められています。

貨物利用運送事業の適正な運営の確保

規則では、貨物利用運送事業を経営する者を貨物利用運送事業者と呼び、確実かつ適切な事業遂行を求めています。具体的には、実際に荷物を配送する外注先の実運送事業者が行うビジネスと、利用運送事業に関連して貨物流通(物流)のスムーズな運営を妨げないような形で事業運営をしなくてはいけないと、ビジネスに当たってはそのビジネスモデルを配慮して考えるように規定が定められています。

また、発注する下請け業者である実運送会社だけでなく、顧客であるお客様の荷主、あるいは物流もしくは社会全体といったステークホルダーに対して、公平であることは前提として、かつ懇切に事業場の取扱いをするように定められています。

非常に重大な危険品等の運送取扱いについて

運送業で運ぶ荷物は、通常は運送中の事故による破損を防止するため梱包されていますから中が見えず、どんな荷物なのかは荷主さんに告知に頼る部分があります。この点は、大手宅配会社のヤマト運輸がヤマトメール便の取扱いに関して、郵便法が定める信書の定義があいまいであることから、顧客である一般消費者が信書かどうかの認識がないままにメール便で信書を発送してしまい違法性を問われてしまうとか、なかには警察で取調べを受けてしまう事例があるとのことで、平成27年3月31日をもってメール便のサービスを廃止する、と発表しました。

これと同じように、利用運送を含めた運送業でも、梱包された荷物の中身が危険物であった場合に、例えば運送するトラックが事故に巻き込まれ、事故の衝撃によって発火や炎上、あるいは最悪のケースでは爆発してしまうようなことがあってはいけないことから、危険物の運送取扱いについても規定を定めており、具体的には、

・火薬類
・その他の危険品
・不潔な物品等

これらの荷物で、貨物に損害を及ぼす可能性がある貨物を運送するよう依頼を受けて受託し運送する荷物として取扱う場合には、通常の運送過程においても、また万が一の事故発生時であっても、他の荷物が損害するようなことのないように注意をする義務を負わせています。これは、翻して考えると、事故等の発生時には、当該荷物だけに留まらず、損害の及んだ他の荷物に対しても責任を負うこととするほか、許可や登録を受けた利用運送事業者としての登録要件あるいは許可要件に照らして、その事業存続の評価に関わることになりますので、十二分な注意が必要です。

貨物利用運送事業法の施行規則とは何か

平成元年法律第82号の貨物運送取扱事業法に基づいて、貨物運送取扱事業法施行規則が運輸省令として定められましたが、その後平成2年7月30日に貨物利用運送事業法施行規則となり、現在では平成18年4月28日に国土交通省令の第58号として最後の改正が行われています。

貨物利用運送事業法施行規則の主な内容

貨物利用運送事業法施行規則は、第1条から第51条までの比較的ボリュームのあるものですが、主とした内容として、

第1章 総則
第2章 貨物利用運送事業者が遵守すべき事項
第3章 第一種貨物利用運送事業
第4章 第二種貨物利用運送事業
第5章 外国人等による国際貨物利用運送事業
第6章 雑則

に分かれており、利用運送の全体を網羅する形で整理されています。

利用運送事業とは、自社で輸送手段を持たない運送業ということになりますので、荷物と荷主さんの希望があれば、日本国内に問わず海外へ荷物を運ぶことも考えられますし、反対に海外から日本へ荷物が送られてくることもあるでしょう。はたまた、普段契約して配送を委託している実運送業者さんの運輸手段を越える荷物の運送を受託することも考えられるわけです。そこで、運送業としての利用運送の総則や、利用運送業者が守るべき基本的ルールをまずはじめに定めたうえで、輸送手段が一種類である(通常は一般貨物のトラック運送業が多い)第一種利用運送業と、ドア・ツー・ドアのピア運送をサービスとすることができる第二種利用運送業に対する規則が定められています。

外国人等の国際貨物利用運送も

それから最後に、上記で述べたとおり、自分は運送手段を持っていないが荷物を運んでもらいたい、というニーズに関しては、じつは海外との荷物の遣り取りで多く起こりうる需要であり、荷主と荷物が不特定で流動的であるがゆえに、この利用運送が便利に活用されるフィールドといってもいいでしょう。また、この場合の荷主あるいは配送先は、当然のように海外であることが想定されるので、グローバル物流の現場では外国人の方が国際貨物に関して利用運送を手掛ける場合も十二分に考えられるのです。そこで、この規則では、最後に「外国人等による国際貨物利用運送事業」として、グローバル物流における利用運送事業のルールについて定めています。

平成2年7月の貨物自動車運送事業法の施行に伴う経過措置とは何ですか?

貨物自動車運送事業法の施行に伴う経過措置とは、平成元年制定の貨物自動車運送事業法に関連した)附則第11条の規定に基づき制定された政令です。

具体的な内容としては、鉄道集配業に関する経過措置として、貨物運送取扱事業法の規定によって通運事業のためにする、一般区域貨物自動車運送事業の免許を受けたもの(とみなされている者)が経営している一般区域貨物自動車運送事業、または貨物運送取扱事業法附則の規定によって第2種利用運送事業の許可を受けたものと看做される者が経営する一般区域貨物自動車運送事業は、その免許事業の範囲内で法律施行日に、一般貨物自動車運送事業について一般貨物自動車運送事業の許可を受けたものとみなしています。

また、この一般貨物自動車運送事業の許可を受けたと看做される者であり、かつ一般貨物自動車運送事業について、2以上の許可を受けたものと看做される者については、当該2以上の許可を統合して1つの許可とみなし、法律の規定を適用することとされました。

さらに、一般貨物自動車運送事業の許可を受けたものと看做される者が経営する、一般貨物自動車運送事業許可事業に関連して 旧道路運送法もしくは旧通運事業法、またはこれらの法律に基づく命令によってなされていた処分、もしく手続その他の行為で、法律に規定があるものは、運輸省令で定めるところによって法律によってされたものとみなされました。

利用運送関連としては、この一般貨物自動車運送事業の許可を受けたと看做される者が、貨物運送取扱事業法の確認を受けて引続き経営する第2種利用運送事業について、その運送事業を第2種利用運送事業と看做して規定を適用しています。

また、同じく昭和27年制定の道路交通事業抵当法の一部改正に伴って、旧法に拠った一般路線貨物自動車運送事業を、その事業単位の全部または一部として設定されている道路交通事業財団については、法附則の規定による改正後の道路交通事業抵当法第3条の規定に基づいて、特別積合せ貨物運送を行う一般貨物自動車運送事業を、その事業単位の全部または一部として設定されている道路交通事業財団(以下「一般貨物自動車運送事業に係る事業財団」という)と看做すこととされました。

この規定によって、一般貨物自動車運送事業に係る事業財団と看做された道路交通事業財団を設定している者は、法律の施行の際に、現にその道路交通事業財団の旧法による事業単位である一般路線貨物自動車運送事業に関して、法律の施行日から数えて3ヶ月以内に法附則の確認を申請しなかったとき、または確認を申請した場合でもその確認をしないという趣旨の通知を受けたときには、法律施行日から3ヶ月を経過した日または当該通知を受けた日に、それぞれその道路交通事業財団の事業単位である、特別積合せ貨物運送をする一般貨物自動車運送事業に係る事業の経営許可が失効したものと看做して、新道路交通事業抵当法の規定を適用することとなりました。この場合では、その旨およびその一般貨物自動車運送事業に係る貨物自動車運送事業法の営業区域、その他の必要な事項とされています。

利用運送で期待できるメリットはアセットだけではありません!

利用運送事業はノンアセット(運送手段を保有せず)で運送事業が始められる、非常に魅力的なビジネスモデルですが、運送業を始めるに当たって期待できるメリットは貸借対照表(B/S)上の資産あるいは負債のオフバランスだけではなく、収益に関わる損益計算書(P/L)上の一般管理費のコストダウンにも関係します。

利用運送では支払保険料がかからない!

一般的なトラック運送業である一般貨物自動車運送事業では、運送手段であるトラックと運転手、また営業所や車庫を確保する必要がありますが、利用運送ではこれを全て外注するため、これらの管理コストがかかりません。そういう意味では運送業ビジネスとして必要不可欠な交通事故に対する自動車保険料も支払わなくてよいということです。

事業計画で保険料の1年分を計上、運転資金のキャッシュを用意

自動車保険の種類には、大きく分けて二つあり、ひとつは強制加入で強制保険とも呼ばれる自賠責保険、もうひとつは任意保険です。運送業を始めるにあたっては、全ての車両に対して任意保険への加入が義務付けられており、自賠責保険加入を確認する根拠書類として保険加入を前提とする有効期間中の自動車検査証(車検証)の写しと、任意保険加入を確認する根拠書類として任意保険契約書の写し(フリート契約でも同様です)が必要となります。実際に契約済みの契約書あるいは、加入を前提とした見積書の提出によって許可となりますので、これらの根拠書類に記載された保険料の1年分を事業計画に盛り込み、運転資金としてキャッシュを用意しなければなりません。これは、一般貨物に使用する車両によっては、第一種貨物利用運送事業の登録要件である財産的基礎の300万円を越える場合すらあります。このように考えると、ノンアセットで運送業を営める利用運送業のメリットの大きさを実感していただけるでしょう。

利用運送事業にはどんな種類があるのですか?

利用運送とは、ノンオウンでの運送業というビジネスモデルを指す場合と、運送業のある業態に際して設定される許認可制度あるいは規制産業の体系を指す場合との二種類とがありますが、実運送の手段が社会の高度化に伴って複雑化していくことが予想されることから、今後も発展が予想されるビジネスです。

いわゆるノンアセットと言われる運送手段を保有せず、運送業を営むことが出来るのが利用運送の最大の特徴ですから、従って利用運送事業を営むにあたって国土交通省の登録や許可が必要な規制産業と狭く捉えるよりは、ROEの高い資本効率の高い運送事業の形態として積極的に広く捉えることが事業運営上求められるポイントです。けだし、運送事業はすべて行政庁の許認可が必要な規制産業だからです。

利用運送に係る法律や規則

それでは、利用運送にまつわる法律や規則等を、いい機会ですのでご紹介しておきましょう。
1.貨物利用運送事業法(平成1年12月19日号外法律第82号)
2.貨物運送取扱事業法の施行期日を定める政令(平成2年7月10日号外政令第209号)
3.貨物利用運送事業法施行規則(平成2年7月30日号外運輸省令第20号)
4.貨物運送取扱事業法の施行に伴う経過措置等に関する政令(平成2年7月10日号外政令第210号)
5.許可、認可等の整理及び合理化に関する法律による貨物運送取扱事業法の一部改正に伴う経過
  措置に関する政令(平成7年1月20日政令第6号)
6.鉄道事業法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める省令(平成15年2月14日号外
  国土交通省令第12号)
7.標準貨物自動車利用運送約款(平成2年11月26日号外運輸省告示第579号)
8.標準貨物自動車利用運送(引越)約款(平成2年11月26日号外運輸省告示第580号)
9.標準外航利用運送約款(平成2年11月29日号外運輸省告示第586号)
10.標準鉄道利用運送約款(平成2年11月29日号外運輸省告示第588号)
11.標準国際利用航空運送約款(平成2年12月1日号外運輸省告示第594号)
12.標準内航利用運送約款(平成18年2月28日号外国土交通省告示第316号)
13.貨物利用運送事業報告規則(平成2年11月29日号外運輸省令第32号)
14.貨物流通事業者の氏名の変更の届出等の一本化した提出の手続を定める省令(平成7年6月23日
  運輸省令第37号)

このように、利用運送とひと言でいっても、14もの法令等が関係しているビジネスなのです。許可や登録さえ取ればあとは簡単という風に安易に理解するのではなく、これらの法令を活用する道に高い収益性があるとお考え頂くのが正しい経営に繋がります。

利用運送ならトラックを持たずに運送業を始められる

自社商品あるいはグループ系列会社の商品を運ぶといった運送ニーズは、製造業のみならず、流通業や卸売業、小売業といったあらゆる業種業態で発生します。これらのうち、経営戦略上の理由あるいはビジネスモデル上の理由から、トラックなどの輸送手段を持たずに運送事業を行いたいというケースもあります。

利用運送で流通を制するものが商品価値を制する

社会が高度に複雑化する一方で、3PLのような物流の統合化が進んでいます。この流通の大激流に乗っていくには、商品価値の最大化を目指す場合にノンアセットで運送事業を行わなければならないケースも増大しています。けだし流通を制するものが商品価値を制するからです。この重要性に理解のある事業者様は自社商品の最適配送を実現する必要があり、このビジネスモデル上の特性から貨物利用運送事業の許認可が必要になります。

第二種利用運送事業許可こそが利用運送

利用運送事業には、第一種と第二種とがありますが、上記のビジネスモデルを基軸に考える場合、第二種利用運送事業許可こそが利用運送であり、第一種利用運送事業登録はむしろ第二種を補完する役割といえます。また、複雑化する商品物流と付帯する個人情報管理の観点から、事業上必要な許認可を取得していない場合には事業報告上求められるドキュメントが不備となり、事業停止またはビジネスモデル破綻に繋がるコンプライアンス上の基本事項です。
すでに流通業界は複合物流の時代に突入しており、第二種利用運送業許可が必要となる事業者様も増えてきていますので、中長期経営計画にしたがって事業立上げの準備が求められます。

運送業のなかの利用運送事業

運送業というと、旅客や貨物の運送に関して運賃または手数料を取る営業を指します。すると、当然鉄道や船舶、航空機やもちろんトラックなどの運送手段を持っていることが必要であり、かつ前提であるように思われがちです。

輸送手段を持たない運送業もある!

ところが、これらのような輸送手段を持たずに運送業を営むことができる業態も、運送業のなかには想定されているのです。それが、この利用運送です。利用運送事業では、自社ではまったく運送手段を保有せずに、実際の運送や配送は外部の一般貨物運送会社を活用しつつ、運送業を営むことができるのです。つまり、物流全体の効率化や運送業界の資源の最適配分という市場効率性に依拠することで、運送手段を持つ貨物運送事業者がそれぞれバラバラに営業活動をおこない、また実際に運送を実施するよりも、はるかに経済的にもエネルギー的にも効率よく流通を実現することができるのです。従って、一般的にはなかなかイメージしにくい事業体ですが、貨物輸送の物流全体の面からみたときには、非常に大きな役割を果たしているといえるでしょう。

系列の垣根を越えて流通手段を相互活用する

21世紀のIT化社会にあって、物流の効率化はエネルギーの効率利用の観点から、その成長性において非常にポテンシャルをきたいされる業界となりました。すなわち、昭和の時代に企業系列ごとに効率化を進めてきた産業界が、系列の垣根を越えて流通手段を相互活用することで競争力を高めるようになったのです。この流れにIT化や標準化の波が現れ、一気に生産性が高まりました。

貨物利用運送事業で運送サービスが向上!

貨物利用を運送事業が行われるようになり、従来よりも運送サービスの質がぐんとアップしました。というのも、生物や壊れてはいけない機械の部品等、素早くスムーズに運ばなければならない貨物は航空や自動車、大量で重くスペースが必要な貨物は鉄道や海運など、それぞれの貨物の状態や目的に合わせて、そして依頼主の希望に合わせて、運送の形を変えることができるようになったのです。自分の会社以外の輸送方法で物を運ぶなどできなかった時代から、他社の輸送手段を用いて効率よく運送が可能となました。運送方法はいろいろあり、船が使われるのが船舶で飛行機等を空が利用されるものが航空です。どちらも、日本でも海外でも OK で船舶の場合「外航」「内航」に分けられ、航空の場合外国利用は「国際貨物運送」となります。鉄道が使われたり、自動車が使われたり、どの方法でも荷物が運べるようになったおかげで時代のニーズにこたえられる形となりました。それにより世の中の回転がさらに早くなり、貨物利用運送事業は経済活性化に一役買っているといえます。今までは、貨物運送取扱事業法名前の法律で取り締まられていましたが、今では貨物利用運送事業法に改正されました。それに対し自社の輸送手段を利用する事業を、実運送事業といいます。貨物利用運送事業は自社の貨物を実運送事業にお願いして運んでもらうことはできません。荷主は貨物利用運送事業も実運送事業も利用できます。

利用運送業の全部または一部の事業停止処分とは

利用運送事業の事業停止処分とは、輸送モード毎に違反の原因になった利用運送の区域、または区間、もししくは業務の範囲に直接関係する営業所を対象として行います。もし、複数の輸送モードまたは営業所が違反に関係している場合は、これに関係する輸送モードまたは営業所の全部が対象とされ、また、対象とする数が多い場合とか、違反内容の軽重等の違反事実の実態の態様によっては、一括して主要営業所を対象とすることができるとされているので注意が必要です。この 事業の全部または一部の停止とは、違反が認められた利用運送の区域、または区間、もししくは業務の範囲での、利用運送契約の新契約案件締結の停止も処分内容としており、3カ月以内に期間を定めて処分を行うとされています。

この事業停止の期間というのは、処分基準で定められた事業停止日数であり、同時に複数の違反事項があった場合は、輸送モードごと、あるいは営業所毎に処分基準に定められている事業停止日数を合算して処分を行うものとされています。
事業停止の処分を行う場合は、もし再び違反があったときには、これまでよりも更に重い処分が行われることがあると処分対象者に告知します。また、利用運送契約の停止結果状況、ならびに違法行為の防止や違法状態是正改善措置を明らかにする事業停止結果と、事業改善報告書を提出させるものとし、もし事業の停止が行われなかった場合に、期限内に同報告書の提出がない場合または事業の改善が認められない場合は、事業停止命令への違反として取扱うものとされています。
特定第2種貨物利用運送業の貨物の集配での輸送の安全確保に関する違反で、貨物自動車運送事業法で準用する自動車その他の使用停止を命じられた場合、そのトラックでの運送を集配事業計画にしている第2種貨物利用運送業が不可能となる場合には、その輸送施設の停止期間に直接関係する利用運送事業の区域や、区間に関する事業停止の処分も行われますので、注意が必要です。

利用運送の行政指導

利用運送事業についての行政指導というのは、事業の種別および利用運送機関の種類別(いわゆる輸送モードのことをいいます)ごとに、違反が認められた利用運送の区域、または区間、もしくは業務の範囲に直接関係する営業所を対象として行います。

この場合、複数の輸送モードまたは営業所がその違反に関係している場合には、当該事案に関係する輸送モードおよび営業所の全部を、行政指導の対象とするものとします。またもし行政指導の対象が数多い場合とか、違反の内容の軽重等といった違反の実態をみた上での態様によっては、まとめて主要営業所を一括して行政指導の対象と
することができるものとされていますから、事実上事業遂行に大きな影響がでるといえます。十分な事業遂行体制の確保と注意が必要です。
また、行政指導を行うときは、もし今後再び違反が行われることがあった場合には、加重ペナルティとして更に重い処分が下されることがあると、処分対象者対して教示します。さらに文書での警告を行う場合には、原則として1か月以内に違法行為の防止または違法状態を是正するために執った改善措置を明らかにする事業改善報告書を提出させて、期限内に同報告書の提出がない場合とか、その後事業の改善が認められない場合には、文書警告を再違反したものとして取扱いますので、しっかりとした対応ができなければ重大な処分に繋がります。
例えば、口頭注意に該当する違反が同時に3つ以上も確認されるような場合は、これらを合わせて行政指導の対象として、文書勧告するものとされています。さらに、文書勧告に該当する違反事項が同時に3つ以上確認されるような場合においては、これらを合わせて文書警告とすると定められています。

貨物利用運送事業者に対する加重行政処分

貨物利用運送事業者が、利用運送事業にあたって貨物利用運送事業法に違反する、またはその他法令違反もしくは事故等を発生した場合に行政処分が行われますが、その程度が悪質であると認められる場合には、ぺナルティが加重されることがありますので、甘く見てはいけません。

すなわち、違反の内容が悪質な場合と認められる場合は、違反内容に対する行政処分等を加重することとされており、または当該違反の内容が軽微な場合と認められるときには、行政処分等を軽減するものとされています。

例えば、 悪質な場合としては、違反事実もしくはこれを証する資料等の事実を隠滅した、または隠滅したと疑うに足りる相当の理由がある場合とか、違反事実が原因となって社会的影響のある事件を引き起こしてしまった場合とか、その違反事実が社会的影響のある事件に重大な関係があると認められるような場合です。これらのいずれかに該
当する場合は、処分等の基準の「再違反」欄に加重するものとされています。さらに「再違反」の場合であって「再違反」欄の規定よりも重い行政処分等を行うことができるとされています。

一方軽微な場合としては、たとえ違反があったとしても、その違法行為を防止するために相当の注意や監督が尽くしたという証明があった場合や、利用者および第三者に対して特に損害を与えていない場合、過去3年以内に行政処分等を受けていないとか、違法状態を是正しようと直ちに相当の改善措置を執ったような場合には、仮に処分基準の「反復、計画的なものと認められる」という場合であったとしても、「臨時、偶発的なものと認められるもの」の欄に、「再違反」の場合であっても「初犯」欄に軽減するものとされています。

しかしこの場合、「反復、計画的なものと認められるもの」の場合であり、かつ「再違反」の場合は「初犯」欄への軽減は行われません。単に「臨時、偶発的なものと認められるもの」欄への軽減のみが行われます。「初犯」の場合で事業停止処分に該当するときは、その停止期間を2分の1を超えない範囲で短縮することや、文書警告に該当するときは文書勧告として、文書勧告に該当するときは口頭注意とすることとされています。

 

利用運送会社(個人事業を含む)に対する行政処分

利用運送事業は、貨物利用運送事業法に定められた運送業の一種であり、事業を行う場合には法律に定められた登録要件や許可要件にしたがって登録や許可を得なくてはなりませんし、事業遂行にあたっては各種法令遵守と事業報告、変更にあたっては各種届出が必要ですが、これら以外にも事故の発生等があった場合には、監督官庁である国土交通省および営業所を所管する各地方運輸局長(兵庫県の場合は神戸運輸監理部、沖縄県の場合は沖縄総合事務局長)が、行政処分を行う場合があります。
その利用運送の行政処分については、貨物利用運送事業法の第16条および第42条の規定に基づいた登録の取消し等、ならびに同法第33条および第49条の2の規定に基づく許可の取消し等、の行政処分等を行う場合には、登録取消および許可取消の基準を定め、各地方運輸局長(兵庫県の場合は神戸運輸監理部、沖縄県の場合は沖縄総合事務局長が貨物利用運送事業者に対して行政処分を行う場合に、この基準に従って行政処分等を行います。
すなわち行政処分等とは、軽微なものから重大なものへの順に、事業の全部または一部の停止、および登録または許可の取消しがある。ただし、これらに至らないものとしては行政指導があり、その種類は軽微なものから重大なものへの順に、口頭注意、文書勧告、書警告となります。この行政処分は、原則として行政指導を前置きして行うものとされていますが、違反の態様が悪質な場合等は、直ちに行政処分を行うことができるとされています。
例えば、一度違反した事項を再度違反した場合、これは一度行政処分等を受けた事業者が、その行政処分等を受けた日から3年以内に、もう一度更に同じ事項に違反した場合、別に定める貨物利用運送事業者に対する行政処分等の基準に基づいて行政処分等が行われます。但し、この処分等の基準について他の法令や通達に特別の規定がある場合には、そちらが優先して行政処分等をするものとしています。

利用運送登録(許可)の標準処理期間とその実際について教えてください

利用運送事業では、自社で輸送手段を所有することはありませんが、トラック運送業の一般貨物自動車運送事業者等と同じく運送業に含まれ、国土交通大臣または地方運輸局長からの登録や許可を得なければ事業を開始できず、いわゆるモグリになってしまいます。

事業開始に当たって合法性を確保する第一種貨物利用運送登録申請手続きや、第二種貨物利用運送事業許可申請手続きは、このように行政庁への許認可申請手続きとなりますので、標準処理期間と呼ばれる手続き期間が設けられています。具体的な期間は以下の通りです。

第一種貨物利用運送事業登録申請手続きは2か月~3か月
第一種貨物利用運送事業変更登録申請手続きは1か月~2か月
但し、利用運送機関の種類の変更に係るものは2か月~3か月
第一種貨物利用運送事業の利用運送約款は1か月(第一種貨物利用運送事業附帯業務の利用運送約款を含む)
第一種貨物利用運送事業の利用運送約款の変更認可申請手続きは1か月
第二種貨物利用運送事業の許可申請手続きは3か月~4か月
事業計画及び集配事業計画の変更認可申請手続きは2か月~3か月
但し、利用運送機関の種類の変更に係るものは3か月~4か月
第二種貨物利用運送事業の利用運送約款の設定の認可申請手続きは1か月(第二種貨物利用運送事業附帯業務の利用運送約款を含む)
第二種貨物利用運送事業の利用運送約款の変更認可申請手続きは1か月
第二種貨物利用運送事業の譲渡し及び譲受けの認可申請手続きは2か月~3か月
第二種貨物利用運送事業の合併及び分割の認可申請手続きは2か月~3か月
第二種貨物利用運送事業の相続の認可申請手続きは2か月~3か月

この標準処理期間というのは、役所内での当該各手続きを処理する際の必要期間(処理スピード)を指しており、書類を提出すれば必ずそれまでに許可や登録、変更の認可等が得られるというものではありません。書類の内容に不備や訂正、あるいは必要書類の追加等が発生する場合には、追加書類の提出等それらに対応する期間について標準書類期間の経過はストップします。ただ、しっかりした内容の書類が提出できれば、一般的には標準処理期間の最大限よりも少し早めに手続きが完了することが多いので、なるべく早く手続きを済ませたいというお客様は、経験と実績の豊富な当事務所のような専門家にご依頼ください。時間を買うことで費用対効果のもっとも高い事業経営が可能となり、事業の成長と存続可能性を高めた経営のお手伝いをさせていただきます。

 

標準利用運送約款が何種類かあるようですが、どうなんですか?

はい。利用運送事業も貨物運送業の一形態であり、荷主に対する荷物の運送責任を負担していますので、貨物を輸送するにあたって荷主との間での契約条件(運送ルール)を定めることになります。

しかしながら、個別のお客様(荷主)と個別の荷物毎にその都度運送契約の条件を調整して契約をするというのは、膨大な労力と事務作業を要求するものであり、経済活動としては合理的とは言えないことから、運輸省や国土交通省が標準約款を定めて告示しています。これによって、利用運送事業者や一般貨物自動車運送事業者(トラック運送会社)、鉄道貨物事業者、航空貨物事業者、船舶貨物事業者等々は標準化された貨物の取扱いをすることが可能となり、運送作業の効率化が図られて、事業がスケーラブルに経営できるという非常に大きなメリットを享受できるため、特殊な運送貨物物品(例えば、全世界的に有名な美術品や絵画など)を除いて、一般的に多くの事業者はこの標準運送約款を選択して、国土交通大臣や各都道府県運輸支局長(兵庫県の場合は何故か神戸運輸監理部長)への許認可手続き時に、標準運送約款の利用を申請しています。

なお、標準運送約款には次のようなものがあります。平成2年11月26日運輸省告示第579号の標準貨物自動車利用運送約款、平成2年11月26日運輸省告示第580号の標準貨物自動車利用運送(引越)約款、平成2年11月29日運輸省告示第586号の標準外航利用運送約款、平成2年11月29日運輸省告示第588号の標準鉄道利用運送約款、平成2年12月1日運輸省告示第594号の標準国際利用航空運送約款、平成18年2月28日国土交通省告示第316号の標準内航利用運送約款です。

 

貨物利用運送事業報告規則による通運事業報告規則等の廃止について

昭和25年運輸省令第100号の通運事業報告規則と、昭和28年運輸省令第6号の通運事業の財務諸表の様式を定める省令、および昭和28年運輸省令第7号の通運計算事業の財務諸表の様式を定める省令は、貨物利用運送事業報告規則によって廃止されました(貨物利用運送事業報告規則附則第2条)。

これにより、通運事業者等の提出する報告書に関して経過措置が設定されて、貨物利用運送事業報告規則の施行の際に、現に貨物利用運送事業法附則第2条の規定による廃止前の通運事業法(昭和24年法律第241号)第4条第1項の免許、または貨物利用運送事業法第28条第1項の認 可を受けている事業者(法人・個人を問いません)の平成2年11月30日以前に開始した事業年度に係る、廃止された通運事業報告規則、通運事業の財務諸表の様式を定める省令、通運計算事業の財務諸表の様式を定める省令に規定する 営業報告書と、平成2年度の事業の実績等に係るこれら省令の第3条および第7条に規定する報告書、ならびに平成2年11月30日以前に発生した事故に関する、これら省令第8条第2項に規定する報告書の提出については、経過措置として従前の例によることとされました。

また、貨物利用運送事業報告規則の規定は、貨物利用運送事業法の附則第10条第2項の規定により、運輸大臣の確認を受けた事業者の行う貨物運送取扱事業に関する貨物利用運送事業法第10条第4項において準用する報告について準用されていました。

 

利用運送の事業報告書と事業実績報告書および運賃料金設定(変更)届出書の提出方法

利用運送事業で国土交通大臣または営業所を所管する地方運輸局長へ提出すべき報告書や届出書であり、かつ鉄道運送での貨物利用運送事業および内航運送での第2種貨物利用運送事業に係るものについては、それぞれ営業所を所轄する各都道府県別の地方運輸局長を経由して提出することとなっています。

例えば、国土交通大臣に提出すべき事業報告書と事業実績報告書および運賃料金設定(変更)届は、国土交通大臣が提出先であったとしても、それぞれ所轄地方運輸局長を経由して提出することができますし、地方運輸局長に提出すべき報告書または届出書であって、それらのうち貨物自動車運送に係るものについては、それぞれ事業者(法人・個人事業主を問いません)の主たる事務所の所在地を管轄する運輸支局長(兵庫県の場合は神戸運輸監理部長)を経由して提出することができます。

また、地方運輸局長に提出する運賃料金設定(変更)届出書であって、かつ自動車貨物運送での第1種貨物利用運送事業に係るものについては、それぞれの事業者の主たる事務所の所在地を管轄する運輸支局長(兵庫県の場合は神戸運輸監理部長)を経由して提出しなければなりません。

最後に、内航運送に係る事業報告書と事業実績報告書および運賃料金設定(変更)届は、地方運輸局長に提出すべきものをそれぞれ事業者の主たる事務所の所在地を管轄する運輸支局長または海事事務所長を経由して提出することができます。

 

利用運送の臨時報告って何ですか?

利用運送事業は、一般に規制産業と呼ばれます。これは事業に当たって行政庁の許認可を取得しなければ事業を営めない(=違法となってしまう)もので、事業開始時に事業計画を策定して、第一種貨物利用運送ならば登録を、第二種貨物利用運送ならば許可を取得しなければいけないこととされています。

また、いったん許認可を取得すればよいというものではなく、事業者の事業年度毎および年度毎に、事業報告書および事業実績報告書を提出することになっていますが、それら以外にも、事故等が発生した場合には所管庁は必要な報告を求めることができることになっています。それは臨時報告と呼ばれるものです。

臨時報告については、貨物利用運送事業報告規則の第4条に規定があり、貨物利用運送事業者または貨物利用運送事業に関する団体は、事業報告書および事業実績報告書と運賃料金設定(変更)届出書の他に、国土交通大臣または地方運輸局長から事業に関する報告を求められたときは、報告書を作成して提出しなければならないことになっています。また、国土交通大臣または地方運輸局長は、この報告を求めるときには、報告書の様式や報告書の提出期限、その他必要になる事項を明示するものとされています。

利用運送事業の運賃および料金の届出

一般に利用運送と呼ばれる貨物利用運送事業者で、内航運送または貨物自動車運送に係る、第1種利用運送事業を経営する事業者(法人・個人事業主を問いません)は、利用運送での運賃および料金を定めたとき、あるいは変更したときは、運賃料金設定(変更)届出書を、運賃およ び料金の設定または変更してから30以内に、営業所を所轄する地方運輸局長に提出しなければななりません。

この運賃料金設定(変更)届出書には、次の事項を記載します。

1.氏名または法人の名称と、住所または法人の場合には代表者の氏名
2.設定運賃または変更した運賃、および料金を適用した利用運送事業の種類と、利用運送に係る実運送手段機関(輸送モード)の種類
3.設定運賃または変更した運賃、および料金の種類と金額額、およびその適用の方法(変更届出の場合、新旧の対照表を添付することになっています。)
4.設定運賃または変更した運賃の実施日
また内航運送または貨物自動車運送以外の、第1種利用運送事業を経営する事業者(法人・個人事業主を問いません)は、利用運送での運賃および料金を定めたとき、あるいは変更したときは、運賃料金設定(変更)届出書を、運賃およ び料金の設定または変更してから30以内に、国土交通大臣に提出します。
ただし、海上運送法の不定期航路事業者が行う貨物の運送、または海上運送法施行規則 の外航貨物定期航路事業者が行う貨物運送、もしくは内航貨物定期航路事業者が行う貨物運送に係る利用運送事業者は、運賃料金設定(変更)届出書を提出しなくてもよいこととされています(貨物利用運送事業報告規則第3条第3項)。

利用運送の事業報告書と事業実績報告書は同じですか?

利用運送の「事業報告書」と「事業実績報告書」が同じかどうか?とよくお問い合わせをいただくのですが、この両者は異なります。

利用運送事業では、貨物利用運送事業法の第55条第1項と第59条で報告を規定しており、貨物利用運送事業報告規則(平成2年11月29日運輸省令第32号、最終改正平成18年4月28日国土交通省令第58号)の第2条に、具体的な規定があります。少し分かりにくい表現ですが、次のとおりです。

1.船舶運航事業者の行う国際貨物運送または航空運送事業者の行う貨物の運送に係る、貨物利用運送事業のみを経営する事業者については、毎事業年度に係る事業報告書を毎事業年度の経過後100日以内に国土交通大臣へ提出すること。また、前年4月1日から翌年3月31日までの期間に係る事業実績報告書は毎年7月10日までに、同じく国土交通大臣へ提出すること。

2.船舶運航事業者の行う本邦内の各地間における貨物の運送または貨物自動車運送事業者の行う貨物の運送に係る、第1種貨物利用運送事業のみを経営する事業者については、毎事業年度に係る事業報告書を毎事業年度の経過後100日以内に営業所を所轄する地方運輸局長へ提出すること。また、前年4月1日から翌年3月31日までの期間に係る事業実績報告書は毎年7月10日までに、同じく営業所を所轄する地方運輸局長へ提出すること。

3.外国人等による国際貨物運送に係る貨物利用運送事業のみを経営する事業者については、前年4月1日から翌年3月31日までの期間に係る事業実績報告書を毎年7月10日までに国土交通大臣へ提出すること。

4.外国人等であって、本邦内の各地間における貨物の運送または貨物自動車運送事業者の行う貨物の運送に係る、第1種貨物利用運送事業と外国人等による国際貨物運送に係る貨物利用運送事業のみを経営する事業者については、毎事業年度に係る事業報告書を毎事業年度の経過後100日以内に営業所を所轄する地方運輸局長へ提出すること。また、前年4月1日から翌年3月31日までの期間に係る事業実績報告書は毎年7月10日までに、国土交通大臣と営業所を所轄する地方運輸局長へ提出すること。

5.1~4のいずれにも該当しない事業者については、毎事業年度に係る事業報告書を毎事業年度の経過後100日以内に国土交通大臣と営業所を所轄する地方運輸局長へ提出すること。また、前年4月1日から翌年3月31日までの期間に係る事業実績報告書は毎年7月10日までに、国土交通大臣と営業所を所轄する地方運輸局長へ提出すること。

 

 

一般的な利用運送のビジネスモデルと第一種・第二種貨物利用運送

一般的な利用運送のビジネスモデルとしては、貨物利用運送事業者は荷主(お客様・一般消費者)から運送依頼を受け運送運賃の支払いを受けます。依頼を受け運送契約を締結した利用運送事業者は運送義務を負い、あらかじめ運送委託契約を締結しておいたトラック運送会社(一般貨物自動車運送事業者)に実運送を委託し運賃を支払います。

実運送事業者は、他の荷主からの荷物と同様に貨物を輸送する義務を負いますが、利用運送業者の荷物を同梱して混載運送するのかどうかは、利用運送事業者と実輸送事業者とのあいだの運送委託契約の内容によって決まります。

第一種貨物利用運送では、国内のトラック運送のみあるいは大型貨物の大量輸送等幹線輸送のみに限られることが多く、輸送モードが自動車(トラック)なら発送地から配達地までまたは集荷先から配達先までのトラック運送となり、鉄道貨物ならば拠点駅から仕向駅または臨海鉄道もしくは荷主専用の引込線等まで。航空貨物なら発空港から着空港またはairport to airportの空港宅配や両端の軽集配まで。船舶貨物なら発港から着港までまたはport to portの内航・外航海運となります。

第二種貨物利用運送では、第一種の利用運送に加えて先行する荷物の集荷または後続する貨物の配達までをも含むもので、集荷先からトラック自動車等により集荷して、幹線輸送を行い、配達先でもまたトラック自動車等により配達先まで届けます。幹線輸送については、第一種と同様に鉄道ならば拠点駅までと仕向駅から、航空貨物ならば発空港までと着空港から、船舶貨物なら発港までと着港からまで、すなわち全て集約すると以下のようになります。

荷主→トラック集荷→貨物駅・空港・港→鉄道貨物・航空貨物・海運貨物などの幹線輸送の利用→貨物駅・空港・港→トラック配達→荷受人

この荷主から荷受人まで一貫したドアからドア(door to door)の貨物運送サービスが第2種利用運送です。

 

 

第1種貨物利用運送事業と第2種貨物利用運送事業の違い

利用運送事業には第1種と第2種との、業態による2種類の事業があります。このうち、第二種の貨物利用運送は、鉄道や航空貨物、船舶貨物の利用運送とこれらに前後する荷物の集荷と集配を組み合わせて行うことができることになっていますので、お客様(荷主)に対して戸口から戸口まで運送する一貫輸送サービスを提供できることが、最大の特徴となっています。

これに対して、第二種貨物利用運送に当てはまらない第二種以外の利用運送を第一種貨物利用運送事業と区別して登録制にしていますが、一般的に多いのはこちらの第一種の貨物利用運送となっています。

第一種貨物利用運送事業は登録制で、登録要件を具備したうえで必要書類を揃えて申請手続きを行うことで、営業所管轄の都道府県陸運支局および管轄運輸局ならびに国土交通省の審査を経て登録されて、事業を開始できることとなります。この間の審査期間を標準処理期間といい2~3ヶ月かかります。

一方、第二種利用運送事業は許可制度で、第一種と同じように許可要件を具備したうえで許可申請手続きを行いますが、第一種の登録に比べて第二種は許可制度ですので、手続きの複雑さ等難易度はまったく異なりますし、必要となる書類・資料等も多くなります。

いずれにしましても、事業計画の策定から各必要書類の準備、申請手続きと補正を経て登録・許可までは数ヶ月から1年程度かかることも珍しくありませんので、事業開始時期を目安に申請時期を逆算して、十分な準備を行うことが事業成功の基礎となります。

専門家依頼にあたっては、経験豊富なベテランに依頼することが、安定した事業開始と存続に対する保険となりますので、経験と実績を積んだ信頼できる専門家に依頼しましょう。

 

利用運送事業の全体像

利用運送事業は、自社で運送手段を保有せずに運送業を営む場合の登録・許可制度です。

貨物利用運送事業法(平成元年法律第82号)では、運送事業者の行う運送を利用して貨物の運送を行う事業という表現がなされています。利用運送事業者は、荷主との間で運送契約(この契約は請負契約)を結び、さらに利用運送事業者は実配送を担当する運送事業者との間で運送委託契約(この契約も名称は委託ですが、法律上は請負です)を結ぶことにより実現します。

このため、他の事業者(実運送事業者)が、必要な運送事業の経営許可を取得(トラック運送事業なら一般自動車貨物自動車運送事業経営許可)して保有する、自動車、鉄道、船舶(外航・内航)、航空(国内・国際)の運送事業を下請けとして活用して荷主の貨物を運送する「利用運送事業」あり、実運送の利用とともに、荷主先までの集貨・配達を併せて行うかどうかによって、登録制の第一種貨物利用運送事業と許可制の第二種貨物利用運送事業とに分かれます。

第一種貨物利用運送事業登録および第二種貨物利用運送事業ともに、行政庁(国土交通大臣)に対する許認可取得の申請手続きを経て営める事業ですので、必要な手続きを経ずに事業を行った場合には、いわゆるモグリとして摘発の対象となりますので、事前にしっかりとした準備をして必要な手続きを経てから事業を開始するようにしてください。

 

 

 

貨物利用運送事業の第一種と第二種の違いについて

貨物利用運送事業は、第一種と第二種に分かれています。
第一種と第二種の違いについて、国土交通省の「貨物利用運送事業の概要」には次のように記されています。

「貨物利用運送事業は、実運送の利用とともに荷主先までの集貨・配達を併せて行うか否かによって、第一種又は第二種事業に分類されます。」

これも、字を読んだだけでは少しわかりにくですね。
簡単に言うと、第一種は運送の手段が1種類のみ、第二種は2種類以上となります。
2種類以上?・・・運送の手段にはどのようなものがあるのかというと、「船舶」「航空」「鉄道」「自動車」の4種類です。
つまり、運送手段が1種類の「第一種貨物利用運送事業」では、船舶であれば港→港、航空なら空港→空港、鉄道では駅→駅、自動車では集荷先→配送先・・・といったような運送を行うことになります。
これに対して「第二種貨物利用運送事業」はというと、2種類以上の運送手段を使えることで、上記の「第一種貨物利用運送事業」の「船舶」「航空」「鉄道」の利用運送にプラスしてトラックでの集荷・配達まで含めた「ドアからドアの一貫運送サービス」を提供することが特徴です。
それぞれの事業を始めるには、第一種貨物利用運送事業では「登録申請」を、第二種貨物利用運送事業では「許可申請」を行うことになります。

第一種貨物利用運送事業と第二種貨物利用運送事業の違いはおわかりいただけましたか?
次回は、利用運送事業とよく混同される「運送取次業との違い」についてご紹介します。

貨物利用運送事業ってなに?

そもそも、貨物利用運送事業とは何でしょうか。
国土交通省のホームページには次のように記載されています。
「他人(荷主)の需要に応じ、有償で、利用運送(自らの運送機関を利用し運送を行う者(実運送事業者)の行う運送を利用して貨物を運送すること)を行う事業です」
堅苦しい言葉のオンパレードで少しわかりにくいですね。

ここで「実運送」という言葉が出てきます。
実運送とは「自ら輸送手段を保有して貨物の運送を行うこと」です。
つまり「自社トラックで荷物を運ぶ」のが、これに当たります。

これに対して「利用運送」とは、自ら運送手段を持たずに
上記のような実運送を利用して行う運送のことです。

つまり、荷主さんから依頼を受け料金を受け取るのは利用運送事業者で
実際に荷物を運送するのは実運送事業者・・・ということになります。

利用運送事業者は自分では運送はしませんが、荷主さんから料金を受け取る(=運送契約を締結する)ので、荷主さんに対して運送の責任を追うことになります。

「百貨店のギフト配送」を思い浮かべると分かりやすいのではないでしょうか。
百貨店はお客様からお中元やお歳暮などの注文を受けて、先様に届けますね。
この場合、百貨店は「自ら運送手段を持たずに」「自ら輸送手段を保有て」いる運送業者がギフトの配送を行います。
百貨店がこのような方法を取れるのは、利用運送事業者として登録しているからです。

次回は「貨物利用運送事業の第一種と第二種の違いについて」お話します。